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JSQCニューズ 2018年2月 No.362

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■トピックス:新規投稿区分「研究速報論文」の創設について
■私の提言:流行語との付き合い方
・PDF版はこちらをクリックしてください →news362.pdf

トピックス
新規投稿区分「研究速報論文」の創設について

論文誌編集委員長 黒木 学

はじめに
 Total Quality Scienceの刊行にともなって、日本品質管理学会論文誌 (以下、論文誌)に投稿される論文数が減少している。そのため、論文誌編集委員会(編集委員会)では、どうやってこの問題に歯止めをかけるかといった議論を繰り返し行ってきた。そのようななかで、編集委員会では、研究発表会における発表件数の増加は論文誌投稿件数増加への大きな布石であると考え、第436回理事会(平成29年7月10日開催)で「優秀発表賞」の創設を提案し、第47回年次大会から本格的に実施することとなった(関西支部では2008年から優秀発表賞制度が実施されている)。そして、研究発表会での発表内容を発表のままで終わらせないためのアイデアの一つとして、編集委員会は、第441回理事会(平成30年1月29日開催)において、新規投稿区分「研究速報論文」の創設を提案し、承認された。このことを踏まえて、本記事では、研究速報論文について紹介させていただきたい。

新規投稿区分「研究速報論文」
 新規投稿区分「研究速報論文」が対象とするものは 「品質または品質管理に関して新機軸の潜在的な可能性を宣言した、速報性のある研究論文」である。この投稿区分に投稿可能な論文は、初回原稿受付日からさかのぼって1年以内に本学会が主催する研究発表会(支部によらない)で口頭発表した内容を拡張したものに限定される。ただし、優秀発表賞受賞の有無とは無関係に論文を投稿することができる。

既存の投稿区分との違い
 新規投稿区分「研究速報論文」は以下の点で、報文・技術ノート・調査研究論文・応用研究論文・投稿論説(以下、既存の投稿区分)とは大きく異なっている。
(1) 潜在的可能性に基づいて論文審査が行われる。研究速報論文では、既存の投稿区分で謳われているほどの完成度の高さが要求されない分だけ、緩やかな論文審査が行われるものと予想される(実際の論文審査レベルは査読者に依存する)。
(2) 投稿論文に関するやりとりはすべてメールで行われる(郵送では受け付けない)。
(3) 投稿論文の価値を正当に評価できると思われる2名以上の審査員が学会の内外を問わず選定・指名され、審査員による投稿論文審査が行われる。ただし、投稿論文の内容は研究発表会で発表されたものであることから、著者名が審査員に知らされる(審査員は匿名である)。
(4) 投稿論文は少なくとも再々審査までに「掲載可」あるいは「論文誌編集委員会の意見どおり改めれば掲載可」との判定に至らなかった場合には、掲載不可との判断を下される。すなわち、査読者による審査は最大で2回しか行われない。
(5) 論文のスクリーニング・査読依頼・掲載可否の判断が編集委員長と担当幹事によって行われる(編集委員会の開催を待たない)。
(6) (5)に関連するが、編集委員長と担当幹事は定例の編集委員会において論文審査の進捗状況報告を行う。しかし、編集委員会が開催されるまで掲載の可否判断が保留されるといったことはない(他の投稿区分と同様、論文投稿は随時受け付けている)。
(7) 既存の投稿区分の標準査読期間はおおむね1か月であるのに対して、研究速報論文の標準査読期間はおおむね2週間である(実際の査読期間は査読者に依存する)。
 なお、論文投稿のモラルを守っていただくという意味では当然のことではあるが、既存の投稿区分と同様に、研究会発表予稿集に掲載された原稿とほとんど変わらないものや論文として体裁をなしていないものは受けつけないことに注意されたい。

 品質管理界の活性化のためにも、会員のみなさまにはぜひとも研究発表会で発表していただくとともに、「研究速報論文」への投稿も検討していただけると幸甚である。


私の提言
流行語との付き合い方

日立金属(株) 小野 眞

 昨年の流行語大賞はインスタ映えと忖度だそうです。社会人に限れば、働き方改革も流行語でしょう。機械学習、ビッグデータ、IoTなどの言葉も紙面に踊っています。本学会でも「製造業のためのビッグデータの解析あり方研究会」が発足しました。品質管理に携わる我々は、このような時流とどのように付き合えばよいのでしょうか。
 私自身は波瀾万丈とまではいきませんが、内外資含め3社を渡り歩き、様々な製品の品質データを利活用してきました。また、国内外の様々な方々の解析結果に目を通して、意見交換をしてきました。その経験から思うことを述べさせていただきます。
 まず、どんなにデータが増えたとしても、基本に忠実にデータをしっかり見つめなければ効果的な利活用はできません。データが大きい、項目が多いと言い訳をする人が大勢います。それは統計や品質管理の基礎知識があったとしても、ビッグデータを操るスキルが足りないためではないでしょうか。品質管理者と言えども、高度な情報処理のスキルが不可欠な時代になってきたと感じます。ビッグデータを手懐け、QC七つ道具をうまく活用してデータをしっかり見ることが大切です。
 次に、機械学習を誰でも手軽に使える時代になってきました。しかし、基本に忠実にその手法の特長を理解しなければ、効果的な利活用ができないばかりではなく、意思決定を誤る危険が潜んでいます。試しに使ってみたら、想像以上の精度で予測できたという話をよく耳にします。身構えず、まず試してみることはとてもよいことです。しかし、交差検証を行わずに喜んでいる方々をよく見かけます。丸暗記したことがそのまま試験に出れば、できて当然です。しかし、応用問題を解けてこそ、真の学習能力と言えます。
 最後に、働き方改革に関しても一つ提言です。ビッグデータや機械学習とうまく付き合うことで、労働時間を短縮できるかもしれません。しかし、本学会はどうでしょうか。学会活動も仕事の一つではないでしょうか。他の多くの学会の研究発表会は、平日開催です。本学会はなぜ週末に行うのでしょうか。これでは同僚に聴講を勧められません。参加者の低下が問題視されている中、思い切った改革が必要な時期に来ています。


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