一般社団法人日本品質管理学会

第46年度 自 2016年(平成28年)10月 1日
至 2017年(平成29年) 9月30日
事業計画

1.運営方針

 1970年日本品質管理学会(以下,JSQC)は,品質管理の一層の発展と学理の探究を目指して,高度経済成長の後期に設立されました.その後1990年頃までには,日本は全社的品質管理活動を世界に先駆けて展開し,国際経済のトップに立ちました.JSQCの先達は,産学が連携した実践的研究を通じて学理においても世界をリードし,わが国産業界の発展のみならず,品質文化の国内外での醸成を支えました.科学的品質経営をソフトウェア産業,サービス産業等に拡張する方法論についてもJSQCは様々な提案をしたのです.
 しかし,バブル崩壊以降続いた日本の自信喪失は,わが国産業界の最大の強みであり,イノベーションの源泉であった全社的品質経営の展開と学理の発展に急ブレーキをかけてしまいました.今日でも「日本の品質管理」ブランドは,未だ世界の産学に通用しますが,その活動・学理を自律的に支える中堅・若手の中核人財が,10年後には枯渇するリスクが高まっています.
 JSQC第44年度では,大久保会長のリーダーシップの下,オールジャパンの発展に寄与するために品質の発展と学理の探究のあるべき姿をゼロベースで見なおし,第50年度(2020年)を完成年度とする新中長期計画を取りまとめました.第45年度以降,この新中長期計画を“QSHIN2020”と呼ぶことにしましたが,これは,第44年度に大久保尚武会長の下で創生された日本品質管理学会の長期計画“QのShinka”の略称で(1)「真価」,(2)「深化」,(3)「新化」,(4)「進化」活動を指します.この長期計画については,昨年度の事業計画を参照してください.
 第46年度は,第45年度に引き続きQSHIN2020に沿って,学会活動を変容させる過渡期と位置付け,必要な活動と組織の再編に関わる規定整備に当たります.いよいよ,学会本部については研究開発委員会,学会誌編集委員会,事業委員会,広報委員会を一体化させた運営を事実上開始いたします.
 また,JSQCは,全ての本部・支部の現状の活動を変革するために第46年度中に,臨時総会を開催し,定款・規定類を改訂し,会員活動の場を支部活動・本部のガバナンスの下に置く部会・研究会活動に整理し,2018年に予定しているJAQ活動を歯車として支える学術組織に脱皮する所存です.
 JSQC会員の皆様方には,ぜひ学会の新たな姿をご理解の上,ご支援・ご協力賜ることを衷心よりお願い申し上げる次第です.
 以下では,第46年度活動を示します.

(1)  救真2020: Japanese Association for Qualityの創設準備
 一般財団法人日本科学技術連盟,一般財団法人日本規格協会,一般社団法人日本品質管理学会は協調し,2018年11月を目途に,質の維持・改善に誠意と品位とをもって当たることを誓う日本の全ての産官学の組織を募り,それらの緩やかな連携組織としての「日本(品)質協議会(Japanese Association for Quality,以下JAQ)」の創設に当たります.JAQは,製品・サービスの質,それを生み出すプロセス・デザイン・マネジメントの質こそ,わが国産業界の生産性,さらには国際競争力の源泉であることを意識したうえで,将来社会が必要とする質に関する活動をオールジャパンで継承・発展させるために,次の4つの機能を果たします.
 
1) 将来社会が必要とする質と品格との維持・改善に関わる活動を提言します.
2) 社会に存し,展開すべき質に関する良き活動(Good Quality Practice)を顕彰します.
3) 日本社会全体に資する質にかかわる活動・情報などを普及・啓発します.
4) 日本の発展に質の観点から寄与し得る組織を日本全体で支援します.
 
 このため,第46年度にはJAQ発起人・当初加盟組織・個人会員を産官学・メディアなどから募り,その活動・組織・初期の役割分担を設計・合意し,設立総会を準備します.第47年度当初には,現行の3者調整委員会を発展・解消し,JAQ設立準備室とし,その事務局は日本品質管理学会に置くことを目指します.このため,日本品質管理学会は,第46年度から,JAQ設立準備予算を計上します.
 
(2) 究深2020:先進型マネジメント理論・技術の吸収と研究開発推進
 第45年度に引き続き,将来のQ活動に必要となる可能性の強い,IoT, AIなどに関わる先端的管理技術を評価し,論文・著書の出版・競争的資金獲得・若手会員の育成・中堅会員の昇進・他学会との連携を意識した管理技術部会(仮称)の立ち上げを現行計画研究会などを中核として検討します.
 
(3) 求新2020:QMの必要な分野への展開
 サービス学会との連携で構築したサービスのQ計画研究会を中核として,サービスに関わる産業界・行政との連携を深め,オールジャパンの体制での科学化・標準化・産業界への実装化を推進します.
 
(4) 急進2020:本部・支部活動の重点化
 下記を第47年度から実現するために学会組織,定款・既定を改訂するための臨時総会を第46年度半ばに開催します.
  1) 支部活動の重点化:地域産業界への価値提供
 
     第47年度当初を目指し,東日本支部を設立するとともに,支部活動をコミュニケーションと産業界に対するソリューション提供に重点化します.
  2) 個人正会員でQ力量を十分有するものをFellowとする
 
     Fellow会員制度,シニア会員制度などを47年度から設立すべく,規程類の改訂を行います.
  3) 本部事業活動の部会・計画研究会を軸とした研究開発へ重点化
 
     会員は一つ以上の部会に所属するものとし,本部・支部の研究会は,一部の計画研究会を除き,原則として部会(単数ないしは複数)の管理下におきます.このため,必要な2から3の新部会の立ち上げを準備します.また,部会による研究活動は学会活動委員会(研究開発委員会,事業委員会,学会誌編集委員会,広報委員会)の管理下に置くよう,規定類の改訂を行います.
  4) 学会の果たす社会責任の明確化
 
     JAQの提言機能確立に至るまで,学会が社会提言機能を代替します.第46年度はQMS認証に関わる社会問題に関する提言を準備します.
     
2.総合企画委員会

 第45年度に引き続き,JAQ設立に向けた(一財)日本科学技術連盟,(一財)日本規格協会との調整作業を行い,JAQの立ち上げまで,あるいは設立時に必要な活動などを計画します.
 また,総合企画委員会はQSHIN2020の司令塔として,特に急進2020に掲げられた方針の実現に必要な学会本部・支部活動・部会活動の変革に関する定款・規程の整備を規定委員会と一体となった活動を展開し,第47年度以降の学会活動に必要な組織・規定の変更を提案する臨時総会(2017年5月ないしは6月頃)を準備します.

3.事業委員会

 第46年度本部行事の構成は,基本的には例年と同様,以下の通り予定しています.中部支部,関西支部の行事に関しては各支部の事業計画をご参照ください.
(1) 年次大会,研究発表会[各1回]
(2) シンポジウム[2〜3回]
(3) 講演会[1〜2回]
(4) 事業所見学会[3回]
(5) クオリティトーク[5〜6回]
  1) 事業委員会は,研究開発委員会傘下の研究会,部会との連携を強化し,シンポジウム・研究発表会・講演会の企画に当たっては,部会や研究会活動の活発化を後押しし,その成果を発表する場を積極的に提供します.
  2) 品質誌編集委員会との連携を強化し,特集記事との内容面・講演者等での連携をはかり,魅力的なシンポジウムや講演会を開催するとともにそのエッセンスが品質誌に掲載されることを促します.
  3) 研究発表会での産学連携の強化を図ります.医療の質安全部会などでは,セッションを構成できるくらい実践報告もなされるようになってきていますが,一層の産学などの連携を強化すべく,産業界からの実践報告の発表件数を増やす新たな方策を考慮します.
  4) コミュニケーションの場の充実:学会とは,同じ研究分野に携わる人たちのコミュ ニティです.特に会員同士の相互地域交流はきわめて重要です.現行の本部コミュニケーションの場創生活動については,東日本支部設立後の支部活動への移行を前提に,クオリティトークや事業所見学会のような気軽に参加できる行事を配置し,会員間の相互交流を深めます.

4.中部支部

中部支部の基本方針
1) 本部の方針に基づいた活動を展開する.
2) 研究会活動を軸として,会員の相互研鑽の場を提供するとともに,企業や各種組織にと って有益な,品質管理に関する先進的な情報の発信に努める.
3) 品質管理の考え方・手法を,多くの組織・企業に広めて,中部地区の成長に貢献する.
【中部支部のスローガン】
 品質管理の普及・浸透で,問題解決力を高めて,日本の生産性向上(成長)に貢献しよう!
行事の具体的な内容(案)
1) 研究会  
   研究会活動を支部活動の中心と位置づけて,次世代を見据えた若手研究者の活性化,内容の更なる充実を図る.
・東海地区の若手研究会(名古屋工業大学:仁科健氏)[6回/年]
・北陸地区の若手研究会(金沢工業大学:中野真氏)[発表会:1回/年]
・中部医療の質管理研究会(中部学院大学:國澤英雄氏)[6回/年]
・IoT時代の品質管理のあり方を研究する,新規研究会の立上げと推進[詳細別途]
2) 研究発表会[1回/年]  
   会員の多岐にわたるニーズに応えた幅広い研究・開発テーマで,かつ多くの企業・組織に展開できる事例発表の場を提供する.
学会の新しい研究成果と一般も含めた産業界からの具体的実践事例を発表
若手研究会(東海地区,北陸地区),中部医療の質管理研究会から,活動成果を発表
3) シンポジウム(基調講演とパネル討論会)[1回/年]
 
  産学界の関心が高く,一般からも多くの参加者を得られる基本方針に沿ったテーマを選定し企画する.
4) 講演会[1〜2回/年]  
   会員の関心の高いテーマによる講演会を開催する.参加者は会員限定としたものと,広く一般から聴講者を募るものとに分けて企画する.
5) 事業所見学会[1〜2回/年]  
   先端的な企業や組織を訪問し,会員(幹事を含む)の研鑽の場の提供を企画する.
6) 幹事研修会
   幹事間の意思疎通を図り,行事の企画力・運営力の向上につながる研鑽・議論ができる研修を企画し一般会員の参加も検討する.
中部支部の運営(案)について
1) 上記行事の企画は,幹事会で行っていく.幹事会は2ヶ月に1回程度を目処に開催し,場所の調整は,事務局(規格協会名古屋支部)にて行う.
2) 行事の運営は,基本的には事務局主体で行うことにするが,当面は幹事の協力も得ながら,行っていく.
3) 第一回幹事会を11月1日(火)に開催し,46年度の事業計画をまとめる
第1回支部役員会は品質管理学会総会(11月26日(土)名古屋工業大学)後の12月6日(火)に開催する.
4) 運営は極力効率を上げ,企画を充実させることに今後重点をおいて進めていく.

5.関西支部

(1)運営方針
   日本企業は,世界経済の中で勝ち残っていくために,さまざまな構造改革や将来の成長戦略構築に頭を悩ませています.また,低炭素社会の実現に向けて,太陽光発電や電気自動車など,革新的な技術開発が求められる時代となっています.今後,日本企業がさらに成長し,グローバル競争に勝ち残っていくためには,日本企業元来の強みである「技術開発力」「品質力」ならびに,それらの元となる「人間力」がますます重要となってきます.
 このような状況の中,これまで日本の文化や産業を支えてきた“ものづくり”“ことづくり”とともに“人間力”の基盤を引き続き維持・発展させていくことが必要であり,このとき,品質管理の果たすべき役割はますます大きくなっています.
 関西支部では,品質力,組織・マネジメント力,現場力,顧客対応力の向上策について具体的に提言することにより品質管理のレベル向上に貢献することを目的に,事業活動のさらなる活性化を図り,より多くの会員が満足できる活動を展開していきます.

(2)事業内容
  1) 研究会
  ① 実用的統計手法研究会
 
   「新たなSQCの開発・実践を行うこと」「誤用を防ぐために既存SQCの再検討を行うこと」「統計的方法論を実用普及する際のツール(教育教材等)開発・提案を行うこと」を通してSQC活動を活性化させます.旧統計的品質情報解析研究会の名称を,実用的統計手法研究会と改名し,統計的方法論の誤用の解明と防止,将来活用できる新たな統計的方法論・教材を研究し提案します.
  ② ダイナミックロバストマネジメント研究会
 
   これまで研究してきた「科学的先手管理七つ道具(SE7)」と2015年改訂されたISO MS の品質,環境規格の特長,意図とを俯瞰的に融合して組織の文化へのマッチング,コミュニケーションを明確にし,従来,企業経営に有効なMSとして実地で検証されてきた日本的なTQMと高度な先進技術(IoTなど)との相互関係,ヒューマンエラー,モノづくりのレベルアップ策等に関して,品質管理学会が培ってきた数々のQC技術をベースにし,ダイナミックな問題解決アプローチを体系化します.
2) 研究発表会 【1回 】
  産業界や社会のニーズと学におけるシーズをマッチさせ,産学で相互に研鑽できる発表会を企画します.
3) シンポジウム 【1回 】
  社会の要求・注目しているテーマを選定し,活発な議論のできるシンポジウムを企画します.
4) 講演会 【1回 】
  “ものづくり”“ことづくり”の発展に寄与できる魅力ある講演会を企画します.
5) 事業所見学会 【 2回 】
  特色のある事業所の見学を企画します.
6) QCサロン 【 5回 】  
  会員サービスの充実を図るため,講話とざっくばらんな質疑応答ができるサロンを企画します.

(3)その他
  1) 関西支部企画運営委員会の実施
 支部運営に関する各種の検討を行い,支部事業の活性化を図ります.中国四国九州地区の会員に対しても支部事業の案内を行い,支部事業への積極的な参加を働きかけます.
2) データ管理の質的向上と定点観測
 支部活動に関する各種データ収集・管理を継続的に行い,支部活動の現状把握や活性化に役立てます.

6.論文誌編集委員会

(1) 従来からの方針を引き継ぎ,論文審査において,査読意見を参考にしつつも論文誌編集委員会の主体的な判断に基づき採択の可否を決定していきます.また,「著者責任」を基本とし,新規性・価値のある主張を含む論文については原則として掲載する方針についても,変更ありません.年間の掲載数15本をめざします.
(2) 規定された方法に従って,投稿論文審査の質の向上と迅速化を図っていきます.
(3) 国際委員会と協力して,ANQ Congress 2017への論文発表促進,特に若手研究者への支援を積極的に行います.
(4) 国際委員会と連携して,ANQ 発表論文を対象とした英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の発行に向けて活動します.46年度はVol.3 No.1及びNo.2を発行する予定です.
(5) 論文掲載には相当なコストがかかるため,学会の財政状況を鑑みますと,論文掲載料の徴収は避けらない状況です.会員の理解を得つつ,引き続き検討いたします.
(6) 学会誌編集委員会と連携して,品質誌の電子ジャーナル化について,J-Stageでの発行形態等に関し,引き続き検討を続けます.
(7) 英文電子ジャーナル(Total Quality Science)でのシステムを参考にしながら,「品質誌」論文誌においても,論文審査プロセスの効率化を目指し,電子投稿・審査システム導入に関して,引き続き検討いたします.

7.学会誌編集委員会

 第46年度は,これまでの学会誌の編集方針を変更し,事業委員会,研究開発委員会と密接に連携し,研究会報告や部会報告を中心に編集していきます.この編集方針の変更は,新中期計画に記載されている学会誌再編成の指針に従うものです.ただし,学会誌を学会員にとって魅力的なものにするために,チュートリアルセミナーやクオリティトークの講演内容を収録したり,学会主催の講演会での講演内容を収録したりすることを予定しています.また,JSQC規格の解説を連載することも計画しています.
 昨年度から編集委員会の構成を見直してきましたが,編集方針をより明確にし,学会誌の意義と魅力を高めるために,編集委員会の運営体制を機動力のあるものにしていきます.

8.広報委員会

 これまでの広報活動を見直し,事業委員会と密接に連携し,学会員・非会員の双方に対しJSQCの存在感や認知度を高め,品質管理に関して産業界に役立つような意見表明や解説,各種活動の内容や記録などを,これまで以上にメールなど活用し,広く情報発信に努めます.
(1) 学会の中期計画に即した形で,関連学会や関連団体などとの連携を深め,より価値の高い情報提供を目指します.
(2) 学会の目的が新たな方法論の研究開発と実践,それを支える専門家の育成であることを考慮し,会員および非会員の学会活動へのより深い「参画」を促進することを狙いとした広報活動を行うべく努力します.
(3) 学会員の多くを占める産業界の会員の退会理由に「会員であることのメリットが無い」と書かれるような事態を直視し,これまで会員の手元に直接届くのは学会誌の「品質」と会費支払い請求だけでしたが「会員であることのメリット」を感じさせるべく,これら郵送物だけではなく,メールに添付可能なJSQCニューズや略報などは直接送信し,情報頻度を上げる広報活動を展開します.
(4) 学会が主催あるいは委員会,部会,研究会などで開催される行事は年間100件を超え,これらの内,情報発信可能なものから発信を行うことで学会員への情報提供サービスを行う予定です.具体的には,クオリティトーク,QCサロンはじめ,シンポジウム,ワークショップ,講演会,委員会,研究会などについて,各広報委員の協力を得て,略報にまとめ,会員・非会員に対し,広くメールなどを活用,発信し,JSQCを身近に感じさせる,そうした情報発信により,学会主催行事への参加者の増加,学会員増加に向け務めます.

9.会員サービス委員会

 学会として会員になることのメリットを発信し,学会会員数増加にむけて活動を促進していきます.
正会員や賛助会員を増加するため関連支部・委員会と協力して施策を検討し,シンポジウムや研究会などを通じた専門的価値を提供します.
会員資格審査,入退会審査については,理事会の協力のもと実施していきます.

10.規定委員会

 第46年度は,中長期計画QSHIN2020に掲げられた方針に基づき,JAQ創設のための活動並びに学会活動の改革を実現するための活動を深化させ,学会活動の更なる発展に貢献すべく各委員会等と協力し,それぞれの活動や組織が効果的かつ効率的に進められるよう,活動の実態に即した規程,内規等を適切かつ迅速に作成,改訂するように取り組みます.

11.研究開発委員会

 中長期計画,および,本年度の運営方針に基づき,事業委員会,学会誌編集委員会と密接に連携するとともに,学会研究活動の部会活動への重点化をにらんで以下を行います.
  例年通り,既存の研究会における研究活動予算を検討し,配分します.
  第45年度に引き続き,将来を見据えた研究分野の検討と新たな計画研究会の設置を検討します.
  研究活動とその成果を学会員へ広く伝え,学会員が学会の真価を享受できるようにするため,各支部とも連携を深め,また,学会誌編集委員会,事業委員会,広報委員会と連携して学会活動委員会の実現を目指します.
 各研究会においては,以下の通り,活動する計画です.

(1) テクノメトリックス研究会
   テクノメトリックス研究会では,「統計的手法を中核とした品質管理手法の開発・普及」を主軸として,「数理科学志向型・計算機志向型の統計的品質管理手法」の開発を目指します.具体的には,メンバーが興味あるテーマを持ち寄り,それについて議論を行い,品質管理の手法として確立できるようにします.多変量解析法を中心に,クラスター分析,実験計画法,統計的手法の理論的側面,解析事例,解析手順などさまざまな視点から研究をします.
 また,昨年度同様,おおむね3ヶ月に1度の開催を考えています.そして,研究成果については,JSQC研究発表会,年次大会や品質誌などで積極的に発表していく予定です.
   
(2) 医療経営の総合的「質」研究会
   従来までの研究活動を継続して,第46年度もわが国の医療の質向上への貢献を図ることを目的とし,医療関係者と品質管理関係者(アカデミック,産業界双方)及び産業界トップマネジメントの相互交流を通じて,医療における品質管理を基盤とした総合的「質」経営に関する検討を進める予定です.
  1) 「医療のTQM七つ道具」の広報・周知
    ①七つの道具(手法)に関する各種講演会,講習会を通じて,本ツールの具体的な現場での活用方法を周知します.
    ②七つ道具に加えて,特性要因図も医療現場で十分活用できていないことから,各種講演会・講習会を通じて,業務フロー図,根本原因分析等とリンクした形の具体的な活用方法を周知します.
  2) 医療機関におけるTQM普及を促進する医療制度・政策のあり方を提案
    ①既に施行されている医療事故調査制度に関して,各種講演会を通じて,制度の概要と実際運用上の課題等を周知するとともに,院内事故調査制度に対する質専門家の係わり方を検討します.
    ②医療の質の向上に資する医療における無過失補償制度のあり方を検討・提言します.
  3) 国内外の医薬品・医療機器メーカー等におけるTQM実施状況とそれに関連する制度・政策に関して調査し,その結果を学会発表・論文投稿していきます.
    ①我が国の電子カルテ構築方法について,米国SAFERガイドと比較し,効率的な電子カルテ導入に向けた指針等を作成します.
    ②機器に関するJIS T 60601-1-8副通則の普及啓蒙を今年度も続行し,医療機器の病院安全体制の見直しに関する提言を行なって参ります.
    ③医療アラームに付随した不具合事例の検討と医療機器使用者のための警報装置(アラーム)ガイドラインの改訂と米国ECRIのアラームハンドブック,ワークブックの啓蒙を行なって参ります.
    ④ナースコールの不具合事例を検討し,効率的なナースコールの運用を啓蒙して参ります.
    ⑤病棟看護師業務の可視化と業務改善に関して,動線分析を含めて実施します.
       
(3) 信頼性・安全性計画研究会
   本計画研究会は,第36年度から10年間,四期にわたり,製品安全を中心とした信頼性・安全性の作り込み技術や,社会インフラを中心とする維持管理やBCMの問題に関して議論を続けてきました.今後も引き続き,品質関連情報の有効活用および的確な組織的意思決定の実現を目指して,下記のボトムアップとトッブダウンの両方のアプローチから,
  ベスト/ベタープラクティスの収集と分析
  信頼性・安全性問題の事例調査
  今後予想される問題と対応の提起
  委員の研究成果の報告
  委員間の情報共有と討議
  に取り組むことで,未然防止による信頼性・安全性管理の体系化を図ります.
  1) 信頼性・安全性作りこみ技術(ボトムアップのアプローチ)
    新規トラブル未然防止法の高度化
    次世代品質・信頼性情報システムの具体化と拡張
    ハザードに着目した根本原因分析(RCA)の高度化
  2) 安全・安心を達成するための社会インフラ構築(トップダウンのアプローチ)
    持続可能でレジリエントな体制作り
    品質管理を重視する組織文化の樹立と継承
    ユーザ・メーカ・行政の三者協業による信頼性・安全性確保のための方法論
   本年度は第四期(45〜47年度)の中期となります.前年度に調査した社会インフラの各事例を総括し,そこで得られた知見が,新規社会インフラとして現在整備が進んでいる成長分野で活用されるよう展開を図ります.そして,新規社会インフラで予想される問題への提案事項を,研究発表や討論会などの場で積極的に発信するように取り組みます.
   
(4) サービスのQ計画研究会
   以下の活動を展開します.
  1) 関係組織の立ち上げ支援および組織間調整
サービスのQ計画研究会(JSQC)は,企業系の委員を増加させ月1回開催する.また,2週間に1回の定例ワーキング部会も実施する.当該活動では以下を実施します.
  サービス標準化スキームの精緻化(勉強会と検討)
  サービス標準化委員会機能の設計
  個別サービス実現標準化分科会機能の設計
  本サービス標準化活動に対する賛同・参画企業の増加策の検討
  2) 標準化優先順位が高いサービスに関する一気通貫事例化の挑戦
 
   サービス標準化スキームの精緻化は,既存文献・既存研究等を主として素材として可視化・構造化していくが,並行して当該スキームのステップを事例としてすすめていくアクションリサーチを実施します.このアクションリサーチを通してサービス標準化スキームの各コンポーネントの浅層・中層・深層の要素特定をすすめます.
  3) 第2回サービス標準化フォーラムの開催
 
   講演・パネル・トークなどで構成する.エクセレントサービス事例・サービス標準化のための組織化報告・精緻化されたサービス標準化スキームの解説・当該スキーム一気通貫事例,他などで展開する予定です.

12.国際委員会

  第46年度の国際委員会は,第45年度の活動を基盤に,主に以下の事業を実施します.
(1) ANQ 2017への協力
 ネパールのカトマンズで,2017年9月20-21日に,ANQ(Asian Network for Quality)総会の開催が予定されています.ネパールの品質管理組織 Network for Quality, Productivity and Competitiveness Nepal が,ANQボードメンバーのインドのISQの支援を受けて,開催することになりました.大会開催の支援やアドバイスを,JSQCとして継続的に行っていきます.また日本からの参加者についても,ANQでのリーダーシップを発揮できるよう,引き続き多くの参加者を募る予定です.
(2) ANQの安定的発展のための調整
 2017年の春にはソウル,秋にはカトマンズで,ANQ理事会の開催が予定されています.JSQCとしてANQの発展に積極的に関与し,ANQ-CEC(ANQの品質管理検定委員会),Ishikawa Kano Award委員会には,委員を派遣する予定です.財務委員会では,JSQCが委員長を務めており,2017年春の理事会では,委員長からの財務報告を行います.
 ウラジオストクのANQ理事会では,2020年にオリンピック東京開催があることから,ANQ総会の開催担当はそれ以降となることを了解していただきましたが,2018年〜2020年の中で一度,春の理事会開催国として依頼される可能性があり,必要時日本での理事会開催を引き受けることになります.
(3) 英文電子ジャーナルの刊行
 英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の刊行の3年目が開始されます.会員ニーズである国際学会発表(ANQ)と,英文電子ジャーナル投稿(TQS),を満たすことができるよいコラボレーションを今後とも継続強化してまいります.
(4) 海外の品質に関連する学協会とのアライアンスに関する具体的な検討
 幅広く海外の学協会と交流をもつための具体的方策について継続して検討します.特に,ANQ関係団体と交流し良い関係を作り,特に若手会員が交流する際の支援ができるようなプログラムを検討します.

13.標準委員会

(1) 第45年度に引き続き,JSQC規格の制定を推進します.
  「品質管理教育の指針」:2017年9月の制定を目標に推進します.
  「方針管理の指針」(E):2017年7月の制定を目標に推進します.
(2) 新しいJSQC規格の制定を推進します.
 「新製品開発管理の指針」の原案作成を開始します.
(3) JSQC規格のJIS化を推進します.
  「プロセス保証の指針」のJIS化について,JIS原案作成の作業を推進します.
  JIS Q9023の定期見直しに合わせた改正を念頭に,「方針管理の指針」のJIS原案作成に着手します.
(4) JSQC規格の見直しを推進します.
「品質管理用語」の定期見直しを完了します.
(5) JSQC規格の普及活動を継続して推進します.
  事業委員会等と連携し,規格制定後の講習会を引き続き実施します.
  個別の要請に基づくJSQC規格講習会の開催を検討します.
  規格講習会の定期開催を実施します.
  JIS化を完了した規格のISOガイド規格提案を継続して検討します.

14.FMES,横幹連合関連

 46年度も引き続き,FMES代表者会議,FMES/JABEE委員会,FMESシンポジウムに参画し,経営工学関連学会との交流,JABEEの審査活動,FMESシンポジウム等の活動に,中核団体として協力していきます.また,JABEEの役割についても変革が求められており,FMES代表者会議やFMES/JABEE委員会を通じて,今後のあり方について意見を述べていきます.
 横幹連合に関しては,これまでと同様,適宜活動に協力していきます.JAQ設立をにらみ,FMESや横幹連合を通じた他学会との緩やかな連携についても模索していきます.

15.研究助成特別委員会

 第46年度も引き続き若手研究者に対する研究助成を行います.募集要項の主な内容は以下の通りです.
 助成金額は1件5万円で4件以内.対象者は,日本品質管理学会の正会員もしくは準会員,申請時に35歳以下で大学・研究所・研究機関等において研究活動を行っている者,留学生の場合は日本の大学院に在籍する外国籍の留学生等の要件を満たす者(年齢制限はありません)とします.すでに2回採択された者は選考対象から外し,助成対象は品質管理に対する研究全般およびANQ以外の国際会議での研究発表への旅費支援も含めます.期間は1年間(2016年10月から2017年9月)です.研究成果を品質誌へ投稿,あるいは,研究発表会などで発表することを奨励します.

16.QC相談室特別委員会

 本相談室は学会のホームページ上で運営,展開されています.これまで,さまざまな内容についてQC検定1級を超えるレベルの質問が寄せられ,それらに対する学会員からの積極的な回答がなされ,学会サービスの機能を果たしていると感じています.しかし,現在のような掲示板による「情報交換の場」の必要性について検討する必要があるようにも思っています.学会員サービスの意味を考えるとき,第46年度は下記の方針で活動を展開したいと考えています.
(1) 前年度の施策(パスワード記入方式)実施後,「あらし」の問題が生じていないことから,この方式を継続する.
(2) 自由な質問とボランティア的な回答という従来の形式を続ける.
(3) 学会主催の催しの際等,機会をみつけ,相談室の存在をアピールし,より活発な利用状況をめざしていく.

17.TQE(問題解決力向上の為の初等中等統計教育)特別委員会

 全ての人々が各人の能力を発揮し,生きがいのある楽しい生活を送り,幸福になるための問題解決教育を初等中等の学校教育にて為しうるよう,過去7年間の活動を継承し,以下の取組みを行って参ります.
(1) 問題解決教育を通して,自己啓発・相互啓発が為され,一人ひとりの潜在的能力を引き出し,自らが主体性を持って行動し,人に優しく,社会に貢献しうるように,人間的成長を図るべく,TQE委員会の活動の見直しを図ります.このため,連携組織などを洗い直し,具体化しつつある次期学習指導要領での問題解決教育実効化に資する活動を行います.
(2) 次期指導要領で重視される“Active Learning”において,上記1.の問題解決教育が充実されるように普及に努めます.
(3) 上記1., 2.の為に,学校現場での具体的な教育教材事例をQCサークル誌などの文献を参考に開発します.
(4) 上記1., 2., 3.に関連し,問題解決プロセスの普及・啓蒙のために,問題解決に資する科学技術教育フォーラムを開催致します.
(5) 初等中等統計教育における「生きる力」育成への活動支援として,40年度に設立された統計グラフ全国コンクールにおける 日本品質管理学会賞の周知・徹底を図り,その質の向上に努めます.

18.安全・安心社会技術連携特別委員会

 日本原子力学会(ヒューマンマシンシステム部会/社会・環境部会)等との共催の「安全・安心のための管理技術と社会環境」シンポジウムを,引き続き積極的に推進します.また,自動車事故対策機構等の審議についても引き続き参加・協力していきます.ISO 39001についても,認証制度の普及,支援規格の開発などについて引き続き協力していきます.

19.JSQC選書刊行特別委員会

 「JSQC選書=品質管理に関する,非専門家向け高度教養講座」の地位を確立すべく,引き続き,品質立国日本再生に寄与するテーマで良質の書籍の発刊を目指します.
 並行して,第46年度以降の選書テーマ候補を充実させ,時宜を得た発行計画の立案を行います.その際,JSQC選書既刊本に対する読者の声の収集・把握に努め,今後のテーマ選定等に活かします.必要があれば,テーマ選定から発刊までの一連のプロセスを改善します.書籍の内容と購入者の傾向や関係を探ることも考えます.
 また,JSQC選書の知名度向上に向け,有効な広報策について検討・実践を試みます.

20.部会

(1) ソフトウェア部会
  第46年度は前年度に引き続き,以下のことを行います.
  ソフトウェア技術者の教育プログラムを主テーマとし,より活発な活動を行います.
 
   前年度同様,一ヶ月に1回程度の会合を開催しながら,品質の高いソフトウェア開発に関するテーマのうち,「ソフトウェア技術者の教育プログラム」を主テーマとし研究活動を進めます.また,アウトプットを意識した活動を行い,研究活動の活性化を図ります.さらに,これらのことより,部会メンバーへのサービスの向上を図ります.
  メーリングリストやSNSを利用した情報交換及び情報発信を積極的に行います.
 
   メーリングリストを利用した部会メンバー間の情報交換をより積極的に行うとともに,ソフトウェア部会の活動を理解していただくために,SNSを利用した情報発信を行います.
  ソフトウェア開発関連の行事に積極的に協賛・後援します.
 
   他団体の開催するソフトウェア開発関連の各種行事に協賛・後援することで,部会メンバーの便宜を図るとともに,ソフトウェア部会活動の活性化を図ります.
   
(2) QMS有効活用及び審査研究部会
   第45年度に引き続き,継続したテーマで研究活動を行い,必要なものは年次大会などで 報告する予定です.また,新たな研究テーマの開発を行う予定です.
 部会員への情報提供が不十分であったため,以下に関する情報提供を行う予定です.
 トピックス(例:ISO 規格の開発動向),研究活動の進捗状況(年2回程度),メルマガ(月1回程度),研究報告書の部会員割引による頒布(不定期),研究発表会資料(随時)
  WG1: 要求事項の本質的適用
ISO 9001をベースとし他の規格やガイドラインも含め,要求事項を本質的に適用することを工学的アプローチから考察し,学術的提言を行う予定です.
  WG2: 改正ISO 9001の意図及び審査員の力量の研究
研究成果として11月に研究成果報告書を作成し,発行する予定です.
新規テーマの開発を行い,研究を開始する予定です.
  WG3: 新規テーマの開発
組織経営は百社百様,借物や押付けのQMSではなく,自社業務にあった独自のシステムを構築出来れば成果につながる.このための方法を探求し,実行できれば審査は意識せずともISOの要求事項に適合することを実証する研究を行う予定です.
  WG4: 会社を強くする「効果的なQMS診断アプローチ」の研究
研究成果として11月に研究成果報告書を作成し,発行する予定です.
  WG5: 新規テーマの開発
アウトソースマネジメントの効果的な運用方法などのテーマを開発し,研究活動を開始する予定です.
  WG6: ISO 9001:2015対応の中小企業向けQMSモデルの研究
業種別QMSの研究及び最先端企業の研究を行う予定です.
  WG7: 「あるべき姿」「ありたい姿」のQMSを想定した審査技術の開発
前期に引き続き研究を行います.
 
(3) 医療の質・安全部会
   第46年度も前年度に引き続き,研究活動はPCAPS,医療QMS等を中心に進めてまいります.医療QMSについては,医療における日常管理,方針管理を中心に,医療のTQMモデルの構築,導入・推進を進めています.PCAPSは,実装する病院が増えており,実用化の事例もまとまりつつあります.現在は,両テーマとも医療界全体への啓発・推進が重要な課題になっており,様々な機会を通じて紹介していきます.毎年開催している成果報告シンポジウムは,2017年3月4,5日に開催する予定です.
 今年度は,新たな研究会として「医療の質マネジメントシステム監査研究会(略称:医療QMS監査研究会)」を立ち上げます.ISO 9001が昨年改正され,新たな要求事項をどのように医療に適用するか,どのように監査していくかは重要な課題です.医療者,審査員等の医療QMS関係者に参加していただき,医療QMSを適切に運用する,あるいは監査・審査できる人材育成を目標として活動していきます.会員の方々の積極的な参加を期待しています.
 教育・啓発活動については,医療の質マネジメント基礎講座を引き続き開講する予定です.今年度も目白大学メディカルスタッフ研修センターとの共催で行い,医療界への普及・啓発を進めていきます.また,これまで医療の質・安全学会,医療マネジメント学会などで研究発表を行い,本部会の研究内容を医療界に広報することを行ってきました.それを質,量ともに充実させ,医療者の入会につなげることをめざします.