一般社団法人 日本品質管理学会
第49年度 自 2019年 10月 1日
至 2020年  9月30日
事業報告

1.概 況(会長:棟近 雅彦)

 本学会では,第45年度から“QSHIN2020”と名付けられた中長期計画に従って改革を進行中です.QSHIN2020では,以下が目標になっています.

 (1)救真2020:Japanese Association for Qualityの創設
 (2)究深2020:先進型マネジメント理論・技術の吸収と研究開発推進
 (3)求新2020:QMの必要な分野への展開
 (4)急進2020:本部・支部活動の重点化

 第49年度においては,これらの目標を達成すべく,第48年度の残された課題を中心に,50周年記念事業に関連する課題を加えて4つの最重点活動を定め,活動計画を立案しておりました.しかし,新型コロナの感染拡大により,計画変更を余儀なくされました.下表にその総括を示します.

最重点活動 実施事項 今後の課題
1.JSQCの強みの育成
・基盤戦略としての品質経営
 品質不祥事対応WGの提言の実行.
・48年度に公表した各界および本会への提言を実行すべく準備を進めたが中断. ・品質不祥事対応WGの提言の実行.
・革新戦略としての品質経営
 新部会(生産革新部会,サービスエクセレンス部会)のさらなる活性化を図る.また,既存部会(医療の質・安全,管理技術,ソフトウェア)の改革も進め,普遍的なツール,方法論の開発・普及を行う.
・生産革新部会,サービスエクセレンス部会合同による知識共有会の継続.詳細は,品質誌の部会活動報告および特集を参照. ・既存部会は,各部会の活動報告を参照. ・部会活動をさらに活性化し,普遍的なツール,方法論の開発・普及を行う.
・標準化推進
 JSQC規格の普及,新規格開発を進める.また,サービスの標準化推進をサービスのQ研究会を中心に進める.
・新英訳規格の発行,学会規格のJIS規格化申請,JSQC規格の見直し等,規格の開発・改訂を積極的に行った.規格講習会は,一部実施できたが大半は延期.
・JSA規格「エクセレントサービスのための規格開発の指針」を発刊.ISO/TC312(サービスエクセレンス)への参画.
・規格の継続的開発,普及・啓発.JAQとの連携によるISO化,規格講習会のオンライン化.
・エクセレントサービスに関する研究,規格開発.
2.クオリティに関する横串機能
・JAQ設立に向けた準備
 JAQ連携協議会を継続的に開催し,連携ネットワークの拡大を図る.また,品質月間でのJAQイベントを企画する.JAQホームページを立ち上げる.
・JAQ連携協議会を定期開催.クオリティフォーラム,品質月間特別講演でのJAQ協賛イベントを開催.ホームページ開設. ・JAQミッションの明確化とJAQ本体の立ち上げ.
3.JSQCのガバナンス強化
・公益法人化
 公益法人化に向けての課題を引き続き検討する.寄付金スキームを確立する.
・ガバナンスの強化,会計業務の効率化等を継続,公益化のメリットについて再検討. ・公益法人化移行の再検討,ガバナンス強化,安定した財務体制.
・組織体制の整備
 大幅な組織改革の評価を行い,必要な見直しを行う.事務局体制の整備とともに,システム化による業務の効率化を図る.
・事務局体制の移行.新会員システムの立ち上げ. ・事務局体制の確立.組織体制の見直し.
・事業の推進
 会員のニーズを先取りした事業企画を推進する.特に49年度は,東日本・西日本支部の活性化を図る.
・新型コロナにより2020年9月までの事業を延期.その後,オンラインを活用し,企画の再検討と実施. ・事業のさらなる活性化.東日本・西日本支部の活性化.コロナ禍の中での事業形態の検討.
・本会ジャーナルの見直し
 学会誌/論文誌のあり方検討WGでの検討を進め,具体的な改革案を創案する.また,ロードマップに従って,必要な方策を順次進めていく.
・ロードマップを作成し,実行段階に入ったところで中断. ・引き続きWGで検討し,改革案を創案・実施.
4.50周年に向けて
・50周年記念事業
 WGを立ち上げて,記念事業を推進する.
・50周年記念事業企画の完成. ・50周年記念事業の推進.
・学会名称変更の検討
 アンケート結果の分析を進めるとともに,変更するかどうかを含め,アンケート結果を参考に理事会で議論する.
・アンケート結果の分析.理事会で議論.今回は,変更しない. ・継続的に学会改革と絡めて議論していく.
・電子ジャーナル化
 品質誌,要旨集等の電子ジャーナル化の具体案をまとめる.
・編集システムの改革案の検討を開始. ・電子ジャーナル化の推進.

2.総合企画委員会(委員長:棟近 雅彦)

 QSHIN2020が完成年度を迎えることから,総合企画委員会を開催し,これまでの総括を行うとともに,次期中長期計画の検討を開始しました.次年度中に,方向性を決定する予定です.
 JAQ連携協議会については,3〜7月は中断しましたが,昨年度に引き続き2か月に1回の頻度で開催し,組織,行事,国際標準化WGを組織して活動を継続しました.ホームページを立ち上げ,品質へのポータルサイトとしての運用を開始しました.
 また,「学会誌/論文誌あり方検討WG」,「品質不祥事対応WG」で計画していた活動は,中断せざるを得ませんでしたので,次年度に引き継ぎます.さらに,50周年事業については,実行WGをオンラインで開催し,記念事業企画案を完成させました.

3.庶務委員会(委員長:金子 雅明)

 第49年度は,50期に迎える50周年記念事業について企画内容の具体化,準備を行いました.学会名称変更については,会員からの回答を集計・分析を行い,報告書にまとめました.会員サービスの充実においては,JSQCフェロー認定候補者をピックアップし,6名を認定しました.学会規則の見直しでは,公益化に向けた学会運営の透明性確保,及び実情との整合などの観点から,内規などの見直しを進めました.

【会員サービス】(委員長:永井 義満)
 会員数(2020年7月現在)(括弧内2019年9月比)は,現在,名誉会員22名(1名減),正会員1782名(42名減),職域会員53名(3名増),準会員82名(2名減),賛助会員151社194口(9社増10口増),賛助職域会員9名(2名増),公共会員17口(1口減)となっています.
 前年度に引き続き「JSQC認定上級品質技術者」および「JSQC認定品質技術者」に関して認定証を発行し,同制度の認知度を高める取り組みを行いました.また,QC検定1級および2級の合格者に対しては,学会年会費が割引となるキャンペーンを行いました.

第48年度 第49年度
名誉会員: 23名 名誉会員: 22名
正 会 員: 1,824名 正 会 員: 1,782名
準 会 員: 84名 準 会 員: 82名
職域会員: 50名 職域会員: 53名
賛助会員: 142社184口 賛助会員: 151社194口
賛助職域会員: 7名 賛助職域会員: 9名
公共会員: 18口 公共会員: 17口

4.活動委員会(事業を含む)(委員長:棟近 雅彦)

【研究開発】(委員長:鈴木 秀男)
 研究開発委員会では,以下の活動を行いました.
@例年通り,各研究会の活動予算を審議し,各研究会に配分しました.
A本年度も,研究会の研究成果や活動内容を学会誌へ掲載する活動を実施しました.品質誌に「部会研究活動報告」,「研究活動報告」という欄を設け,継続的に発表しました.一部の研究会は,連載の形で研究活動報告しており,学会誌における報告が定着してきました.

【学会誌編集】(委員長:伊藤 誠)
 第49年度も例年どおり,年4冊の学会誌『品質』を発刊しました.
 事業委員会,研究開発委員会と密接に連携し,研究会報告や部会報告を中心に掲載してきました.この編集方針の変更は,新中期計画に記載されている学会誌再編成の指針に従うものです.ただし,学会誌を学会員にとって魅力的なものにするために,クオリティトークの講演内容を収録したり,若手研究者を中心とした研究紹介にも注力しました.さらに,支部の活動についても,できるだけ紹介していくように努めました.
 新型コロナウイルス感染拡大の影響による事業の取りやめに伴い,講演概要などが掲載できないケースがありましたが,全体としてはおおむね計画通りに刊行できたものと考えています.

【事業・広報】(委員長:斉藤 忠)
 第49年度は,コロナ感染防止対策の観点から,3月から9月までの期間,行事の延期の方針が発表され,大幅な予定変更を行いました.年次大会1回,研究発表会はコロナの感染予防対応のため研究結果を要旨集にまとめて発刊,講演会として「ばらつきからみた品質管理の体系」を1回実施,事業見学会をライオン小田原工場,コマツ茨城工場の2回実施し,クオリティトークを「品質保証体制強化のためのIoT活用の実践」と「リアル事例で学ぶ失敗しない商品企画−P7,Neo P7の実践法−」,「目からウロコの多変量解析−データ分析の極意に迫る7つの処方箋−」の3回実施しました.
 また,このコロナ禍,会場での開催は無理な中,会員の皆さまから学習の機会の提供のご要望が強くあり,学会では初めてオンラインでの無料Webトークを5月に開催し,そのノウハウを貯めて上記の7月のクオリティトークの1回はオンライン開催を実現しました.規格の講習会は,新たな規格「新製品・新サービス開発管理の指針」の講習会を1回開催しました.

表.第49年度事業計画と実績

  年次大会 研究発表会 講演会 シンポジウム JSQC規格
講習会
事業所
見学会
Qトーク
49年度計画 1 1 0 1 2 3※

※要旨集大成まで

※これとは別に無料Webトークを2回開催しました


【JSQC選書】(委員長:飯塚 悦功)
 品質に関わる概念・方法論・手法を社会が理解し適切に適用できるように支援するための一方法として,品質マネジメントに関わる,基本的考え方,マネジメントシステム,手法・技法,推進・運用,さらには品質に関わる時事の背景・意味の解説をする一連の書籍の出版化検討(企画・編集)をJSQC選書刊行特別委員会で進めました.
 同委員会を1回開催し,発行書籍候補の列挙,短期(1年程度)的な発行計画(主題,著者,発行時期など)を審議し決定しました.決定された主題にかかる構想の審議や原稿案の査読を行い,下記の書籍の発行に向けた準備を進めました(出版社:日本規格協会).

 ・『生産管理』(高橋勝彦)2020年10月
 ・『GCにおけるグローバル品質経営(仮)』(中尾眞)2020年11月予定

4-1.東日本支部(支部長:永田 靖)

 関東エリアのコミュニティ強化を目指して,活動委員会(事業・広報)が中心となりクオリティトーク,事業所見学会を企画しました.ただ,2020年においてはコロナ禍の影響を考慮して,一部はオンラインで実施しましたが,中止せざるを得ない場合がありました.
 また,昨年度に引き続き東北エリアのコミュニティ強化策として,事業所見学会,JSQC規格講習会を企画しました.こちらもコロナ禍の影響を受けました.

4-2.中部支部(支部長:仁科 健)
(1) 研究会活動
1)東海地区 若手研究会 [主査:南山大学 松田教授 ](計画6回/実績5回)
*産業界から実務上の問題点(困り事,関心事など),SQCに関連した話題,大学院や学部の学生の研究などを持ち寄り議論しました.第3回はコロナ禍により中止しましたが,第4回以降はZOOMで開催しました.
2)北陸地区 若手研究会 [主査:金沢工業大学 中野准教授](計画1回/実績0回)
*グローバル競争を見据えた産学連携による「SHINKA」の発信を目指しています.
*研究発表会: 2020年3月1日(日)13:00〜17:00(会場:金沢勤労者プラザ 406研修室)を企画しましたが,コロナ禍により中止しました.
3)中部医療の質管理研究会[会長:岩砂病院 岩砂理事長/学側代表:中部学院大学 國澤教授](計画5回/実績1回)
*活動テーマ「医療の質向上に関する活動の推進」
*シンポジウム:2019年12月8日(日)13:00〜16:00に第13回シンポジウムを開催しました.74名出席.
*定例会(研究会): 全て中止しました.(奇数月開催)
4)中部支部産学連携研究会[主査:名古屋工業大学 川村准教授](計画6回/実績3回・うち第3回はTeamsで開催)
*産学から持ち寄ったテーマを基に5つのテーマを登録し,主担当を決め,学と産が双方向に情報発信を行うこととしました.
*第139回講演会(東日本)2019年12月5日(木)13:25〜17:00で当研究会の活動報告と2件の講演を行いました.
★以下の(2)から(6)の各行事は,それぞれ記載した内容で企画したもののコロナ禍による活動自粛のため,全て中止としました.
(2) 研究発表会(第123回)
*日 程 :9月1日(火)13:00〜18:25(場所:名古屋工業大学)
*今回は講演会との併催を予定
(3) シンポジウム(第170回)
*日 程 :6月30日(火)13:15-16:45 (場所:名古屋工業大学 4号館ホール)
*テーマ:価値デザイン社会を考える
*主な内容:基調講演1件,事例講演3件,パネル討論会
(4) 講演会(第140回)
*日 程 :9月1日(火)17:20〜18:20(場所:名古屋工業大学 4号館ホール)
※第123回研究発表会終了後に開催
*講演者:永田 靖 氏 [早稲田大学 教授]
*講演内容:デミング賞本賞受賞講演の第6章をベースに1h程度
(5) 事業所見学会
*第1回(第424回):カゴメ株式会社上野工場(愛知県東海市)[日程:2月25日]
 ・テーマ『食を通じお客様の健康に貢献する健康経営の実践』
*第2回(第427回):株式会社アグリッド(三重県いなべ市)[日程:未定]
 ・テーマ『農業の工業化 浅井農園とデンソーによる農業の工業化技術の実践』
(6) 幹事研修会 
*第1回 5月27日(水)13時〜:勉強会(場所:日本規格協会名古屋支部 セミナーホール)
 ・テーマ『最適化問題へのアプローチ −決定性モデルと確率モデル−』 
 ・講 師: 中出 康一 氏[名古屋工業大学 教授]
*第2回 6月26日(金)〜27日(土) :北陸地区見学会
 ・見学先:三協立山
(7) 役員会
*第1回 令和元年12月19日 日本規格協会 名古屋支部 セミナーホール
*第2回 令和 2年 9月11日 日本規格協会 名古屋支部 セミナーホール及びZoom会議を併用  

4-3.関西支部(支部長:鱠谷 佳和)
(1) 事業所見学会
第421回 12月 5日(木):オリエンタル酵母工業梶@びわ工場[参加者27名]
 「食品製造における安全・安心,品質保証の体制,取組み」
  従業員への階層別教育だけでなく,自社で実施しておられるISOシリーズの内部監査のための監査員養成研修,
 組織上独立した品質保証部門による生産ラインの客観的な監査評価などから,生産品の安全性,品質を確保する仕
 組みや取り組みについてご紹介いただきました.
第426回 航空自衛隊 饗庭野分屯基地
 「航空自衛隊における業務改善活動と人材育成の取組み」
  航空自衛隊饗庭野分屯基地としての業務改善活動,人材育成についてご紹介いただく予定でした.
 ※新型コロナウイルスの影響により,次年度へ延期.  
(2) 講演会
第141回
 ※新型コロナウイルスの影響により中止.
(3) シンポジウム
第168回
 ※新型コロナウイルスの影響により中止.
(4) 研究発表会
第124回
 ※新型コロナウイルスの影響により中止.
(5) 研究活動報告
1) 実用的統計手法研究会
「新たなSQCの開発・実践を行うこと」「誤用を防ぐために既存SQCの再検討を行うこと」「統計的方法論を実用普及する際のツール(教育教材等)開発・提案を行うこと」を行いました.
2) ダイナミックロバストマネジメント研究会
 Society5.0に対応した新価値創出と,これまで研究を行ってきた「科学的先手管理 七つ道具(SE7)」と2015年改訂されたISO MS の品質,環境規格の特長,意図とを俯瞰的に融合して組織の文化へのマッチング,コミュニケーションを明確にし,従来,企業経営に有効なマネジメントシステムとして実地で検証されてきた日本的なTQMと高度な先進技術(IoTなど)との相互関係,ヒューマンエラー,モノづくりのレベルアップ策等に関して,品質管理学会が培ってきた数々のQC技術をベースにし,グローバル化時代におけるダイナミックな問題解決アプローチを体系化している.
(6) QCサロン
第123回 10月15日(火)青木 雄一 氏(エスペック梶j[参加者28名]
 「輸送環境ストレスに対する信頼性管理とIoT導入」
第124回 2月27日(木)天坂 格郎 氏(青山学院大学)
 「日本発“ものづくり新論”:JITを超えて」
 ※新型コロナウイルスの影響により延期
第125回 10月13日(火)今野 勤 氏(神戸学院大学)(予定)
 「TQMとビジネスモデル」
(7) 合同役員会
2019年10月15日(火),12月23日(月),2020年3月11日(水), 4月28日(火),6月23日(火),8月28日(金),10月13日(火)

4-4.西日本支部(支部長:長坂 康史)

 西日本支部の活動として,事業委員会と連携し,事業所見学会及びJSQC規格講習会をそれぞれ1回,実施しました.
(1) 第419回事業所見学会
日  時: 2019年12月19日(木)13:00〜17:00
見 学 先: TOTO株式会社 小倉第一工場(福岡県北九州市)
テ ー マ: 商品の企画段階からお客様のもとへお届けするまで,そしてお届けした後も
−創立以来の想いを胸に,絶え間ない革新と挑戦で新たな生活文化を創造−
参加者数: 18名
(2) JSQC規格「日常管理の指針」講習会
日  時: 2019年12月20日(金)13:15〜16:50
会  場: リファレンス駅東ビル 2階会議室(福岡県福岡市)
内  容: JSQC規格「日常管理の指針」講習会
参加者数: 12名

4-5.生産革新部会(部会長:浅羽 登志也48名:サービスエクセレンス部会と合同開催)

 社会大変革の原動力となるIoE(Internet of Everything),AIなどの進展は,生産革新,エクセレントサービスの共通課題であり,「コトづくり」として包括的にとらえて調査研究を進めるべく,生産革新部会/サービスエクセレンス部会は,前年度に引き続き合同で取り組みを進めました.第49年度は,社会大変革について「学ぶ」知識共有会をベースとして,革新の源泉となる新技術,さらには革新を牽引する新たなビジネスモデルの社会実装事例をもとに,自組織への「活用を考える」ステージへステップアップし,「知識化」「標準化」を志向しました.
 知識共有会で取り上げたテーマは以下の通りです.

  @ 周回遅れのデジタルトランスフォーメーション in Japan
  A 問題は会議室で起こっているんじゃない 生産現場で起きているんだ!!
  B エクセレントサービスの国際標準化に向けて〜エクセレントサービスの設計に重視すべき4つのポイント
  C データ・ドリブン・エコノミー 〜ニューコロナ時代のデジタル経営〜 
 部会の活動状況は,部会活動報告として学会誌に掲載するとともに,50巻4号においてミニ特集を組みました.

4-5-1.信頼性・安全性計画研究会(主査:岡部 康平 15名)

 第四期の5年目であり,世間を騒がした製造業の不正問題について,委員の独自調査結果に基づき,研究会で検討した成果を,再発防止のための点検表(チェックリスト)として取りまとめました.それらを会誌で連載形式により発表し,その活用を提言しました.また,第三期より注目してきた次期社会インフラ全般が備えるべき,品質およびその管理の根本的課題を掘り下げ,未然防止への展開を検討しました.
(1) 信頼性・安全性作りこみ技術
 昨年度から引き続き,製品安全における未然防止の実効性向上を目的に,ネットワークを活用して製品等の状態を常時監視することで,信頼性・安全性を管理するIT技術等の動向を調査しました.自動車のネットワーク利用を認める車検制度の改正に着目し,自動安全運転に関連する信頼性・安全性の管理技術を把握するとともに,その運用上の課題把握にも取り組みました.自動車版ブラックボックス(EDR)に代表される状態監視装置の品質管理や,個人認証などに代表される機械学習技術の第三者的評価制度などを主に検討しました.今後も,製品が市場に普及した後の,安全性を維持・管理する手法・技術について調査・検討を進めます.
(2) 安全・安心を達成するための社会インフラ構築
 自動車の自動運転技術やドローンの運送システムにおける安全管理について,最新の研究動向などを専門家に情報提供して頂くことで,それら管理の特徴や現状を把握し,今後取り組むべき品質管理の課題を整理しました.自動車の安全運転支援システムやドローン運送システムの全体設計や責任管理などのリスク管理方策を想定し,社会的・公共的な役割を担う必要のある製品類の品質管理の在り方を議論しました.この社会インフラに関するテーマは,信頼性・安全性を含む様々な品質指標での議論展開が必要であるため,このテーマを専門とする新しい研究会の設立に向けて活動することとしました.
 品質管理を重視する組織文化の樹立と継承については,製造業者の不正問題に対して 不正防止・改善を自発的に促すための本研究会提言案を発表しました.コンプライアンスの定義や解釈を議論するとともに,内部通報制度や品質管理体制,第三者による監視の枠組みなどを,企業の品質管理担当者や経営者らが,自己採点で評価できるように,チェックリスク形式にまとめました.再発防止の観点でまとめたチェクリストだけでなく,未然防止の観点からも検討した包括的・全体論的なチェックリストも提言しました.また,これらの提言案の適用として,新規社会インフラとして整備が進んでいるドローン配送や自動車自動運転等の成長分野でも活用されるよう展開を図りました.
(3) 研究成果のとりまとめと情報発信
 第四期のこれまでの成果を総括しつつ,製造業を中心とする品質不正について,研究提言案を会誌の連載で合計7種類発表しました.再発防止の観点からこれまでに個別に提言している品質不正点検表(チェックリスト)を,未然防止の観点で総括しました.品質を第一とする倫理法令遵守の組織管理や教育などの制度の在り方,さらに,ISO9000シリーズの活用・応用についても検討を深めて提言しました.そして,提言案に関する研究会の全体討論と質疑の内容も連載で報告しました.不正提言に関する活動を総括した総集編を報告して第4期を終えます.

4-5-2.テクノメトリックス研究会(主査:青木 敏 10名)

 テクノメトリックス研究会では,「統計的手法を中核とした品質管理手法の開発・普及」のために,手法,考え方,事例などについて幅広い視点から研究してきました.研究会はおおむね3ヶ月に1度の開催で,メンバーが上記の手法,考え方,事例などについて紹介し,メンバー間での議論により研究成果を練り上げていきました.議論したテーマは,マンテルヘンツェル法における検定手法,工程管理における管理特性間の相関を考慮した手法,直交配列の代数的構成,コピュラの数理的考察,計算代数手法,魅力的・当り前品質の構造,など多岐にわたっています.また,JSQC研究発表会や品質誌をはじめとするさまざまな学術雑誌をとおして,研究成果を報告しました.

4-5-3.商品開発プロセス研究会(主査:椿 広計 31名)

 (一社)品質工学会と共同で運営する計画研究会「新商品開発プロセス研究会」2年度目の活動として,2019年11月のJSQC年次大会で,WG1顧客価値創造の上流工程プロセスの開発,WG2創造性と効率性を両立した技術開発プロセスの研究,WG3損失関数の新事業プロセス評価への適用研究の活動を報告しました.2020年1月以降,WG1は,今までにない新規の商品企画に関わる活動を効果的効率良く行うためのプロセスを構築するサブグループ1と,イノベーションが起きる「プロセスの出発点のインプット」を解明するサブグループ2とに分かれて活動することとなりました.その後コロナ感染リスク拡大で,全てのWG, サブグループが月1〜2回の議論をネット上で行い,事例の検討,新商品開発における方針管理やQFDの役割などについてゲストスピーカーなどを招待して議論しています.逆に全体会合は開催できていません.また,6月に予定されていた品質工学会年次大会が中止になり,予定されていた企画セッションは中止となりました.2020年11月のJSQC年次大会でのセッションを企画中です.

4-6.サービスエクセレンス部会(部会長:水流 聡子 48名:生産革新部会と合同開催)

 社会大変革の原動力となるIoE(Internet of Everything),AIなどの進展は,生産革新,エクセレントサービスの共通課題であり,「コトづくり」として包括的にとらえて調査研究を進めるべく,生産革新部会/サービスエクセレンス部会は,前年度に引き続き合同で取り組みを進めました.第49年度は,社会大変革について「学ぶ」知識共有会をベースとして,革新の源泉となる新技術,さらには革新を牽引する新たなビジネスモデルの社会実装事例をもとに,自組織への「活用を考える」ステージへステップアップし,「知識化」「標準化」を志向しました.
 知識共有会で取り上げたテーマは以下の通りです.

  @ 周回遅れのデジタルトランスフォーメーション in Japan
  A 問題は会議室で起こっているんじゃない 生産現場で起きているんだ!!
  B エクセレントサービスの国際標準化に向けて〜エクセレントサービスの設計に重視すべき4つのポイント
  C データ・ドリブン・エコノミー 〜ニューコロナ時代のデジタル経営〜 
  部会の活動状況は,部会活動報告として学会誌に掲載するとともに,50巻4号においてミニ特集を組みました.

4-6-1.サービスのQ計画研究会(主査:安井 清一 17名)

 本計画研究会設立当初の目標であった「サービス標準開発のための原則・用語」の開発は,昨年度までに,日本規格協会が開発する民間規格「JSA-S 1002:2019 エクセレントサービスのための規格開発の指針「Guide for the development of service standards aiming excellent service」として実現されました.今年度は,サービスの質に関する新たな展開を模索するため,サービスエクセレンス部会が主催する知識共有会にて情報収集を主な活動としました.
 本研究会のメンバーは,ISO/TC312(Service Excellence)/WG2で議論されている「エクセレントサービスの設計」の開発おいて,主体的に寄与しました.また,英国規格協会(BSI)が発行したBS 8477:2014 Code of practice for customer serviceの一致規格の開発に携わり,それは「JSA-S 8477:2020 顧客サービスの実施規範」として2020年7月31日に発行されました.

4-7.医療の質・安全部会(部会長:棟近 雅彦 126名)

 今年度の研究活動は,QMS-H研究会との共同研究,医療の質マネジメントシステム監査研究会(略称:医療QMS監査研究会)および医療経営の総合的「質」研究会の3研究会で,医療の質マネジメントの方法論に関する研究を進める予定でおりましたが,新型コロナの影響で,計画変更を余儀なくされました.
(1) QMS-H研究会との共同研究
 例年開催している最終成果報告シンポジウムを,2020年3月7日に早稲田大学で開催予定していましたが,中止としました.ただし,発表資料は,QMS-H研究会のホームページ上で公開しました.また,2020年9月4日に,QMS-H研究会内でオンラインの発表会を行いました.
 例年,QMS-H研究会では病院の重点課題を決めて研究活動を進めていますが,今年度は病院での新型コロナ対応を優先してもらうことにしました.また,定例の研究会の代わりに,新型コロナに関する情報交換会を2020年5月,6月に計4回オンラインで開催し,対応上の様々な課題を明確にすることができました.
 2020年7月からは,QMSに関する研究活動を再開できる病院から再開し,オンラインでの検討会を開催しました.
(2) 医療QMS監査研究会
 今年度は,主査の都合と新型コロナの影響で,活動を休止せざるを得ませんでした.50年度より活動を再開する予定です.
(3) 医療経営の総合的「質」研究会
 2020年3月から5月をのぞき,オンラインも活用し,月1回定期的に研究会を開催しました.医療アラーム,ナースコール,電子カルテの質や相互運用ツールであるFHIR,さらにOMGによるクリニカルパス活用のためのBPM+規格に関して,わが国の現状と今後の展望を検討しました.
 研究成果の公開では,特性要因図,RCA,FMEA,業務フロー図に関する各種講演会,講習会を通じて,医療に関する質管理ツールの具体的な現場での活用方法を周知しました.医療事故に関しては,医療事故調査制度と医療安全管理相互評価の仕組みやRCAなどの活用方法を周知するために研修会,講演会を実施しました.
 2020年6月から新規オバザーバーを迎え,新型コロナウイルス感染症パンデミック下の新常態における社会品質に関して検討しました.
(4) 医療の質マネジメント基礎講座
 アウトリーチ活動の一環として開催している「医療の質マネジメント基礎講座」は,2019年12月に講師会を開催し,カリキュラムの見直しを行いました.しかし,2020年度は4月〜7月に開講予定でしたが,新型コロナの影響で2020年10月より,オンデマンド教材を提供する形で開講することに変更しました.

4-8.ソフトウェア部会(部会長:兼子 毅 78名)

 第49年度は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,2020年4月以降,対面による全ての活動が停止してしまいました.オンライン・ツールなどによるコミュニケーションも活性化せず,一時的に活動が停滞してしまいました.年度末に向け,活動再開を図りました.以下の報告は,2020年3月までのものとなります.
・ソフトウェア部会会合の定期的開催(一ヶ月に1回程度)
 前年度,品質管理の方法論や適用手法などの違いという観点からソフトウェアの分類を行いました.それを踏まえ,それぞれの分類ごとに,作業グループを構成して,より深い議論を進め始めました.
・メーリングリストやSNSを利用した情報交換及び情報発信
 部会メンバー間の情報交換をメーリングリストで行うとともに,SNSを利用した情報発信を行いました.
・ソフトウェア開発関連の行事に積極的に協賛・後援
 昨年度同様,他団体との連携を行い,各種行事の後援などを行いました.

4-9.管理技術部会(部会長:金子 雅明 126名)

 48年度に4つのWGに集約して運営体制を大きく変更し,本49年度は同様な体制で活動を行いました.各WGの活動内容は以下の通りでした.なお,新型コロナウイルスの影響で3月の全体会合は中止とし,活動報告書の提出によって代用しました.
WG1:品質マネジメントの改善・発展・活用の道〜中小企業のQMSモデルの研究〜
 48年度5月からの幅広い討論や8月のアンケート解析結果より,中小企業の経営改善に効果のあるテーマを選定し,管理手法を活用して「品質マネジメントの改善・発展・活用の道」の深耕を行いました.その結果,「作業標準類の整備」を研究課題とすることとしました.会合は概ね毎月行っていましたが,COVID-19の影響で4月以降WEBにて会合を実施しました.
 また,49年度活動の報告を兼ねて,品質誌Vol.50,No.3,2020に活動内容を投稿いたしました.
WG2:持続的成功のQMSの研究(ISO9004の研究)
 目的は,従来のQMSにとらわれない,組織を持続的に成功させる仕組みを研究することです.当研究は2年目で,その研究結果は次の2点です.@2019年11月の年次大会・研究発表会で「持続的成功のQMSの研究(ISO9004の研究)副題 人材作りの仕組み」を報告しました.A次は,顧客や社会のニーズを調査分析し,組織の強みを活かし,新商品や新サービスの仕組み作りと,全体をまとめる研究です.1月以降,研究を開始しましたが,3月以降新型コロナ感染拡大の影響で研究が遅れ,9月に研究計画を見直しました.
WG3:有効な審査のためのツール・技法の研究
 ISO 9001:2015年度版の箇条4(組織の状況)及び箇条6.1(リスク及び機会への取り組み)に着目した審査技法及びツールの開発を進め,2020年3月に「組織がこの要求事項をどの程度システムとして構築するべきなのか」,さらに「認証審査員はどのような視点に着目して審査に臨むか」を主題とする成果物としてまとめました.成果物については,事業計画で認証機関との意見交換をすすめることとしていましたが,コロナ騒動で実現していません.5月以降は,Zoom会議方式で検討会を継続し,50年度の研究の方向性を確認しました.
WG4: 経営に寄与するQMSの本質の研究
 前年度から継続して,QMSを経営に寄与させるための方法について研究を行いました.特に,学会から作成・発行されているJSQC規格をいかに活用して実企業におけるTQMの実践を行うことができるかについて,取り組み事例についての勉強会や意見交換を行いました.新型コロナウイルスの影響により,対面での会合・議論が十分に行えていないので,50年度はオンライン会議システム等を活用する予定です.

5.標準委員会(委員長:平林 良人)

(1) 新しいJSQC規格を発行しました.
・2020年3月17日,JSQC Std31-001「小集団改善活動の指針」英訳
・2020年9月16日,JSQC Std41-001「品質管理教育の指針」英訳
(2) 学会規格をJIS規格に申請しました.
・JSQC Std31-001 小集団改善活動の指針をJIS規格にするべく申請をしました.
 2021年4月に「JIS Q 9028:20XX マネジメントシステムのパフォーマンス改善−小集団
 改善活動の指針」制定の目標で推進中です.
・JSQC-Std 89-001:2016 ”公的統計調査プロセス−指針と要求事項”のJIS化(原案作成は日本マーケティングリサーチ協会)については進捗を確認中. 
(3) 既発行のJSQC規格の定期見直しをしました.
JSQC Std31-001 小集団改善活動の指針,2020年5月見直しは[継続]に決定しました.
(4) 日本品質管理学会シンポジウムは中止となりました.
「新時代を切り開く品質立国日本の再生に向けて」シンポジウムは7月に開催の予定で準備を進めましたが,コロナの影響で中止を余儀なくされました.
(5) 事業委員会とのコラボによる学会規格講習会を開催しました.
・2019年12月20日 日常管理の指針 福岡開催
 しかし,その後の講習会はコロナの影響で延期を余儀なくされました.
(6) 新規学会規格の取り組みについてアンケートを取りました.

6.学術委員会(委員長:渡辺 喜道)

 6-1.論文誌編集,表彰(学術)小委員会
 【論文誌編集】(委員長:渡辺 喜道)
論文誌編集委員会では以下の活動を行いました.
(1)  ほぼ,毎月1回の論文誌編集委員会を開催しました.論文誌編集委員会の責任に基づき,査読意見を参考にしながら,編集委員会が掲載の可否を判断してきました.また,「著者責任」を基本とし,新規性・価値のある主張を含む論文については掲載する方向で進めました.
(2)  韓国主催で開催されるANQ Congress 2020にあたり,国際交流委員会の委託を受けて,以下の活動を行いました.
1) JSQCから提出されたすべてのアブストラクト(全54本)に対する審査
2) フルペーパーに対するBest Paper Awardの審査
(3)  投稿論文審査のスピード化も引き続きめざした結果,大幅に遅れるものはなくなってきています.さらに迅速に審査が進むように,次年度以降も管理を徹底いたします.
(4)  国際交流委員会と連携して,ANQ 発表論文を対象とした英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の発行を行いました.第49年度はVol.5 No.1,Vol.5 No.2,Vol.5 No.3を発行しました.論文数は年間12報と,目標を上回る数を掲載できています.
(5)  第49年度は,昨年度に引き続き論文掲載料の検討をいたしました.論文掲載には相当なコストがかかるため,学会の財政状況を鑑みますと,論文掲載料の徴収は避けらない状況です.会員の理解を得つつ,引き続き検討を続けます.
(6)  学会誌編集委員会と連携して,品質誌の電子ジャーナル化(J-Stageでの発行)を検討しました.詳細につきましては,引き続き検討を続けます.
(7)  研究発表会の活性化を目的として創設された優秀発表賞制度を継続しました.
(8)  表1に過去5年間(第45年度〜第49年度)の月別投稿論文数を,表2に過去5年(第44年度〜第48年度)の投稿区分別採択数を示します.第49年度は審査中のものがありますので,採択数は第44年度から第48年度を示しました.一度却下されたものが再投稿される場合もありますので,単純に採択率を計算することはできませんが,おおむね4割程度が採択されています.
 

表1 過去5年間の月別論文投稿数

  10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
第45年度 0 0 1 2 1 3 0 1 0 1 0 1 10
第46年度 1 4 1 1 1 3 2 0 1 3 0 2 19
第47年度 0 2 1 2 0 1 1 4 1 0 1 2 15
第48年度 3 1 2 1 1 3 1 2 2 1 1 2 20
第49年度 1 0 0 1 1 3 0 4 0 3 0 2 15

 

表2 過去5年間の投稿区分別採択数

  第44年度 第45年度 第46年度 第47年度 第48年度 採択率
  投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択
16 9 10 3 19 8 16 7 20 9 44.44
報文 5 1 3 1 3 1 3 2 5 3 42.11
技術ノート 1 1 0 0 1 0 3 1 2 0 28.57
調査研究論文 2 2 3 0 2 0 1 1 2 1 40.00
応用論文 5 4 2 0 6 1 5 1 4 0 27.27
投稿論説 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.00
研究速報論文 - - - - - - 1 0 0 0 0.00
クオリティレポート 3 1 1 1 7 6 2 2 5 5 83.33
QCサロン 0 0 1 1 0 0 1 0 2 0 25.00
レター 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.00

【研究助成特別】(委員長:川村 大伸)
 本事業は学会創立30周年記念事業として,第31年度より開始されたものです.助成金額は1件5万円で5件以内.対象者は,日本品質管理学会の正会員もしくは準会員,申請時に35歳以下で大学・研究所・研究機関等において研究活動を行っている者,留学生の場合は日本の大学院に在籍する外国籍の留学生等の要件を満たす者です.本年度は11名の応募があり,研究助成選考内規に則り5名を選考しました. 

6-2.国際交流,学会間交流小委員会(委員長:佐野 雅隆)
 【国際交流】
第49年度の国際委員会では,以下の事業を実施しました.
(1)  ANQ 2020への参加
 韓国のソウルにて,2020年10月22-23日に,ANQ(Asian Network for Quality)総会が開催される予定でしたが,オンライン開催となりました.Abstractの登録件数では,JSQCからは45件です.オンラインという新たな形ではあるものの国際会議での発表の場を提供できたことは,よかったと考えています.JSQCにとってANQは人材育成・研究業績向上のためのひとつの有用な「場」となっているように思われます.
(2)  ANQの安定的発展のための調整
 ANQ理事会がオンラインで開催され,参加いたしました.例年の理事会は年2回でしたが,今年は,総会をオンライン開催としたため,その調整について8月にも理事会が開催され,参加いたしました.財務委員会,ANQ-CEC(ANQの品質管理検定委員会),Ishikawa Kano Award委員会に委員を派遣しています.財務委員会では,JSQCが委員長を務めております.
(3)  英文電子ジャーナルの刊行
 英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の5年目の刊行が完了し,TQSへの投稿に対する期待もあり,ANQ発表件数は安定しています.
(4)  海外の品質に関連する学協会とのアライアンスに関する検討
 幅広く海外の学協会と交流をもつための具体的方策について継続して検討しています.

【学会間交流】(委員長:金子 雅明)
(1) FMES
 第49年度も引き続き,FMES代表者会議,FMES/JABEE委員会,FMESシンポジウムに参画(オンライン参加)し,経営工学関連学会との交流,JABEEの審査活動,FMESシンポジウム等の活動に,中核団体として協力してまいりました.FMESシンポジウム・学会会長・副会長懇談会は,2019年12月に開催されました.

(2)横幹連合関係(委員長:椿 広計)
 横幹連合理事会のJSQCを出身母体とする2名の理事は,主として企画・事業委員会で活動してきましたが,2020年4月1名が退任しました.JSQCは,横幹連合コトつくり至宝登録事業に対してQFDを推薦し,2020年10月のネット開催される第11回横幹連合コンファレンス,コトつくり登録セッションのために推薦論文を投稿しています.第11回横幹連合コンファレンスはオンライン開催となりますが,JSQC会員が中心となってセッション「ニューノーマル(新常態)におけるリスク未然防止と信頼・安心」も企画されました.

7.安全・安心社会技術連携特別委員会(委員長:伊藤 誠)

 日本原子力学会(ヒューマンマシンシステム研究部会/社会・環境部会)等との共催の「安全・安心のための管理技術と社会環境」ワークショップを,2020年11月に実施するべく準備を進めました.また,自動車事故対策機構等の審議についても引き続き参加・協力しています.特にISO 39001の普及をめざし,ISO TC241/WG 4 marketing committeeに参画しているほか,ISO39003(自動運転システムに対する倫理的配慮事項)のドラフティングにも参画しています.
 
8.TQE(問題解決力向上の為の初等中等統計教育)特別委員会(委員長:鈴木 和幸)

 問題解決教育を通して,自己啓発・相互啓発が為され,一人ひとりの潜在的能力を引き出し,自らが主体性を持って行動し,人に優しく,社会に貢献し,人間的成長を図るべく,本委員会として下記の活動を行いました.
(1) 独)統計センターにおいて公開された教育用標準データセット(SSDSE)を活用し,QC的問題解決法の流れを習得できる教材を開発し,日本統計協会が発行する月刊誌「統計」に12回に渡り連載を行ないました.
(2) 文部科学省中央教育審議会・教育課程部会・数学ならびに情報ワーキンググループの両者に対し,平成28,29,30,令和元年, 2年度に本委員会の委員が参画し,問題解決教育の必要性・統計教育の充実などの意見表明を行い,新高等学校学習指導要領の円滑な実施に向けて貢献しました.
(3) 2020年2月29日に統計数理研究所(東京・立川市)にて第9回科学技術教育フォーラムを文部科学省・総務省・日本科学技術連盟・日本規格協会・諸学会などの協賛を基に企画しました.今回はコロナ感染阻止を目的に誌上発表とさせて頂き「新たな時代へのデータの活用と問題解決」をテーマに開催しました. 
(4) 産よりの小中高の問題解決教育への支援の可能性,および小中高からの産学による問題解決教育への支援の必要性の現状把握のためのアンケート調査の結果を分析し情報交換の方法を検討しました.
(5) 統計グラフ全国コンクール日本品質管理学会賞授賞に関しては,コロナ禍により本年度は中止となりました.