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話題の書籍の著者や、旬なスピーカー、魅力的な産学のメンバーが情報発信・ディスカッションする「クオリティートーク」をご紹介します。
※( )内は開催日
 
多目的設計探査(2017/08/25)
発見力-トヨタで学んだ“発見”をGD3問題解決プロセスに展開-(2017/06/15)
自動運転社会実現への道(2017/04/17)
英日統計科学源流談義(2016/06/23)
リスクの話(2016/03/16)
TQM(総合的品質経営)の標準化(2015/06/24)
マーケット・イン思想再考~QFDの視点から~(2013/09/18)
競技の統計学 ~一対比較法の応用~(2013/07/22)
Quick DRによる未然防止~短期間で効果的に問題を発見・解決する手法~(2013/06/17)


■ 第104回「多目的設計探査」

スピーカー:大林 茂 氏 東北大学 教授
2017年8月25日(金)開催

 第104回クオリティトークは、20名の参加者を得て開催され、国産初のジェット旅客機、三菱リージョナルジェットの設計に貢献された大林先生にご講演いただきました。
 デカルトやパースの哲学から始まったご講演は、興味深いだけではなく、参加者の誰もが理解できるとてもわかりやすい内容でした。パースのアブダクションは、多くの設計案を用意し、その中から良い案を探査する、まさに設計の核心との話も「なるほど」と感じたのは私だけではないでしょう。
 ご発表タイトルの多目的設計探査について、大林先生は、単なる最適設計ではなく、アブダクションの仕掛けとしての設計空間の構造化と可視化と表現されていました。航空機の設計では、翼、エンジン、強度などの多数の目的関数が相互にトレードオフの関係になっています。そこからパレート最適解と言われる「他より劣っていない面」を探査しなければなりません。従来技術として数理計画法がありますが、計算量が膨大で非効率な問題があり、最近では遺伝的アルゴリズムを用いた進化的計算法が注目されているそうです。
 探査結果は、高次元空間になります。高次元空間を可視化するために、自己組織化マップを用いて2次元マップを生成します。設計図は形状を可視化するもので、自己組織化マップは機能を可視化できるとの話もわかりやすいご説明でした。寿命やコストなど様々な2次元マップが生成されます。そして、ラフ集合で情報を整理し、傾向を分析します。
 ご講演の最後に、多目的設計探査を三菱リージョナルジェットの設計に適用した事例を紹介いただきました。エンジンは、従来比で2割以上も燃費を低減しています。また、翼胴形態、ウイングレットなど様々な部分の設計に、多目的設計探査を適用されています。しかしながら、質疑応答の中でも話されていましたが、三菱リージョナルジェットは未だに設計変更を繰り返しています。最新の技術だけではなく、技術の継承も大切で、国産初のジェット旅客機の開発には色々と乗り越えなければならない苦難があるようです。

小野 眞(日立金属(株))

 


■ 第103回「発見力-トヨタで学んだ“発見”をGD3問題解決プロセスに展開-」

スピーカー:吉村 達彦 氏 ジーディーキューブコンサルティング 代表
2017年6月15日(木)開催

 2017年6月15日に、第103回のクオリティートークが開催されました。今回の講演の聴講者は21名で、「発見力(気付き)」がキーワードとなって展開していきました。
 まず本日のスピーカーである吉村さんの「信頼性」との出会いについて、恩師である横堀武夫先生とのエピソードと唐津一先生から受けた薫陶について語られました。また、オペル社の開発のトップから「トヨタの車は壊れない、それだけは認める」と言われたエピソードなどが披露され、吉村さんが壊れない車づくりに尽力され、自動車業界の信頼性を背負ってきた自負と、それでもなお信頼性問題が絶えない現実に対しての忸怩たる思いの一端を知ることができました。
 現在の管理(Control)から本題が始まります。我々は様々な手法を導入し、管理しようとしてきました。しかし実際には隙間ばかりであり、お客様の期待からの乖離である品質問題を抱えています。問題発見のため、品質改革の3ステップ(問題発見⇒問題解決⇒再発防止)へと話しが進み、その解としてGD3のコンセプトが語られました。問題は差(変更・変化)のあるところで起きるため、「リスクを明確にした設計⇒Good Design」と「問題が発見できる場を作る」ことが必要であると説かれました。
 そして話しはデザインレビューの本質へ迫っていきます。設計者自身は製品を良くしようと思って変更するが、そこに問題が隠れていると思わない。だからレビュアーと設計者が協力して、お客様のために問題を発見して製品に価値をつける必要があると説かれました。加えてもう一つリスクとして情報のインターフェースでの劣化(発信者と受取り側の理解の差)という興味深いお話をお聞かせくださいました。「品質はインターフェースで作り込む」という工程間で論議し潜在的な問題を発見するチャンスの有用性とトヨタ生産方式との関係など、トヨタの“発見”をGD3の問題解決プロセスへ展開することは、結局は「なぜ気づかなかったのかを究明することになる」ことをご説明いただきました。
 質疑応答では活発な論議がなされ、本日の講演の意義がより高められました。講演終了気後には、吉村さんの著作への即席サイン会となり、いつまでも交流の輪が解けない一夜となりました。

平澤 朗(トッパン・フォームズ(株))

 


■ 第102回「自動運転社会実現への道」

スピーカー:久村 春芳 氏 日産自動車(株) フェロー
2017年4月17日(月)開催

 2017年4月17日、23名の参加者を得て、第102回クオリティトークが開催されました。スピーカーは、日産自動車執行役員時代に総合研究所を担当された、日産自動車フェローの久村春芳氏でした。自動運転社会の第一人者でもあるスピーカーが話される「将来技術の展望」に興味を持つ学生を含めた聴講者が遠方からも出席されており、この分野の関心の高さが伺われました。
 最初に久村氏は、各国のGDPと国民の移動距離の分布を示し、「可処分所得が増えると人は移動したくなる」とデータで示されました。自動車を取り巻く課題として1.エネルギー、2.地球温暖化、3.渋滞、4.交通事故について、具体的なデータに基づいて紹介されました。それらを解決するために「ゼロエミッション」と「死亡事故ゼロ」を実現したい。そのために、クルマには「電動化」と「知能化」が必要であることを述べられました。
 電動化では、同社がいち早く電気自動車(EV)を製品化し、高い信頼性を保ちつつ販売を続けている。今後、ステークホルダーの輪を広げてEV社会を実現していくと紹介されました。
 知能化では、同社は本格自動運転技術への過程の技術である「プロパイロット」を2016年にミニバンに投入しています。本格自動運転には、さらなる技術革新が必要であり1.センシング技術、2.認識技術、3.判断・予測技術、4.操作(制御)技術がカギになることを示されました。これらの技術は、2007年に東京モーターショーで公開した「PIVO2」で予見しており、その先見性の確からしさを共有しました。202X年の完全自動運転へのマイルストーンを示され、同社の取り組みが着実に進んでいる姿を紹介されました。
 将来のモビリティについても触れられ、自動運転社会は、自動車業界だけではなく、モビリティサービス、インフラデータサービス、クラウド・IoTサービス、保険会社、行政との協業が必要であることを示されて締めくくられました。
 質疑応答では、自動車メーカーの目指す“ドライバーを支援する自動運転”とIT企業が目指す“ドライバーレスの自動運転”の違い、「自動車は技術の風呂敷になる」など自動車の将来を活発に議論されました。

石上 俊弥((株)ジェイテクト)

 


■ 第98回「英日統計科学源流談義-幕末・明治の先駆者に多大な影響を与えた「科学の文法」のはなし-」

スピーカー:椿 広計 氏 日本品質管理学会会長、統計センター 理事長
2016年6月23日(木)開催

 「英国 EU離脱へ!」というニュースが駆け巡り、今後、大きな影響が予想されそうですが、統計科学においても英国から多大な影響を受けてきました。
 さて、愛知県等からの出席者を含め24名の参加を得て、第98回クオリティトークが開催されました。30分程テーブルを囲み懇談した後、ほろ酔い気分で椿先生の談義が始まりました。
 冒頭に、先生が10年程前まで筑波大の夜間大学院(18時20分~21時迄の講義)での活動時に、「学生が約80%集まる迄の15分間に授業らしい話題を提供しようと “枕的な話”をつなぎ合わせ、統計学者の歴史・繋がりが、今回の夜噺である」という説明がありました。引き続き、K.Pearson(科学の文法、記述統計学の提唱者)を中心に幕末・明治の先駆者達(菊池大麓、夏目金之助等)やShewhart(1891~1967:統計的品質管理、管理図)等が、どのように影響しあったかを48枚のスライドを元に「約100年間、20人以上の登場人物」について説明されました。時間経過と共に、あたかも「その時代にいるかのような錯覚」を覚えながら、談義に引き込まれました。
 始めに、菊池大麓(1855~1917:孫は美濃部亮吉(元東京都知事))が登場し、次にK.Pearson(1857~1936)が登場します。彼らは、大麓が2度目の英国留学中(1870~1873)にUniversity College Schoolにおいて学友で、大麓は「ロンドン大学1位合格卒業」(即ち、在籍期間は0日)という紹介がありました。さらに、統計科学の語り部としての夏目金之助(漱石)(1867~1916)が登場します。彼も英国留学経験(1900~1902)があり、この時、『科学の文法』の中に「折角自分の考えた事がみんな書いてあった。忌々しきPearson!」。漱石は帰国後「科学とは、説明的Whyではなく、記述的Howである。実現までのプロセスが重要」と東大で講義をしています。さらに、「自己本位」思考が確立し「文学を科学にするぞ」という思いで文学論を展開していきます。
 質疑応答でも聴講者から、大隈重信が、南極観測隊員に「南国は熱いから体に気をつけろよ」と言ったエピソード紹介等があり、終始、和やかな雰囲気のもと談義の幕は閉じました。

平間 健((株)フジクラ)

 


■ 第97回「リスクの話」

スピーカー:野口 和彦 氏 横浜国立大学大学院 環境情報研究院 教授
2016年3月16日(水)開催

 2016年3月16日、18名の参加を得て、第97回クオリティトークが、開催されました。スピーカーは、ISO31000「リスクマネジメント」の日本代表で斯界第一人者である野口先生でしたが、サロン風な雰囲気の中、リスクに関する最新の話題をお聴きすることができました。大分県や愛知県の遠方からこのために出席された方もいて、関心の高さが伺われました。
 長年科学技術の世の中への役立ち方やその真の姿を研究されて来た中で、日本の学問のあり方があまりにも、問題解決型になりすぎているのではないか、未来指向のイシューへの取り組みが少ないのではということでリスクに着眼され、研究されてきています。例えば日本では事故が発生して、その発生原因の追求や是正処置、再発防止には積極的に取り組むが、「事故が起きていない」ことがリスクの視点で、本当に良くて安心であるかという問題提起です。何十年も事故や災害が発生していないことが本当に安全や安心につながるのか。突然発生してしまったことに対しては、想定外という表現が使われてしまう。
 リスクの定義にもアメリカ原子力委員会、MIT(マサチューセッツ工科大学)、ハインリッヒの産業災害算定式、ISO/IECガイド51など多種あり、使用する際の前提となっている考え方に注意を促されました。
 野口先生の「リスクは未来の指標である」「顧客満足度と消費者満足度とは異なる」という説明には、長年の研究と英哲な思考の深さが感じられました。随所にISOQMSの内容に触れながら話を進められましたが、問題解決型の従来のマネジメントシステムを超えて、イシュー・課題を設けて取り組む必要性について、首肯しながら拝聴することができました。まさに旬の話題に基づく、第一人者のトークに感激しました。お話は1時間で終了しその後質疑討論に入りましたが、時間の経つのをしばし忘れるほど集中し、終了しました。

上窪 均((有)KMI)

 


■ 第94回「TQM(総合的品質経営)の標準化」

スピーカー:中條 武志 氏 中央大学 教授 JSQC前会長
2015年6月24日(水)開催

 2015年6月24日(水)の夕方,20名が参加し,第94回クオリティトークが開催され,JSQCの前会長である中條武志先生により「TQM(総合的品質管理)の標準化」と題して講演いただきました。
 講演では,まず, TQMの標準化に向けた日本品質管理学会における取り組みが紹介されました。1999年にJSQC内に標準化委員会が設置され,検討が開始されました。それ以降,委員会や研究部会などの議論を経て,JSQC規格として,2011年から2015年に「品質管理用語」,「日常管理の指針」,「小集団改善活動の指針」が制定されたことが紹介されました。
 続いて,標準的なTQMの基本構造として,TQMの原則,活動要素,手法が紹介されました。TQMの原則は,目的,手段,組織の運営に整理され,それぞれの内容が紹介されました。TQMの活動要素では,品質保証,改善と革新,および維持向上と安定化,それぞれの活動要素に整理され,内容が詳細に説明されました。
 その中で特に,改善と革新のための活動要素について,方針管理は問題・課題を明確にする活動,小集団改善活動は問題・課題を解決する活動,品質管理教育は問題・課題解決力を高める活動として整理されていました。
 また,小集団改善活動は,QCサークルに加え,部門別プロジェクトチームや部門横断チームも含まれること,またその活性化には,職場にあったテーマを選ぶことや,継続型や時限型,職場型や横断型の複数タイプのチームを組み合わせることなどが有効であると紹介されました。
 次に,TQM とMS認証や品質賞との関係が説明され,ISO9000から日本品質奨励賞,デミング賞,デミング大賞へのステージアップが提言され,TQMの標準化は,最初のステージへの導入や,さらにステージアップする際に活用できるとの紹介がありました。
 最後に,従来にも増した品質保証の徹底や組織・プロセスの複雑化といった日本企業が直面している課題に対して,新たなTQMの方法論の研究・開発,得られたTQMの方法論の体系化と標準化,普及により,さらなるTQMの普及・発展が求められることが示されて講演が締めくくられました。
 質疑応答では,品質賞のステージアップの方法や,デミング賞の受賞報告会の内容をよりオープンしてはどうかなどの意見が出て,活発な議論がなされました。

髙橋 勝彦(広島大学)

 


■ 第85回「マーケット・イン思想再考~QFDの視点から~」

スピーカー:永井一志 玉川大学経営学部
2013年9月18日(水)開催

 「顧客志向という言葉は、耳当たりがよい。この言葉を大義名分として持ち出せば、すべてが話が通ってしまうかのような幻想を抱かせる」これは川上智子教授の著書の一節ですが、確かにビジネスの場でそのようなシーンに何度か遭遇したことがある人もいらっしゃるかもしれません。
 今回のクオリティートークは「マーケット・イン思想再考‐QFDの視点から‐」というテーマで玉川大学の永井一志先生にお話ししていただきました。

マーケット・イン思想再考~QFDの視点から~

 最近、世の中で大きな「うねり」が起きていることを感じており、例えばビックデータの潮流など今までは無かった新しい何かが始まっていることに触れました。そうした変化の時代においても、プロダクトアウトは論外であり、マーケットインが重要であることに変わりないでしょう。しかし、過度にカスタマーファーストの姿勢を重視し、製品に顧客要望をすべて取り入れることで、はたして顧客満足は選られるのだろうかと問題提起されました。

 大学で学生に対して、どんな携帯電話が魅力的であるかアンケートをしたところ、学生がこたえられず黙り込んでしまったそうです。そこで質問を変えて、「どんなケータイがほしい」と聞いたところ、「軽い」「小さい」「多機能」など、既に市場流通している携帯電話そのものだったそうです。ならば、今のケータイに満足かと問いかけたところ、学生は「微妙」と答えたそうです。
 このことはモノづくりにとって大きな意味をもちます。つまり、顧客ニーズを満たしても、顧客満足が得られないことを示しています。顧客自身が自分たちのニーズを明確にできておらず、言語化できないのかもしれません。お客様がすべてを教えてくれるわけではありません。

 他方で、製品開発側も思い込みや思考停止に陥っていないでしょうか。従来製品のトラブルは印象に残りやすいので製品開発に活用されますが、それだけで魅力的な製品を開発するのは困難でしょう。トラブルやクレーム情報にさらされ続けて、ネガティブな内向き思考に染まっているかもしれません。エンジニアも外に出て実際のお客様を見に行ければ良いのかもしれません。

 最近の自動車のヘッドライトで驚いたことがあるとのお話では、対向車がすれ違う際に眩しく感じないように照度やライトの向きが、あたかも人間の目が動くように自動調整されることを見て感動したそうです。以前、自分がヘッドライトの開発者になったつもりで、「魅力的な機能」を紙に列挙したことがあったそうですが、どれも当たり前すぎて、既に普及しているものばかりでした。ヘッドライトの自動調整技術は確かに目新しいですが、実は既存の要素技術を複数組み合わせて実現した技術ベースの開発なのです。
 保有技術を一度棚卸する必要があるのではないでしょうか。

 製品の開発で新たな価値を提供する方法として、次の4つのパターンを示されました。
(1) 現状では見えない用途を見出す。 例:付箋の糊
(2) 現状の性能を大幅に向上する。 例:胃カメラを小型化し鼻から挿入可能にする
(3) 現在の用途では限界が見えるが、別の用途を見出す。 例:電子レンジ
(4) 複数の製品を組み合わせる。 例:プロジェクター付きビデオカメラ
技術の記述方法や一覧化、マッピング、モジュール化など、いくつか方法があり、技術ベースの開発に対するQFDのサポートを考える必要があります。
 今回のトークは先取りしたチャレンジングな内容で、トーク後の質疑も活発でした。

 

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■ 第84回「競技の統計学 ~一対比較法の応用~」

スピーカー:鈴木 知道 氏 東京理科大学
2013年7月22日(月)開催


 トーナメントの起源は中世の騎士が行った「馬上槍試合」だといわれています。騎士は互いの技量の優劣を競い合い、観衆はその姿に胸を躍らせたことでしょう。現代でも高校野球やサッカーのワールドカップ、将棋やチェスなど、さまざまな競技でトーナメントは受け継がれており、人々の生活に彩りを添えています。今回のクオリティートークではご自身もチェスの競技経験をお持ちという鈴木知道先生にお話しいただきました。

第84回「競技の統計学 ~一対比較法の応用~」

 冒頭では、「強さ」を測るというテーマでお話されました。100メートル走であれば、単純にタイムを測れば良いため、直接的に強さを測定できますが、サッカーや野球などゲーム形式の競技は、試合の結果を利用しなければ強さを測定することができません。なおかつ必ず相対的な結果であるという特徴があります。
 競技の勝敗は言うまでもなく、基本的には強い方が勝利しますが、毎回必ず強い方が勝つわけではありません。強い方が強さを発揮できず、弱い方が強さを発揮するような場合に「番狂わせ」が起こります。

 強さを発揮できるかというパフォーマンス、すなわち強さの分布は正規分布に従うと仮定します。このことに着目し、強さを数値化する試みを始めたのが、アルパド・イロという、アメリカの物理学者です。当時はチェスを対象としており、この数値化手法はイロレーティングと呼ばれています。
 現代では、サッカーの国別ランキングでも応用されています(World Football Elo Ratingsといい、FIFAランクとは別に存在します)。
 トークでは実際にインターネットでWorld Football Elo Ratingsを見てみました。たとえばブラジルはイタリアよりもレートが200ポイント高いのですが、これはブラジルが75%の確率でイタリアに勝つことを意味しています(ちなみに、日本のレートも調べてみたところ、ブラジルよりも、400ポイントも低く、勝つ可能性が極めて低いことが分かってしまい、参加者の皆さんは若干残念そうでした)。
 イロレーティングの紹介の前に、シェッフェ、サーストン、ブラッドリー・テリーのそれぞれの一対比較法の解説がありました。

 最後にトーナメントに関する話になりました。トーナメントにはいくつかの方式があり、目的や試合数などによって、最適のトーナメント方式を大会運営側が決定しなければなりません。
 しかし、実はこれはとても難しいことで、例えば2006年のワールドベースボールクラシックのように、韓国が日本よりも多く勝利しているにもかかわらす優勝できないなど、首をひねるような結果になってしまうことがあります。大会運営とトーナメント方式の最適な適用は大会の品質に大きく関係していると言えます。トーナメント方式自体も、より良い方式が必要であり研究が進められています。

 今回のトークは競技の統計学がテーマでしたが、一対比較法は製品開発の際の官能評価でも実際に使われている手法であり、品質管理の分野にも通じていることを理解できた一夜になりました。

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■ 第83回「Quick DRによる未然防止~短期間で効果的に問題を発見・解決する手法~」

スピーカー:大島 恵 氏(ボッシュ(株)) 奈良 敢也 氏(日産自動車(株))
2013年6月17日(月)開催


 「短期間で効果的に問題を発見し解決したい!」そんな時、効率的にデザインレビュー(以下DR)をすることは至難の業です。
 日産自動車では設計変更の新規性に応じて2種類のDRを使い分けることにより効果的かつ効率的に品質不具合の未然防止を図ってきました。

 昨年、共著で出版された『日産自動車における未然防止手法Quick DR 』では、FMEAを軸とした「Full Process DR」と、DRBFMを軸とした「Quick DR」を使い分けるDRのプロセスが紹介されています。今回のクオリティートークでは、「Quick DR」を中心にお話しいただきました。

 トーク前半は大島さんに「なぜQuick DRが必要か」「効率的で効果的な未然防止」というテーマでお話を伺いました。
 「従来の知見で新たに設計する」場合でも、多くの品質問題が発生していると指摘し、それらの予防に「Quick DR」は役立ち、変更点/変化点に着目することが「Quick DR」のキーポイントです。変更点は「意図して部品の設計や製造を変えた点」変化点は「部品を使用する環境が変わった点」を意味します。
 「Quick DR」は「設計」「実験」「生産」「サプライヤ」の各レビューアが参加することで効果的に行うことができ、未然防止策を設計、評価、工程へ落とし込むことも鍵になります。

 トーク後半では、「Quick DR」のプロセスとツール、適用事例をメインに奈良さんにお話を伺いました。
 サンプルの事例を用い、時系列でプロセスとツールを紹介いただきました。プロセスのステップごとにキーポイントがあり、その背景にある考え方や意図も解説していただきました。
 事例紹介は「あるユニットの搭載位置を1箇所変更する」ケースでしたが、多数の変更点/変化点が発生することに参加者も驚かされました。「階層別変更点一覧表」を活用し、変更が変更を生み出していることに気づくための「Zアプローチ」を用いて、効率的に「Quick DR」を行って未然防止できたそうです。

 最後の質疑応答も、参加者自身の現場での悩みなどを中心に積極的なやりとりがあり、多角的な質問や回答から多くの気づきをいただきました。
 終了後の即席サイン会では大島さん・奈良さんを囲み、参加者同士の交流の輪も広がりました。

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