第31年度事業計画
社団法人日本品質管理学会
第31年度 自 2001年(平成13年)10月 1日
至 2002年(平成14年) 9月30日
事業計画

1.運営方針

産業界の現況は,残念ながら「品質危機」から脱皮したとは言えません.このような情況において,本学会は,

会員サービスの一層の拡充を図り,会員の研究・業務にとって無くてはならない存在となるために本年度も尽力していきます.このような活動を通じて,品質危機を乗り越え,産業競争力強化に役立ち,ひいては,消費者が安心した生活を送ることに役立つ活動を展開して行きたいと考えています.さらに,このような活動のために必要な資金を確保するために,昨年度から継続している正会員への寄付金,賛助会員会社への特別会費,経団連ルート寄付金を継続し,より多くの会員,賛助会員会社,あるいは,産業界からご賛同を得たいと考えています.また,財政的基盤を強化するために賛助会員会社の増加を図ります.

具体的には,次の施策を実施していきます.
(1) 学会30周年記念事業として次の活動を展開します.
  • インターネットを活用した会員サービスの充実及び電子化による学会事務の効率向上
  • 品質管理相談室の創設
  • 若手研究者への支援を含む研究助成の創設
  • 品質管理推進功労賞授賞者の選考プロセスの改善
(2) 従来の編集委員会を,投稿論文審査委員会と編集委員会の2つの委員会に分割し,論文誌審査の充実とともに,会員誌部分の拡充を図ります.
(3) 工学的側面に加えて,社会科学・人間科学・医学等の側面も含めた学際的な立場から,品質の学理および技術の進歩発展へ向けた活動の展開を図ります.
(4) (3)に対応して,本学会の基盤である製造業のための活動を強化するとともに,広く産業・社会全般での品質管理の推進を図るために,学会名称のあり方についての検討を開始します.
(5) アジア品質管理シンポジウムの我が国での開催を通して,アジアの品質管理関係諸団体との協調と連携を深めるとともに,アメリカ品質管理学会(AQS)を始めとした海外関係学会との交流を図ります.
(6) わが国おける品質管理の中核的存在として品質危機克服に向けた積極的情報発信に努めます.
(7) 新規入会会員に対するサービスに配慮します.

2.長期計画委員会

(1) インターネットを活用した会員サービスの充実及び電子化による学会事務の効率向上
インターネットを活用して,会員向サービスと非会員向け広報のより一層の拡大・充実を図るため,今後3年間を目処に以下のサービスの提供・運営を開始します.

a.Webを活用した会員サービス・広報の充実

  • 現行のホームページを改良し,より見やすく,より情報量が多く,品質管理関連情報のポータルサイト
  • 会員や賛助会員会社に限定した情報提供サービス・仮想コミュニティー(電子掲示板など)
  • 委員会など学会運営にかかわるメンバーに限定した仮想委員会
  • 産学共同研究のコーディネーションのための「相談室」
b.電子メールを活用した会員サービス・広報の充実
  • 「メールニュース」の本格的稼動
  • 会員専用,委員会などの学会運営のためなどのメーリング・リスト
  • 電子メールによるサービスとWebによるサービスの連携
c.学会事務の電子化・自動化

入会・退会の受付処理,行事への参加申し込みなどの定型業務の自動化
これらの活動のために,Web特別委員会を設置します.この特別委員会は,事業委員会,広報委員会,会員サービス委員会と連携を取りつつ活動を進めます.

(2) 若手研究者への研究助成
学術研究のプロセスのひとつのモデルとして,次のようなステップが考えられます.
 a. テーマ設定
 b. 研究の推進
 c. working paperについての討論
 d. 研究発表会での発表
 e. 品質誌への投稿,掲載(日本語)
 f. International Journalsへの投稿,掲載(英語)

若手研究者がこのようなステップで研究を進める際に,a.,c. f.のステップを中心とした支援を模索していきたいと考えています.「a.テーマ選定」については,学と産との連携の中でテーマを見出す支援方法を,Web上のひとつのコンテンツとして開発したいと考えています.また,「f. International Journalsへの投稿,掲載(英語)」については,取りあえずAmerican Society for Qualityへの働きかけの中で実現することをめざします.また,「c. working paperについての討論」は,いわば,”生煮え段階”でのフランクな意見交換であり,同じようなテーマを抱えた少数の研究者による忌憚のない討論が役に立つと考えます.このような研究集会の開催費用の一部に対する助成を含む若手研究者あるいは海外からの留学生への研究助成を,30周年記念の寄付金・特別会費を原資として実施します.海外の若手研究者を招いての集会も大いに奨励したいと思います.具体的な内容については,目下,検討中でありますが,例えば,次のような骨子での実施が考えられます.
   ▽ 助成対象: 品質管理に関連した研究に対する助成
   ▽ 助成金額: 1件10万円前後で年間総額50万円位
   ▽ 期  間: 寄付金・特別会費の集まり具合による.
このために研究助成特別委員会を設置します.この特別委員会は,研究助成の企画,広報,募集,選考等の任にあたるものとします.

(3) “品質管理相談室”(仮称)の設置
日本の産業界における中小企業の「品質再生」に役立つことをめざして,「品質管理相談室」(仮称)を学会のWeb上に設置し,依頼者からWeb上に投函された質問に対して“相談員”(学会員)が電子メールを通じて相談に応じます.このために,「品質管理相談室特別委員会」を設置します.この特別委員会は,「品質管理相談室」の企画,相談員(ボランティア)の募集・選定,広報,相談業務の運営,寄せられた相談内容等の分析にもとづく学会が取り組むべき重要課題の提言等の任にあたるものとします.
(4) 社会科学・医療等も含めた学際的な立場からの活動の展開
日本の品質管理の特徴は,製造業において技術者が中心的担い手として発展してきた点にあります.新しい世紀におけるより一層の発展を期すためには,この特徴を堅持し,一層強化するとともに,広く産業・社会全般での「質管理」の展開をめざして,社会科学・人文科学,医学等の専門家を含めた学際的立場からの活動の展開を図っていく必要があります.このために,本年度から,社会科学ならびに医療担当の学会理事を置きます.これらの学会理事は,この面での企画の任にあたるものとします.
(5) 学会名称の検討
(4)における活動を展開していく際に,本学会名称として使われている「品質」という用語が製品品質をイメージするということが問題になっています.また,これに加えて,本学会の英文名称:Japanese Society for Quality Controlの"control"が,今日の当学会の活動実態と比較して大変狭い意味であり,国際的な理解,交流という点から問題となっています.これらの点から,学会名称のあり方について検討を開始します.この検討には,長期計画委員会がその任にあたります.
(6) 品質管理推進功労賞授賞者の選考プロセスの充実
前年度の第1回品質管理推進功労賞の選考の経験を踏まえて,選考プロセスの透明性,選考業務の簡素化をめざしてより一層の充実を図るために,必要な改訂を行います.

3.事業委員会

第31年度本部行事の基本的構成は,前年度同様,年次大会,教員集会,講演会,ヤングサマーセミナー各1回,シンポジウム2回,事業所見学会3回,クォリティパブ6回を予定しております.(中部支部,関西支部の行事に関しましては各支部の事業計画をご参照下さい).行事内容の重点方針を下記のように定めて,会員の要望に応える努力をしていきます.
@ 日本の再生,とりわけ企業の競争力向上のためにTQMが貢献すべき分野たとえば企業倫理,ITの活用,経営及び品質活動の評価,グローバル対応,ISO9000,現場の活性化などでの事業展開を企画します.
A 企業の経営課題を取り上げタイムリーな事業を開催します.
B ヤングサマーセミナーを中核とした次世代への継承プログラムの展開をはかる.
なお,継続的専門能力開発(CPD)の証明書発行は会員から好評を得たので今後とも続けていきます.

4.中部支部

4.1 基本的な考え方
経済構造の変革期にあたって
  『品質管理活動のあり方は如何にあるべきか』の追求
(1)あたり前の品質の確保 −原点からの総点検−
(2)新製品開発のためのサポート手法の研究と実践

4.2 具体的な進め方
魅力ある企画と募集方法の工夫を通じて研究活動の活性化と行事への参加者を増加
(1) 研究発表会[1回/年]
  学術研究と企業研究の両方が研鑚できる発表会の企画,運営.
(2) シンポジウム[1回/年]
  学会員の関心の高いテーマ,内容の企画,運営.
(3) 講演会[2回/年]
  各界No1の講師を選定し,魅力ある講演会を実現.
(4) 事業所見学会[3回/年]
  新しい発想や工夫を凝らした特色ある事業所の選定.
(5) 幹事研修会[3回/年]
  時代にマッチしたテーマを選定し,支部活動のレベルアップに繋がる企画,運営.
(6) 若手研修会[6回/年]
  東海地区と北陸地区を中心とした若手研修会を設け,その活動を助成.

5.関西支部

第31年度は関西支部10周年を迎えます.今年度も引き続き,従来からの基本方針
  @産学の横断的連携による実利を獲る活動.
  A若手の会員増強と彼らを引き付ける魅力ある活動の展開.
  B研究開発,経営に貢献できる学会活動.
を念頭として,に各事業の積極的展開を目指します.
産学の連携のもと,会員増強に取り組み,10周年の区切りをステップにして,関西での情報発信の場として,会員からの相談にも対応していけるよう,さらに会員サービスの充実にも取り組みます.

6.投稿論文審査委員会

今年度からは,従来の編集委員会を,投稿論文の審査・編集を行う投稿論文審査委員会と,特集・その他の記事の企画・編集を行う編集委員会に分け,より質の高い審査・企画を目指して活動を一段と精力的に推進していく方針です.

投稿論文の掲載の増加は重要な課題であり,学会員の皆様のより一層の研究活動の活性化に期待するとともに,投稿論文審査委員会としても投稿しやすい環境の整備と投稿論文審査のさらなるスピード化と質の向上をめざして積極的に取り組んでいく所存です.

7.編集委員会

特集については,「創造的組織風土の育成」,「新しい時代の標準化を考える−21世紀における社内標準化はどうあるべきか−」,「スピード化・グローバル化に対応する品質保証」,「TQMツールボックス」など,前年度に引き続き,品質管理に関するマネジメント技術の体系化を促進することをねらいに一貫したテーマを取り上げ企画の検討を進めていくつもりです.また,時宜に応じた話題についてもトピックス・報告として積極的に紹介していきます.

8.広報委員会

次の活動を中心にWebを用いた会員および会員外への広報活動のさらなる充実を図ります.
8.1 メイリングリスト活用による情報提供
学会MLへの登録率の向上,およびHPにて会員一人一人が各自で本MLへの登録・脱退が出来るシステムを運用致します.
8.2 Home Page(HP)のさらなる充実へ向けて次の活動の検討と実施.
1) “意見交換の場”のコーナーは,30年度にWeb上に直接御意見を掲載できるように拡張されましたが,これらをプラットホーム化による有効活用
2) 品質誌文献・研究発表会資料等の検索用コンテンツ(タイトル・著者・キーワード+アブストラクト)の充実
3) HP英語サイトのコンテンツの充実: 同上
4) JSQC会員のSegmentation 別ニーズの顕在化とWebによるそれらのニーズへの対応
8.3 プレスへの定期的情報発信
1) 日経産業新聞・日刊工業新聞への継続的情報提供
2) コメンテーター登録制度の新設: 分野別にもうける 役割・位置づけ・任期

9.会員サービス委員会

第30年度は会員数の拡大に力点を置きましたが,第31年度は活動の内容の充実による,会員のサービス向上が問われる年となると思われます.
1) 新サービスの開発と充実
第30年度は会員が急増しまた.そのなかの多くの方が,ISO審査員と思われる.
従って,「品質」誌の内容,研究会テーマなど,ISOに関するもののウエイトを高めていく必要があります. 既に第30年度より
 * ISO9000’S審査研究会
 * ISOマネジメント公開講座
などはスタートしているが,その内容の充実を図ります.
2) 従来からの会員に対する会員サービス向上の基礎調査
日頃JSQCの行事に参加している方々の要望を含め,非参加者や地方の会員のご意見を伺う機会がほとんどありません.そこで,できるだけ多くの会員の学会に対する意見・要望を聞く目的でメールアドレス登録者約1800名を対象にアンケートを実施し,その集約結果をもとに学会としての「顧客満足度」の向上を図ります.

10.規定委員会

理事会・各委員会からの要求に応じ,適宜,規定・内規及びマニュアルの見なおしを実施していきます. 規定・内規及びマニュアルの見なおしをいたします.

11.研究開発委員会

第31年度は,品質管理の更なる普及・発展を目指し,より多くの研究者らが品質管理の研究に積極的に取り組めるような“魅力ある研究環境つくり”を行い,所与の研究成果が得られるよう,以下の諸活動に取り組んで参ります.
1) 研究会組織には,現在,計画研究会/公募研究会/研究準備会の3つの研究会制度があります.研究活動の更なる活性化を図るため,これら従来の研究会組織の機能/役割/運営方法等を再評価し,既成に囚われない新たな研究組織体の設置を視野に入れた,新しい研究組織体制/運営方法のあり方を検討して参ります.
2) 時代の変化とともに,当学会への期待と役割は益々大きくなってきております.意欲ある研究者や実務家らが,品質管理に関わる学理・技術の進歩・発展に対し“研究の意義”を充分感ずるような新たな価値(ベネフィット・メリット)を探り,それらを意欲的に盛り込んだ研究支援・推進体制の充実を図って参ります.
3) 近未来の動向を見据え,世の中が真に求めるニーズ/ウォンツに適合する研究テーマを積極的に発掘し,会員の総意が得られるよう研究会活動に反映して参ります.それにより,これまで品質管理が培ってきた有効なノウハウ/考え方を新たな未開拓の分野にも適用・拡大させて参ります.
4) さらにグローバルな視点から,会員諸兄が抱える品質に関わる諸問題を積極的に取り上げ研究活動を推進することで,学術的な研究成果を積み上げて参ります.そして,これらの研究成果が有益になるよう学会内外に幅広く公開して参ります.
5) 創立30周年記念事業の一環として企画された『研究助成』制度との整合化を推進し,当制度との相乗効果を図ることによって研究開発活動の更なる普及・発展を図って参ります.

(1)テクノメトリックス研究会
研究会は4回開催する予定です.第30年度のテーマである“因果推論の品質管理への応用”“主変数法など結果系変数の選択問題”に関する研究を継続して行います.応用事例の研究も進めていきます.学会誌“品質”への論文投稿,解説の寄稿などを通じて,これらの研究成果の公開を進めていく予定です.

(2)医療経営の総合的「質」研究会
第31年度の医療経営の総合的「質」研究会は以下の事業を実施する計画です.
1) 作年度に引き続き,毎月1回,医療関係者と品質管理関係者の報告会を開催します.
2) 医療関係者への啓蒙活動の一環として,研究成果の一部を,医学書院発行の雑誌「病院」に毎月連載します.2002年3月まで.
3) 研究成果を出版予定である.2002年3月までに出版します.
5病院の事例報告と質の観点からの分析(書名未定)
4) 医療関係者への啓蒙活動の一環として,医療関係団体が主催する研修会,シンポジウム,出版物等に委員の参加・講演・寄稿等をお願いします.
5) サービスTQM推進協議会(仮称)が発足したので,当研究会としては,サービスTQM推進協議会(仮称)との連携も視野に入れて活動します.
6) 品質管理学会関連の会合あるいは出版物に経過あるいは成果の報告を行います.

(3)ISO9000's審査員研究会
ISO9000's審査員研究会につきましては来年度も継続して実施し,研究会の成果については年次大会に最終報告を行い,その活動内容について出版等を検討した上で,会員に公開する予定です.また,引き続き標準化委員会活動について品質誌でPR活動を推進することとします.

(4)複合技術領域における人間行動研究会
29年度,30年度の研究活動をヒューマンエラーや標準不遵守などの人間行動に起因するトラブルの未然防止をはかるための方法論の体系としてまとめます.研究会の開催は2002年1月までとし,会員が利用可能な研究報告書(約250頁)を作成します.また,その概要を会員に紹介するために,2002年5月の研究発表会で発表を行うとともに,品質誌に研究会報告を掲載します.

(5)知識創造実践研究会
2001年6月に発足した本研究では,既に4回の研究会を開催し,知識創造の仕組と役割について研究を行っています.特に形式知となった知識(ある物事について知っていることがら,データなど)と技能を突き合わせて知恵(知識としてのある物事について知っていることがらを適切に処理する能力など)を出す仕組について掘下げています.

一方,目的の設定過程やマネジメント形態の変化(ピラミッド型からフラット型へ等)にも視点を置き,マネジメントシステムが時代とともに変化していることを認知しつつ,そのシステムに合った知識創造ツール構築も重要な目標の一つとしています.

執念と感性,やる気とひらめき,等の知識創造との関連の研究も更に深化させてゆく計画である.これらの研究が進めば,最終的には顧客満足の得られる製品,サービスの創造は勿論,企業にとって生き抜く上での重要なシステムツールの開発にもつながると考えます.

更に,地球環境保護といった社会的要求にも応えられる手法開発の一助にもなると信じています.

12.国際委員会

31年度の国際委員会では,30年度の活動をベースに次を行います.
(1) 第15回Asia Quality Symposium(AQS)共催と第16回開催準備
第15回AQSについては,30年度国際委員会の活動を継続し,ホスト国の学会であるKorean Society for Quality Managementにとともに共催します.一方,第16回AQS については,日本がホスト国の開催になるので例年よりも早めに活動を開始します.
(2) 新規国際委員会活動の実施
30年度国際委員会で検討した基本方針について,優先順位等の検討の後に方針の具現策を実施します.また,30年度から始まった調査チームの派遣,海外研究者招聘なども継続に対して前向きに検討します.

13.標準委員会

昨年度は,ISO9000ファミリー規格及びマネジメントシステムに関する情報収集及び会員サービス向上活動を進めて参りました.マネジメントシステム公開講座につきましては,前年度から引き続き3月まで6回開催予定です.この公開講座を通して会員へのサービス強化を図っていく予定です.また,他の委員会との連携を図るとともに,品質誌に標準委員会活動の概要を定期的に掲載し,会員に情報公開を行う予定です.

14.日本学術会議経営工学関連

2年後の学術会議18期の任期終了を睨んで,発刊予定の報告書のテーマについて絞り込んで行くとともに,そのテーマを平成14年の第18回研連シンポジウム(JIMA主担当)に反映させて行くことを計画しています.またJABEEの試行の準備および本格認定に向けての活動をFMES/JABEE委員会を中心に進めてまいります.また科学研究費補助金の枠については,「社会システム工学」が属している「複合領域」全体の見直しも検討されているところであり,それへの対応も図る必要があるかと思います.