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JSQCニューズ 2020年2月 No.378

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■トピックス:日科技連 品質管理セミナーベーシックコース70周年を迎えて
■私の提言:品質管理と社会実装
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トピックス
日科技連 品質管理セミナーベーシックコース70周年を迎えて

日本科学技術連盟 鈴木 健二

 品質管理セミナーベーシックコース(略称BC)は、「品質管理技術に関する深い知識と高い応用力の習得」をねらいに1949年に創設された。以来、QCリサーチグループにより、統計的方法部会、管理図部会、抜取検査部会、サンプリング部会、統計理論部会、実施法部会等におけるたゆまぬ研修活動によりコースの体系が築き上げられた。

 30BC(1966年)からは、コンピュータ・コースの付設に伴い、各月6日間・計36日間から各月5日間・計30日間コースに再編成され、40BC(1971年)以降は新カリキュラムにより全面的にテキストの改訂が行われた。その後、TQC(全社的品質管理)の普及に伴う第二次、第三次のテキスト改訂(44BC、48BC)、解析ソフトウェアやケーススタディの導入などを経て今日に至っている。2019年10月時点で延べ135回、308クラスが開催され、34,434名の研修生を産業界に輩出してきた。
 日本で最も歴史ある品質管理教育と言われているBCは、2019年に開設70周年を迎えた。これまで40周年、50周年、60周年と節目のタイミングで記念企画を開催し、品質管理教育の重要性の高揚を図ってきた。2020年1月16日(木)に70周年記念講演会を69社94名(講演風景を配信した大阪サテライト会場には36社47名)の参加者のもと盛大に開催した。講演会では、BCへの継続派遣企業による2つの事例発表と3つの講演が行われた。概要を簡単に紹介する。

●特別講演 「私と日科技連BC」 
 吉川 昭彦氏(澤藤電機(株))

 澤藤電機は2016 年度 TQM 奨励賞受賞企業。社長の吉川氏はBC卒業生であり、受講の体験談と澤藤電機のTQM活動、SQC活用事例・BC卒業生の活躍について講演された。

●事例発表1 「いすゞ自動車のBCを活用した技術者教育について」
 池田 寛氏(いすゞ自動車(株))

 いすゞ自動車は、1916年(大正5年)創業の歴史をもつ商用車メーカーであり、年間20名を超える技術者をBCに派遣。品質技術センターでの人材育成の取り組みを話された。

●事例発表2 「海外出向者教育へのベーシックコース活用」
 久米 浩介氏((株)エクセディ)

 エクセディは、駆動系を中心とした自動車部品の専門メーカー。世界24ヵ国に拠点をもち、海外拠点での品質管理活動や海外出向者へのベーシックコース活用について紹介された。

●基調講演「ベーシックコースから学んだこと」
 永田 靖氏(早稲田大学 教授)

 BC東京幹事長である永田先生は大学院博士課程の時にBCを受講され、長年にわたりBCにご協力をいただいている。BCとの出会いと関わり、疑問を感じた手法やSQCセミナーに関する受講生・講師・派遣企業・運営者それぞれの心得について講演された。

●記念講演 「BCで育つエキスパートが品質経営の力に」
 佐々木 眞一氏(日科技連 理事長)

 BC卒業生である日科技連の佐々木理事長は、トヨタの品質経営・品質保証の考え方、自工程完結とそのオフィスワークへの拡大について講演された。

 各講演終了時には参加者から多くの質問が寄せられ、活発な質疑が展開された。また参加者アンケートには好評の声が多数寄せられたので、代表的なものを紹介する。
教える側、教わる側(教わった側)両面の話が聞けたことと、他社事例を知ることが出来た。
TQM(総合的品質管理)活動を社内でさらに推進するために参考となる内容であった。

 現在、AIやIoTといった科学技術の進歩に伴い、顧客・社会や組織の変化がとても速くなっている。企業はその変化へ対応できるかどうかが重要となっている。この様な状況におかれている企業経営に、BC卒業生が活躍していくものと確信している。


私の提言
品質管理と社会実装

東京大学 下野 僚子

 品質管理を専門にしていて良かったと思う。品質という言葉には顧客指向という仕事の目的を示す意が含まれ、管理という言葉には持続可能な手段の選択を促すような意が含まれている。こうした考え方を理解し、関係する手法を駆使すれば、(科学的な問題解決という観点からは)社会課題に対して足がすくむことはない。
 私が所属している東京大学「プラチナ社会」総括寄付講座は、環境・エネルギー、健康医療などの課題に対して、自らは技術開発を行わず、既存の技術システムやサービスの実装により課題達成を指向する研究グループである。このため、ニーズ側にある社会課題を詳細に把握するため、研究フィールドを特定の一機関に限定せず、地域全体との関係づくりを進めている。一方シーズ側にある技術システムやサービスの開発者とのネットワーキングも必要である。
 私は約4年前、工学系研究科に属する品質管理に取り組む研究室から現所属に異動した。社会実装を指向した研究活動のために、外部の複数の機関や背景が多様なプレイヤとの協働が必要である。例えば、私が関わることの多い健康医療領域でいうと、医療提供者(病院など)、保険者、行政、開発者(企業など)でそれぞれ医療の質の中で重視する側面が異なる。品質マネジメントシステムを援用するならサービスの開発から提供までの一連のプロセスを俯瞰し、各者が分担して質の各側面を作り込んでいけば良い。開始までに時間を要したが、これまでの品質管理分野での視点が有用であることを感じている。
 現在取り組み始めた研究課題の一つに、地域を研究フィールドとして、主に自治体によるヘルスケア関連事業の質向上がある。品質目標の多面的な検討、長い長い意思決定プロセスの可視化、質が作り込まれるプロセスの特定などを行っている。近年は行政機関においてPDCA、政策評価といった考え方が提示されているもののその実践は各担当に委ねられていることから、そうした評価や改善を有用なものとするため尽力したいと考えている。
 民間企業によるSDGsへの取り組みにあるように、社会課題への注目は高まっており、社会実装において多様な機関の協働は当たり前になりつつある。そうした中で、目的を見失わず、持続可能で効率的な手段を議論する素地をもつ品質管理分野の知見はますます重要になっていると感じている。

 


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