一般社団法人日本品質管理学会

第44年度 自 2014年(平成26年)10月 1日
至 2015年(平成27年) 9月30日
事業計画

1.運営方針

 1970年日本品質管理学会は品質管理の一層の発展と学理の探究を目指して、高度経済成長の後期に設立されました。その後、時代は変遷し、社会や産業構造が大きく変わっていく中で、学会は品質管理から品質経営に及ぶ品質文化を着実に醸成してきました。
 しかし、残念ながら重大事故、企業の不祥事などの品質問題は未だに頻発しています。このような状況の下、学会は品質の発展と学理の探究を目指すことにより、産業競争力が強化され、社会の発展に寄与しているのか、と原点に立ち返って再考してみることにしました。
 第44年度は、新たな中期計画のスタートの年となります。新中期計画の基本方針として「日本品質管理学会SHINKA!」という4つのSHINKAを掲げました。「深化」「新化」「進化」という3つの具体的な施策実行の結果、「真価」の実現となります。これまでの「Qの確保」「Qの創造」は「深化」「進化」へ、「Qの展開」は「新化」へ、「共通領域の推進」は「真価」へと、枠組みを変えて引き継いでまいります。
 中期計画のゴールを 学会設立50周年の2020年とします。ちょうど2度目のオリンピック開催年です。世界的な関心と期待から、日本のスポーツ振興のみならず、現在政府が策定中の「第5期 科学技術基本計画」による社会インフラ・IT・環境・エネルギー等の様々な技術が発展する絶好機と期待されています。先ず2020年の学会のあるべき姿を描き、そこから今やるべき事をバックキャスティングした長期計画を、総合企画委員会で策定してまいります。同時に現行の施策は継続するも、再度確認(Check)及び見直し(Act)て、ゼロベースで計画(Plan)し、社会および学会員の皆様のご理解の上で、一緒に実行(Do)してまいります。具体的な施策は以下の通りです。
 4つの具体的な施策(4つのSHINKA)
(1)  真価 (Future value) : 2020年の「あるべき姿」を、下記(1)〜(3)の視点で描きます
  1) 社会の期待に応え価値共創する学会
  @ 社会の期待・ニーズを掴み、価値共創し続けることにより、品質の一層の発展に寄与する学会
  A 社会の期待・ニーズに応える品質の学理の探究および成果発表の場としての学会
  B 国内外の企業・行政・団体、学会の本部・支部、およびそれに属する人々を橋渡しする学会
  C 学会活動を通じた人材育成により、学会員としての自信と誇りを享受できる学会
  2) 実行実現する学会
  @ 「深化」「新化」「進化」の具体的施策を設定し、実行実現する学会
  A 社会に活動・成果を「見える化」し「PR」する学会
  3) 健全な運営基盤の学会
  @ 適切な会員数確保、事業活動による持続可能な学会
  A 選択と集中による効率的・効果的な学会
(2) 深化(Deepened value):将来を見据えた更に深い学理の探究
(3) 新化(New value): 将来期待される全く新しい価値創出・新分野への展開
(4) 進化(Evolutionary value):学理探究と新分野展開の社会の変遷・発展への対応
     
2.総合企画委員会

 第3期中期計画の反省、学会をとりまく社会の状況を踏まえ、2020年のあるべき姿を描き、長期計画を策定いたします。
 また、長期計画で定めた目標とその達成のための活動が計画通りに実行できるように、関連委員会と連携しながら必要な施策を計画・実施していきます。
 43年度まで重点的に取り組んできた、(1) 会員組織の増強(産若手会員の増加、入会いただいている組織ごとの会員数の増加)、(2) 研究活動の活性化(産学共同研究の推進、研究会・部会・特別委員会の連携強化と中長期の視点に立った研究活動の展開)、(3)会員の能力向上に役立つ、TQMの普及・推進に役立つ学会活動の展開、については、引き続き推進していきます。

3.事業委員会

 第44年度本部行事の構成は、基本的には従来と同様、以下の通り予定しています。中部支部、関西支部の行事に関しては各支部の事業計画をご参照ください。
(1) 年次大会、研究発表会[各1回]
(2) シンポジウム[2〜3回]
(3) 講演会[1〜2回]
(4) 事業所見学会[3回]
(5) クオリティトーク[5〜6回]
 平成24年末の政権交代後の円安誘導政策により、一方で輸出企業を中心に企業の業績は回復基調にあると思われますが、一方では輸入品価格の高騰、消費税率引き上げに伴う反動などで、必ずしも企業環境は楽観視はできない状況です。日本や世界が直面する様々な課題に対して、日本的品質管理が貢献できる・貢献すべき分野をテーマにした事業を企画します。産業界が直面する重要な課題を取り上げたタイムリーなシンポジウム、講演会を開催します。また、学会の社会的責任に応えるべく最大限の努力をしていきます。品質管理を推進しているデミング賞委員会の活動やQCサークル全国推進組織との連携を図り、品質管理の普及・推進に役立つような事業を展開していきます。
1) 部会/研究会活動との連携:部会や研究会活動の活発化に伴い、その成果を発表する場をシンポジウム、講演会等で積極的に提供します。
2) 品質誌との連携:特集記事との内容面・講演者等での連携をはかり、魅力的なシンポジウムや講演会を開催します。
3) 研究発表会での産学連携の強化:医療関係では、セッションを構成できるくらい実践報告もなされるようになってきていますが、一層の産学連携を強化すべく、これまでの研究発表会でのポスターセッションだけでなく、産業界からの実践報告の発表件数を増やす新たな方策を考慮します。
4) 品質管理の推進を行っているデミング賞委員会、QCサークル推進組織との連携を深め、連携した品質管理の普及・推進に役立つ事業を企画していきます。
5) ヤングサマーセミナーに代わる行事の開催:次世代へのTQMの継承と発展のため、若いメンバー相互の研究・交流の支援のために、ヤングサマーセミナーを開催してきましたが、昨年度は中止せざるを得なくなりました。それに代わる、若手研究者の相互啓発・ネットワークづくりのための新しい行事を企画していきます。
6) コミュニケーションの場の充実:本来学会とは、同じ研究分野に携わる人たちのコミュニティです。会員同士の相互交流がきわめて重要です。クオリティトークや事業所見学会のような気軽に参加できる事業などを通じて、会員間の相互交流を深めます。44年度から、新入会員にクオリティトークについては、体験参加ができるような招待券を発行する予定です。

4.中部支部

(1) 基本方針
 企業を取り巻く環境は年々厳しくなっており、苛酷なグローバル競争に勝ち残るためには人づくりがますます重要になっています。過去の経験に頼るのではなく、自ら新たな問題の解決ができる力を持ったグローバル人材の育成が急務となっています。また、大企業だけではなく、日本のものづくりを支えている多くの中小企業で品質経営の実践による「Qの確保」が求められています。
 中部支部では、中小企業・サービス分野の企業の人材育成に貢献し、産業界全体の品質レベルの底上げと仕事の質向上を図ります。また多くの企業にQCの考え方を普及・浸透することを目的に、現地・現物に立脚した産と学に有益な活動を展開し、社会に貢献します。

【中部支部のスローガン】 グローバル競争を見据えた産学連携による「Qの確保」の発信
 産業界からの問題提起と、学界での解決策の掘り下げや理論付けを行う研究会活動を基盤とし、 その研究成果を中部地区を中心に、ものづくりの現場にとどまらず医療・サービス分野の企業にも継続的に公開することにより、現場での品質管理の推進と充実に寄与します。
 産学協同で実施する行事を品質管理の展開と啓発の場と考え、会員だけではなく一般の方々に対しても、品質管理の考え方を浸透させるため、有益で魅力ある行事を企画し参加を促します。
(2) 行事計画の具体的な進め方
1) 研究会  
   産学連携をベースにした研究会活動を支部活動の中心と位置づけて、次世代を見据えた若手研究者の活性化と内容の更なる充実を図ります。
・東海地区の若手研究会(名古屋工業大学:仁科健氏)[6回/年]
・北陸地区の若手研究会(金沢工業大学:石井和克氏)[発表会:2回/年]
・産学連携現地現物研究会(早稲田大学:永田靖氏) [4回/年]
・中部医療の質管理研究会(中部学院大学:国澤英雄氏)[6回/年]
2) 研究発表会[1回/年]  
   会員の多岐にわたるニーズに応えた幅広い研究・開発テーマで、かつグローバルなものづくりの現場に展開できる事例を発表します。
学会の新しい研究成果と一般も含めた産業界からの具体的実践事例を発表します。
若手研究会(東海地区、北陸地区)、産学連携現地現物研究会、中部医療の質管理研究会から、実践に使える活動成果を発表します。
3) シンポジウム(基調講演とパネル討論会)[1回/年]
 
産学界の関心が高く、一般からも多くの参加者を得られる基本方針に沿ったテーマを選定し企画・運営します
時代背景に沿ったテーマの中で、「Q確保」について、参加者の活発な意見を通じて、問題意識に対する答えが導出できる場をめざします。
4) 講演会[1回/年]  
   グローバルなものづくりの現場で役立ち、かつ一般からも多くの参加者を得られ、会員獲得につながる魅力的な企画を立案・運営を行います。
5) 事業所見学会[2回/年]  
   「Qの確保」に工夫や特色のある多様な業種、業態の事業所を選定します。
6) 幹事研修会[2回以上/年]
   幹事間の意思疎通を図り、行事の企画力・運営力のアップにつながる研鑚・議論できる研修を企画します。
(3) 中部支部の運営について
 上記行事を企画から開催まで具体的に行う幹事は、賛助企業からのボランティアであり、ほとんどの幹事は会員ではありません。このため、その運営に当たっては極力効率化を図り、負担を軽減していくことが学会としての責務と言えます。
 今年度は中部支部の運営についても、幹事の負担を軽減するための検討を行い、効率化を図っていきます。

5.関西支部

(1)運営方針
   日本企業は、世界経済の中で勝ち残っていくために、さまざまな構造改革や将来の成長戦略構築に頭を悩ませています。また、低炭素社会の実現に向けて、太陽光発電や電気自動車など、革新的な技術開発が求められる時代となってきました。今後、日本企業がさらに成長し、グローバル競争に勝ち残っていくためには、日本企業元来の強みである「技術開発力」「品質力」ならびに、それらの元となる「人づくり」がますます重要となってきます。
 このような状況の中、これまで日本の文化や産業を支えてきた“ものづくり”“ことづくり”の基盤を引き続き維持・発展させていくことが必要であり、このとき、品質管理の果たすべき役割はますます大きくなっています。
 関西支部では、品質力、組織・マネジメント力、現場力、顧客対応力の向上策について具体的に提言することにより品質管理のレベル向上に貢献することを目的に、事業活動のさらなる活性化を図り、より多くの会員が満足できる活動を展開していきます。

(2)事業内容
  1) 研究会
  統計的品質情報技術開発研究会
「新たなSQCの開発・実践を行うこと」「誤用を防ぐために既存SQCの再検討を行うこと」を通してSQC活動を活性化させます。
  科学的先手管理アプローチ研究会
マネジメントの課題を階層別に取り上げ、日本品質管理学会が培ってきた数々のQC(信頼性、IE、OR等を含む)技術をベースにし、科学的な先手管理、源流管理へのアプローチを体系化します。また、これらの成果を出版化し公表します。
  品質管理教育教材開発研究会
受講生が、ものづくりやそれを支える品質管理に対して興味が持てるように、学校・企業の教育分野で使える品質管理教育の教材を開発し、教育の仕方やマニュアルも併せて提案します。
2) 研究発表会 【 1回 】
  企業のニーズと学におけるシーズをマッチさせ、産学で相互に研鑽できる発表会を企画します。
3) シンポジウム 【 1回 】
  今、最も要求されているテーマを選定し、活発な議論のできるシンポジウムを企画します。
4) 講演会 【 1回 】
  “ものづくり”“ことづくり”の発展に寄与できる魅力ある講演会を企画します。
5) 事業所見学会 【 2回 】
  特色のある事業所の見学を企画します。
6) QCサロン 【 5回 】  
  会員サービスの充実を図るため、講話とざっくばらんな質疑応答ができるサロンを企画します。

(3)その他
  1) 関西支部企画運営委員会の実施
支部運営に関する各種の検討を行い、支部事業の活性化を図ります。中国四国九州地区の会員に対しても支部事業の案内を行い、支部事業への積極的な参加を働きかけます。
2) データ管理の質的向上と定点観測
支部活動に関する各種データ収集・管理を継続的に行い、支部活動の現状把握や活性化に役立てます。

6.論文誌編集委員会

(1) 従来からの方針を引き継ぎ、論文審査において、査読意見を参考にしつつも論文誌編集委員会の主体的な判断に基づき採択の可否を決定していきます。また、「著者責任」を基本とし、新規性・価値のある主張を含む論文については原則として掲載する方針についても、変更ありません。年間の掲載数15本をめざします。
(2) 規定された方法に従って、投稿論文審査の質の向上と迅速化を図っていきます。
(3) 国際委員会と協力して、ANQ 2015への論文発表促進、特に若手研究者への支援を積極的に行います。
(4) 国際委員会と連携して、ANQ 発表論文を対象とした英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の発行に向けて活動します。2014年度中にVol.1,No.1を発行する予定です。
(5) 論文掲載には相当なコストがかかるため、学会の財政状況を鑑みますと、論文掲載料の徴収は避けらない状況です。会員の理解を得つつ、引き続き検討いたします。
(6) 英文電子ジャーナル(Total Quality Science)でのシステムを参考にしながら、「品質誌」論文誌においても、論文審査プロセスの効率化を目指し、電子投稿・審査システム導入に関する検討を始めていきます。

7.学会誌編集委員会

 第44年度も、第43年度に引き続き特集企画・連載企画を通じて、品質管理に関する企業活動や最新の研究内容を提供していきます。前年度の委員会にて、以下の特集企画を予定しています。
Vol.44, No.4(2014年10月発行):『ものづくりにおける解析手法の最前線』
Vol.45, No.1 (2015年1月発行):『海外進出企業の品質管理教育実施上の課題と今後の方向性』
Vol.45, No.2(2015年4月発行):『農業における品質管理状況』
Vol.45, No.3(2015年7月発行):『日本にしかないおもてなしの品質・おもてなしのサービス』
 また、以下の新旧の連載企画を予定しています。
連 載:事業の高付加価値化に向けた新たな思考技術の確立と組織マネジメントのあり方
新連載:有名社長の私のTQM事始め
 この他、部会、研究会、他の委員会との協調に努め、学会の研究活動の紹介を充実させるともに、最新の品質管理手法の特集を企画しようと考えています。
 また、特集企画・連載企画の継続により、学会員の研究活動や産学連携の取組みが活発化することを目指していきます。

8.広報委員会

 学会員・非会員の双方に対しJSQC の存在感や認知度を高め、品質管理に関して産業界に役立つような意見表明や解説、各種活動の内容や記録などを広く発信していきます。
(1) 学会の目的が新たな方法論の研究開発と実践、それを支える専門家の育成であることを考慮し、会員および非会員の学会活動へのより深い「参画」を促進することをねらいとした広報活動を行うべく努力します。
(2) 学会活動を学会員・非会員により深く認知し理解して頂くため、各種活動の内容を写真やビデオによる撮影・録音を強化してビジュアル化を進めます。
(3) また対象者(会員と非会員)や情報の寿命によってどのような情報の共有をどのような媒体を使用して行うかの基準を定め、これに従って、Webサイト、ML、学会誌、JSQCニューズなどを使い分けて配信するスキームを検討していきます。

9.会員サービス委員会

 近年の会員数の減少に歯止めをかけ、会員数増加に繋がるような活動を実施していきます。
(1) 職域会員や品質技術者により、安定的かつ意欲的な新規会員増強へと導きます。品質技術者には認定証を発行するとともに、希望によりWebサイト上に氏名、所属を公開します。
(2) 中堅・若手会員数を増加するための施策を検討し、可能なものから実施を目指します。
(3) 賛助会員会社に対するメリットを強調し、賛助会員退会を食い止める策を講じるとともに、新入会を促進します。
(4) フェロー会員制度等は、継続的に検討を重ね、導入の可能性を検討します。
(5) 会員資格審査については、理事会のご協力をいただく中で粛々と実施していきます。

10.規定委員会

 学会活動の更なる発展に貢献すべく、各委員会等と協力してそれぞれの活動が効果的、効率的に進められるよう、活動の実態に即した規程、内規等を適切かつ迅速に作成、改訂するように取り組みます。

11.研究開発委員会

 昨年度の研究開発ワークショップ、研究開発・普及に関する意見交換会などの活動成果に基づき、役割を終えた研究会の解散やその手順の整備などを検討します。
 また、学会の中期計画を踏まえ、研究成果を活用した事業化をも見据えつつ、あらたな計画研究会の立ち上げを検討します。
 また、本学会の研究活動のさらなる活性化に資するべく、研究開発ワークショップを継続的に行います。

(1) テクノメトリックス研究会
   テクノメトリックス研究会では、第43年度に引き続き、「統計的手法を中核とした品質管理手法の開発・普及」を目指します。具体的には、メンバーが興味あるテーマを持ち寄り、それについて議論を行い、品質管理の手法として確立できるようにします。タグチメソッドと因果推論を中心に、多変量解析法、実験計画法、統計的手法の理論的側面、解析事例、解析手順などさまざまな視点から研究をします。
 また、昨年度同様、おおむね3ヶ月に1度の開催を考えています。そして、研究成果については、JSQC研究発表会、年次大会や品質誌の投稿論文などで積極的に発表します。
   
(2) 医療経営の総合的「質」研究会
   従来までの研究活動を継続して、第44年度もわが国の医療の質向上への貢献を図ることを目的とし、医療関係者と品質管理関係者(アカデミック、産業界双方)及び産業界トップマネジメントの相互交流を通じて、医療における品質管理を基盤とした総合的「質」経営に関する検討を進める予定です。
  1) 「医療のTQM七つ道具」の広報・周知
    七つの道具(手法)の選定の良し悪しを含めさらに検討を進めましたが、本年度は、関係各病院での更なる実施検証を含めて、具体的な取組みの支援と取組方法のガイドラインを作成する予定です。
    全国の病院での医療のTQM七つ道具の具体的な活用方法・対策具体例を収集し、前年度できなかった、医療のTQM七つ道具事例集を公表します。
  2) 医療機関におけるTQM普及を促進する医療制度・政策のあり方を提案
    前年度の品質管理学会の「医療事故調査制度に関する声明」に加えて、医療事故調査の在り方に関する検討・提言を行います。特に事故の原因究明と責任追及は別という考え方を広報して参ります。
    医療の質の向上に資する無過失補償制度のあり方を検討・提言します。
  3) 国内外の医薬品・医療機器メーカー等におけるTQM実施状況とそれに関連する制度・政策に関して調査し、その結果を学会発表・論文投稿していく。
    電子カルテに付随した不具合事例の検討を行います。特に一部委員も参加して翻訳した米国医学研究所の「医療ITと患者安全」の啓蒙と講演会等を実施します。
    医用機器に関するJIS T 60601-1-8副通則の普及啓蒙 を今年度も続行し、医療機器の病院安全体制の見直しに関する提言を行なって参ります。
    医療アラームに付随した不具合事例の検討と医療機器使用者のための警報装置(アラーム)ガイドラインの改訂と米国ECRIのアラームハンドブック、ワークブックの啓蒙を行なって参ります。
       
(3) 信頼性・安全性計画研究会
   本研究会は、第一期(第36〜38年度)と第二期(第39〜41年度)に続き、下記の項目に関し、分野ごとのベストプラクティスの収集と解析、ケーススタディ、委員の研究成果の報告、委員間の情報共有と討議を継続し、情報の有効活用と的確な意思決定の実現を目指して未然防止による信頼性・安全性確保の体系化を図ります。
  1) 信頼性・安全性作りこみ技術
    新規トラブル未然防止法の高度化
    次世代品質・信頼性情報システムの具体化と深化
    ハザードに着目した根本原因分析(RCA)の高度化
  2) 安全・安心を達成するための社会インフラ構築
    レジリエントな体制作り
    品質と安全を重視する組織文化の確立
    ユーザ・メーカ・行政の三者協業による信頼性・安全性確保のための方法論
    信頼性・安全性作りこみの視点からの管理職教育と品質管理教育の高度化
  3) 研究成果のとりまとめと情報発信
    研究会での成果をまとめ、学術講演会、シンポジウム等で積極的な情報発信
   本年は第三期(42〜44年度)の最終年度でもあり、特に、モニタリング情報やインシデント情報の有効活用の方法、社会インフラの老朽化対策に関する提言などに焦点を絞り、ベストプラクティスに基づく成果をまとめ、積極的に発表いたします。
   
(4) サービス産業における顧客価値創造研究会
  1) サービス産業(家電メーカーにおけるトータルサービス)B社との共同研究:引き続き、家電メーカーにおける基本サービスと独自サービスの検証を行います。
購入前、購入時、購入後までのトータルサービスについて、仮説検証を行います。昨年度から引き続き、仮説案の方向性を定めた上、仮説案の最適化を行います。サービス産業におけるシステマティックな方法論定式化に向けて研究を仕上げます。
  2) サービス産業向きのシステマティックな方法論の定式化:以上の種々の研究成果と研究会内部での議論を踏まえ、具体的で活用できる方法論を提案します。
  3) 今までの研究を踏まえ総括となるよう方法論や実践内容についてまとめを行います。
 
(5) グローバル品質管理教育研究会
   グローバル品質管理研究会(GQE)は昨年7月にシンポジウム開催という形で中間報告を行いました。今年度は中間報告で概要を提示しました「海外拠点における品質管理教育の共通項目」の細部を明確にし、テキスト編集・現地講師の育成などの道筋をつけることを計画しています。このために、メンバーとして企業の現役メンバーを増やすことを検討しています。

12.国際委員会

  第44年度の国際委員会は、第43年度の活動を基盤に、主に以下の事業を実施します。
(1) ANQ 2015への協力
 台北にて、2015年秋にANQ(Asian Network for Quality)総会の開催が予定されています。ANQ理事組織である台湾のCSQ(Chinese Society for Quality)が主催します。大会開催の支援やアドバイスを、JSQCとして継続的に行っていきます。また日本からの参加者についても、ANQでのリーダーシップを発揮できるよう、引き続き多くの参加者を募る予定です。また、若手研究者の育成を目指した支援を継続して検討します。
(2) ANQの安定的発展のための調整
 2015年の春にはカザフスタンで、秋に台北で、ANQ理事会が予定されています。JSQCとしてANQの発展に積極的に関与しています。ANQ-CEC(ANQの品質管理検定委員会)、Ishikawa Kano Award委員会に委員を派遣する予定です。また、ARE-QP(Asian Recognition of Excellence in Quality Practice)委員会の委員長がJSQCからタイのSQATに代わりましたので、円滑な引継ぎができるようにします。さらに財務委員会では、JSQCが委員長を務めます。
(3) 英文電子ジャーナルの刊行
 JSQCからの国際発信力を強化するべく、英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の刊行について科学研究費に申請し、採択されました。第44年度では、この安定的な運営を目指します。
(4) 海外の品質に関連する学協会とのアライアンスに関する具体的な検討
 幅広く海外の学協会と交流をもつための具体的方策について継続して検討します。特に、ANQ関係団体と交流し良い関係を作りはじめました。今後はこれをさらに発展させ、ANQ関係団体以外に対しても若手会員が交流する際の支援ができるようなプログラムを検討します。

13.標準委員会

(1) 新しいJSQC規格の制定を推進します。
  1) 小集団改善活動の指針
 小集団改善活動に関わる重要な概念および推進方法に関して、学会として統一的な見解を示し、TQMのさらなる普及・発展のための基盤を提供することを目的とする。
  2) プロセス保証の指針
 製造、サービス提供を中心に標準化されたプロセスを順守することで、製品・サービスの品質が保証されるにはどのような活動(工程能力調査、QAネットワークなど)をしなければならないかについての指針を作成する。
  3) ISO20252を公的統計の質の保証に利用する指針
 政府が、公的統計調査のプロセス保証をすすめる方針を固めつつあるのに対応し、ISO20252:2012「市場・世論・社会調査−用語及びサービス要求事項」をどのように適用するかについての指針を作成する。
  4) 第二者監査の指針
 第三者審査の限界が明確になってきている昨今、第二者監査の効用が見直されてきているが、すべての業種、規模組織において活用できる「第二者監査の指針」を作成する。
(2) JSQC規格「日常管理の指針」をJIS規格にする活動を進め、その後ISOガイド規格にするべくNWIP(新規国際規格化提案)を作成します。NWIPを作成する中からその後の展開の仕方を決めていきます。
(3) 英訳「日常管理の指針」の海外活用の展開をはかっていきます。

14.FMES、横幹連合関連

 44年度も引き続き、FMES代表者会議、FMES/JABEE委員会、FMESシンポジウムに参画し、経営工学関連学会との交流、JABEEの審査活動、FMESシンポジウム等の活動に、中核団体として協力していきます。また、日本学術会議の体制変更、JABEEの役割についても変革が求められており、FMES代表者会議やFMES/JABEE委員会を通じて、これらの今後のあり方について意見を述べていきます。横幹連合に関しては、これまでと同様、適宜活動に協力していきます。

15.研究助成特別委員会

 第44年度も引き続き若手研究者に対する研究助成を行います。募集要項の主な内容は以下の通りです。
 「助成金額は1件5万円で4件以内。対象者は、日本品質管理学会の正会員もしくは準会員、申請時に35歳以下で大学・研究所・研究機関等において研究活動を行っている者、留学生の場合は日本の大学院に在籍する外国籍の留学生等の要件を満たす者(年齢制限はありません)とします。すでに2回採択された者は選考対象から外し、助成対象は品質管理に対する研究全般およびANQ以外の国際会議での研究発表への旅費支援も含めます。期間は1年間(2014年10月から2015年9月)です。研究成果を品質誌へ投稿、あるいは、研究発表会などで発表することを奨励します。」

16.QC相談室特別委員会

 本相談室は学会ホームページ上で運営・展開されています。これまで、レベルの高い質問が寄せられ、それに対するボランティアの活発で的確な回答がなされ、一定数の閲覧者も獲得してきました。しかし、第43年度には第40年度と同程度に質問が出されない期間が長く続きました。なお、前回は特に手を打つこと無くいわば自然に質問数が増加し、その後2年間はコンスタントに質問が出る状態が続きました。
 第43年度の状況が続くようであれば、相談室の閉室も考えて行かねばならないかもしれませんが、その決断を行う前に、自由な質問とボランティア的な回答という従来の形式は続ける一方、より気軽に多くの質問が出る環境を作るために、次の所作を行うことを考えています。
 1) 現在の形式に変更後「あらし」の問題が生じていないことから、当面、形式はこのまま継続する、2) これまでの質問や回答はアーカイブに移動し、従来の相談に気兼ねなく質問ができる環境を作る、3)学会ホームページ上の表記および相談室の説明ページの表記や記述を、より目に留まりやすく親しみやすいものに変更する。

17.TQE(問題解決力向上の為の初等中等統計教育)特別委員会

 初等中等統計教育が“生きる力”をはぐくむ教育となるべく、過去5年間の活動を継承し、以下の取組みを行って参ります。
(1) “総合的な学習の時間”を活用し、問題解決教育の充実とさらなる普及に努めます。
(2) 上記(1)のために、学校現場での具体的な教育教材事例を主要な学年ごとに開発することに努めます。
(3) 上記(1)(2)に関連し、問題解決プロセスの普及・啓蒙のために、問題解決教育ワークショップを開催致します。
(4) 初等中等統計教育における「生きる力」育成への活動支援として、40年度に設立された統計グラフ全国コンクールにおける 日本品質管理学会賞の周知・徹底を図り、応募件数の増加と、その質の向上に努めます。

18.安全・安心社会技術連携特別委員会

 日本原子力学会(ヒューマンマシンシステム部会/社会・環境部会)等との共催の「安全・安心のための管理技術と社会環境」シンポジウムを、引き続き積極的に推進します。また、自動車事故対策機構等の審議についても引き続き参加・協力していきます。ISO 39001についても、認証制度の普及、支援規格の開発などについて引き続き協力していきます。
 また、安全、安心にかかわる社会技術に関して、社会ニーズを考慮に入れ、他学会との協働、大学等の教育研究活動、大型研究プロジェクトへの参画等を検討します。

19.JSQC選書刊行特別委員会

 「JSQC選書=品質管理に関する、非専門家向け高度教養講座」の地位を確立すべく、引き続き、品質立国日本再生に寄与するテーマで良質の書籍の発刊を目指します。
 並行して、第45年度以降の選書テーマ候補を充実させ、時宜を得た発行計画の立案を行います。その際、JSQC選書既刊本に対する読者の声の収集・把握に努め、今後のテーマ選定等に活かします。必要があれば、テーマ選定から発刊までの一連のプロセスを改善します。書籍の内容と購入者の傾向や関係を探ることも考えます。
 また、JSQC選書の知名度向上に向け、有効な広報策について検討・実践を試みます。

20.部会

(1) ソフトウェア部会
  前年度に引き続き、以下のことを行います。
  1) 新たな研究テーマを設定し、活動を進めます。
 前年度同様、一月に1回程度の会合を開催しながら、品質の高いソフトウェア開発に関するテーマを決め、研究活動を進めます。このことにより、部会メンバーへのサービスの向上を図ります。
  2) ソフトウェア開発関連の行事に積極的に協賛・後援します。
 他団体の開催するソフトウェア開発関連の各種行事に協賛、もしくは、後援することで、部会メンバーの便宜を図るとともに、ソフトウェア部会の広報を図ります。
   
(2) QMS有効活用及び審査研究部会
   43年度からの継続及び新規の研究テーマに関して、1回/月の頻度で研究活動を行います。
  WG1: 組織の視点から改正ISO9001についての研究
  WG2: 改正ISO9001の意図及び審査員の力量の研究
  WG3: ビジネスプロセスにおけるQMSの位置付け−持続的成功型 新QMS−
  WG4: 客観性のある第一者監査の研究−事業力向上のための指針(新規)
  WG5: 次世代対応の第二者監査技法の研究−第二者監査のガイドライン
  WG6: ISO9001(2015年版)対応、中小企業向けQMSモデルの研究 (新規)
  WG7: 「ISO規格とTQMの融合」による組織の目的・目標達成能力向上支援のための審査技術の開発
 研究状況報告につきましては、11月の年次大会で発表する予定です。なお、第二者監査のガイドラインは、標準化委員会と連携をとり、第44年度に規格化する予定です。
 
(3) 医療の質・安全部会
   第44年度も前年度に引き続き、研究活動はPCAPS、医療QMS等を中心に進めてまいります。医療QMSについては、医療における日常管理、方針管理を中心に、医療のTQMモデルの構築を進めています。また、文書管理システム、内部監査、プロセス管理も浸透し、実例による検証を進めていきます。医療界全体への啓発・推進活動も、昨年度以上に積極的に進めていく予定です。医療QMSに関する研究成果の出版を進めるとともに、2015年3月には、PCAPSと医療QMSのシンポジウムを開催する予定です。研究成果の発表は、JSQCだけでなく、医療関連の学会でも積極的に発表してまいります。
 教育・啓発活動については、医療の質マネジメント基礎講座を引き続き開講する予定です。昨年度は、新しい講師の育成に着手し、講師陣も充実してきました。引き続きアンケート結果等を参考に、カリキュラムの見直しを行うとともに、アドバンストコースの検討を始める予定です。
 部会員数については、医療者の入会がさらに増えるように、広報活動を行っていきます。昨年度から始めた医療界を中心とする他学会で研究紹介、基礎講座の紹介等の企画を行い、効果を見ていきます。