2016年12月1日から3日にかけて、(一財)日本科学技術連盟主催の第103回品質管理シンポジウム(QCS)が、「IoT時代における品質管理の役割と重要性−IoT時代の品質保証とTQMの姿を探る−」というテーマのもとに(主担当組織委員:佐々木眞一氏/(一財)日本科学技術連盟 理事長、トヨタ自動車(株) 顧問・技監)、箱根ホテル小涌園において開催された。今回は今話題のテーマもさることながら、特別企画としてQCS賛助会員会社であるトヨタ自動車(株) 取締役社長 豊田章男氏が登壇されることもあり、250名を超える多数の参加者が集う熱気に満ちあふれたシンポジウムとなった。
豊田章男氏の特別企画は「自動車の明るいミライへの挑戦」という演題で、BSジャパン日経プラス10メインキャスターの小谷真生子氏との対談形式で行われた。全世界35万人の従業員を擁する大企業のトップとしての責任は重大である。トップの役割は、誰にも決められないことを決めること、そして責任を取ることであると明言された。品質問題に関する米議会の公聴会で矢面に立ち、その試練の中で改めて認識されたとのこと。社長としていろんなことに挑戦し、組織に手を加えたりもしたが、結局は「人」に行きつくという。トヨタ工業学園のビデオが放映され、トヨタでは、自ら考え、自ら動く人材を育てることに力を入れていることを紹介。技よりも人間としての道徳観念が大事である。強く、たくましい人材、事が起こった時、進んで前に出られる人、状況判断が的確にできる人を育てる。小谷氏は、トヨタの人材育成を見ていると、「相手を慮(おもんぱか)る」「間(ま)をはかる」といった今の日本人には希薄となった、日本人が本来持っている日本人の良いところを感じるという。人中心の経営、人材育成に向けて、自分も人としての完成度を上げる努力をしていきたい。イソップ童話『北風と太陽』の「太陽」のような存在になりたいとの熱い言葉で対談を締めくくられた。
人間性尊重、人重視はTQMを支える大きな柱の一つである。ここにトヨタの強さ、底力の源泉を見たような気がした。
法政大学 教授 西岡靖之氏の基調講演、4名の企業トップの方々の講演ののち、参加者は7班に分かれ、それぞれのテーマでグループ討論が行われた。
■[基調講演]つながらない製造業は生き残れるか?/西岡靖之氏(法政大学 デザイン工学部 教授)
■[講演1]コマツにおけるIoT活動について/大橋徹二氏((株)小松製作所 代表取締役社長(兼)CEO)
■[講演2]ロボット革命により世界に勝つ日本のものづくり/小笠原浩氏((株)安川電機 代表取締役社長)
■[講演3]オムロンが提案する、新しいオートメーションによるモノづくり革新/山田義仁氏(オムロン(株) 代表取締役社長CEO)
■[講演4]Becoming Digital Industrial 「次世代製造業」を目指すGEの挑戦/熊谷昭彦氏(GEジャパン(株) 代表取締役社長 兼 CEO)
次回、第104回品質管理シンポジウムは2017年6月1日(木)〜3日(土)、テーマは「変化に対応できる、変化を生み出せる組織能力の獲得」。なお、会場の「箱根ホテル小涌園」は、今回の第103回をもって最後となる。1965年6月の第1回から今回の第103回まで52年の長きに亘って会場として使用され(途中2回は別会場で開催)、品質管理シンポジウムといえば“箱根QCS”と呼ばれるほど、親しみをもって浸透した会場であった。諸先輩たちが歩いたコンベンションパレスにつながる、長く、急な階段を一歩一歩踏みしめながら、そのお顔を思い出しながら登ったのは私だけではなかったのではないだろうか。