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JSQCニューズ 2016年5月 No.348

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■トピックス:デジタルビジネス人材育成 〜IoT 時代のイノベーションに向けて〜
■私の提言:お客様第一を実践するのに大切なこと
・PDF版はこちらをクリックしてください →news348.pdf

トピックス
デジタルビジネス人材育成 〜IoT 時代のイノベーションに向けて〜

横浜国立大学 情報基盤センター長 田名部 元成

1.はじめに
 2016年3月18日、東京工業大学キャンパスイノベーションセンターにおいて、経営工学関連学会協議会(FMES)の主催で、第31回FMESシンポジウムが開催されました。今回のシンポジウムは、デジタルビジネスを実現させていく中心的役割を担う人材の育成が進んでいないわが国の状況と課題を認識し、より良い方策を得るためのきっかけとなることを意図して企画されました。

2.デジタルビジネス時代に向けて産業界の求める人材像
 最初の講演者は、重木昭信氏(日本電子計算(株)顧問)です。重木氏は、社会におけるICTの役割の変化を、ICTの使われ方の進化、技術の発展、文明論の視点などから概観した後、この10年間のIT人材育成の取り組みを3つの時代区分に分けて説明していきます。最初は、2005年から約5年間における経団連や政府の動きで、この間の取り組みでは、高度ICT人材育成に対するPBL教育の有効性が確認されたものの、育成する人材像の議論が不十分であったことが課題として残ったとのことです。それから2015年までの動きは、IT融合人材育成連絡会などとともに紹介されていきます。ここでは、育成する人材像が、ICT利活用人材育成やIT融合人材へと変化してくる様が伺えます。2015年以降では、イノベーション人材やデジタルビジネス人材が育成の対象となってきます。そして、講演は、産業界が必要としている人材は、事業者と一緒にビジネスモデルを創造できる共感力や、高品質よりもスピードを優先してシステムを構築できるスキルを有する人材だとのメッセージで締めくくられました。

3.デジタルビジネス創出・定着のための人材育成の現状と今後
 次は、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の角田千晴氏です。角田氏は、多くの情報システムユーザ企業において、IT部門の役割がビジネスモデルよりもビジネスプロセスの変革提案にあるという現状と、IT予算が、経営環境に応じて自らを変革する「バリュー・アップ」よりも、事業の根幹を支える「ラン・ザ・ビジネス」システムの維持に費やされているという現状を指摘します。そして、IT部門が事業のデジタル化に対応できなければ、ビジネス部門が独自で外部サービスを活用してデジタル化を推進していくようになるというIT部門不要論について言及し、今後のIT部門に求められるのは、まさにビジネスに直接関わり合う事であると力説します。後半は、そのようなIT部門に求められる人材育成の取り組みとして、JUASの各種セミナーについての紹介が行われました。

4.イノベーション経営に求められる人材・組織
 3つ目は、ITコーディネータ協会(ITCA)の前田信太郎氏による講演です。ITコーディネータとは、経営者の立場に立って経営とITを融合し、真に経営に役立つITサービス利活用の推進・支援を行い、IT経営を実現するプロフェッショナルのことです。前田氏は、環境変化のスピードアップがビジネススタイルの変化をもたらし、改善や改革以上にイノベーションを必要としていることを踏まえ、ITコーディネータをより詳しく定義して、経営の源流に立って環境変化を捉え、変革への認識を持って、ITサービスを利活用する立場で、経営や業務の改革を支援する人材とします。さらに、経営戦略サイクルと呼ばれる企業組織が持続的に成長するための枠組みと、イノベーション経営サイクルと呼ばれる経営サイクルの考え方を導入して、これらの両サイクルを回しながら、IT経営とイノベーション経営を実現できる“イノベイティブ人財”が必要であることを主張します。後半は、このような人材の育成に対するITCAの取り組みが紹介されていきます。

5.最後に
 講演の後は、イノベーティブ人材育成の評価の難しさやIT人材育成の問題に対する組織論や人間論からのアプローチの必要性など、登壇者とフロアとの活発な議論が展開されました。
 今後、同様の機会がありましたら、ぜひ足をお運びください。

 


私の提言
お客様第一を実践するのに大切なこと

(株)ジェイテクト 綿民 誠

 新入社員の頃、初めて「お客様第一」と聞いて最初に考えたことは「製造業である我々の商品を買っていただく納入先が一番強い立場にある」ということだろう、でした。品質部門に配属されたので、何を言われても直ちに否定してはいけないのだと浅はかにも思ったのです。
 皆さんもご存知の「常にお客様の立場に立ってものを考え、お客様のためになる仕事をする」ということを知った後も、理解して実践するには苦労しました。特に厳しい叱責を浴びせられ何度報告しても理解していただけないことが続いた時は、初めて聞いた時に感じたことが正しいのではと思ったものです。
 しかしそういう経験を続ける中で、良くなると期待しているからいろいろと細かなことを言われているのだと知りました。同時に納入先のためではなくその先のお客様のことを第一に考えておられることに気づきました。
 納入先と取り交わした技術規格を満足していても実際に完成品を使用していただくお客様に満足いただけないのであれば技術規格そのものに不備があると考え納入先と一緒にどう見直せばよいかを考えることが必要です。
 また設計者が意図した機能を正しくお客様が理解され使おうと思わないと優れた機能もお客様にとっては無意味なものとなります。
 DVDレコーダやスマートフォンの全ての機能を使いこなせているでしょうか?この考えは、製造業にとどまらず事務・販売・サービスの分野にも当てはまります。最近話題となっている電力自由化や携帯電話の料金体系は複雑で資料を見ただけで、使用者として何がよいのか判断するのに苦労されていないでしょうか?
 中部支部幹事長として支部行事である「研究発表会」、「講演会」、「シンポジウム」、「事業所見学会」の企画を確認する時、お客様に企画の良さを理解していただけるかと自問しアドバイスしています。お客様のためになる仕事をするには、お客様にその内容を正しく伝えることが必要となります。
 お客様第一を実践するのに大切なことは、お客様の立場に立ってものを考え、お客様に理解いただける提案をすることにより、お客様にとってその提案が役に立つことを理解していただくことであると確信しています。


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