一般社団法人 日本品質管理学会
第43年度 自 2013年(平成25年)10月 1日
至 2014年(平成26年) 9月30日
事業報告

1.概 況(会長:中條 武志)

 本年度は第3期中期計画の最終年度にあたり、中期計画の達成に向けて各委員会・部会・研究会が活動に取り組みました。主な成果と課題は以下の通りです。
(1) 「Qの確保」と「Qの創造」
 経営環境・社会環境の変化に伴って生じている品質確保に向けた課題の克服と新たな品質管理技術の創造を目指して、テクノメトリックス研究会、関西統計的品質情報解析研究会、先進的生産方式に対する工程管理研究会、中部産学連携現地現物研究会、信頼性・安全性計画研究会、科学的先手管理アプローチ研究会、QMS有効活用及び審査研究部会、グローバル品質教育研究会が中心となって研究を進めました。着実な成果が出ており、その一部は研究発表会、シンポジウム、品質誌で発表されている他、報告書等も準備されています。
(2) 「Qの展開」と「Qの創造」
 ソフトウェア・サービス分野に加え、医療、エネルギー、運輸、教育などの社会インフラ領域への品質管理の展開と新たな品質管理技術の創造を目指して、ソフトウェア部会、サービス産業における顧客価値創造計画研究会、医療の質・安全部会、医療経営の総合的「質」計画研究会、安全・安心社会技術連携特別委員会、TQE特別委員会が中心となって研究・活動を進めました。成果が出ている反面、領域が広く、計画した項目が実施できなかったり、思うような成果が出せていなかったりする部分もあります。
(3) 研究活動の活性化
 研究開発委員会、論文誌編集委員会、国際委員会・ANQ特別委員会、研究助成特別委員会が中心となって、産学共同研究の活性化、研究会・部会・特別委員会間の連携の強化に取り組みました。産学共同研究の活性化については、トップダウンとボトムアップの両面から取り組みましたが、新たな研究をスタートさせるまでに至りませんでした。中部・関西支部の研究会も含めた研究開発ワークショップを開催できたこと、英文誌の発行に向けての準備が始まったことは大きな成果です。
(4) 学習・交流のための場や資料の提供、外部機関との連携
 事業委員会、中部支部、関西支部、学会誌編集委員会、標準委員会、JSQC選書特別委員会、QC相談室特別委員会が中心となって取り組みました。リソースや外部との関係もあって十分実施できなかった面もありますが、実施できたところに関しては着実な成果が得られています。特筆すべきこととしては、産業界の若手会員を対象としたイブニングアカデミーの開催、品質管理の専門領域と習得に活用できる資料・セミナー一覧の作成・公開、QC検定レベル表改訂検討、JSQC規格「日常管理の指針」の英訳版の発行とJIS化の検討開始などがあります。
(5) 会員の増強、収支の改善
 会員数の増加については、会員サービス委員会、合同委員会が中心となって取り組みました。しかし、職域会員制度やJSQC認定品質技術者制度の活用、会員や会員候補となる企業への個別の働きかけにもかかわらず、企業の経費削減および品質管理担当者の世代交代の波を受け会員数が漸減しています。学の人が研究成果を公表できる場をつくるという設立当初の目的を維持しながら、産の若手の品質管理担当者の人にとって参加する価値のある場となるような学会づくりが求められています。収支の改善については、理事会が中心となって削減案を検討し、ニューズの電子化、会合費・交通費の削減、品質誌への広告の掲載などを行い、一定の成果が得られました。

2.総合企画委員会(委員長:中條 武志)

 第43年度は第3期中期計画の3年目にあたります。中期計画で定めた目標とその達成のための活動が計画通りに実行できるよう、関連委員会と連携しながら次の3点に絞って推進を行いました。
(1) 会員組織の増強
(2) 研究活動の活性化
(3) 会員の能力向上に役立つ、TQMの普及・推進に役立つ学会活動の展開
 このうち、(1)については、退会者の分析、組織ごとの会員状況の分析を行い、産業界の若手(40歳前後)の品質管理担当者へ働きかけ、入会いただいている組織の正会員・職域会員数を増やす施策が必要なことがわかりました。これを踏まえて、若手会員と学会役員との意見交換の場を設けるとともに、品質管理を体系的に深く学ぶことのできるイブニング・アカデミーを企画しました。(2)については、産学共同研究プロジェクトおよび公募型共同研究の活性化に継続的に取り組みました。また、研究開発委員会と連携し、研究会・部会・特別委員会が一同に介して今後の研究活動の方向性を議論する研究開発ワークショップを開催しました。(3)については、日本科学技術連盟・日本規格協会と連携し、品質管理を学ぶ際に役立つ資料・セミナーをマップ化するとともに、各階層・職位の人に求められる品質管理能力についての考え方を整理し、会員が活用できるようにしました。また、事業委員会と連携し、研究会で品質賞受賞企業に講演いただくなど、品質管理に関する学会以外の活動との連携をはかる工夫を行いました。

3.事業委員会(委員長:綾野 克俊)

 第43年度事業は本部(年次大会、研究発表会各1回、講演会3回、シンポジウム2回、事業所見学会4回、クオリティトーク5回)、中部支部(研究発表会、シンポジウム、講演会各1回、事業所見学会2 回)、関西支部(研究発表会、シンポジウム、講演会各1回、事業所見学会2回、 QCサロン5回) とほぼ例年通りの事業を開催しました。
 例年本部主催で開催していました、ヤング・サマー・セミナーについては、諸般の事情から中止せざるを得なくなりました。また、今年度はここ数年行っていましたJSQC規格の講習会は新しい規格の発行もなかったため、開催しませんでした。
 本部で企画したクオリティトーク1回については、講演者の体調のため中止せざるを得なくなりました。
 支部行事は基本的 に各支部の主体性にお任せしており、地域の会員のニーズを反映した行事を企画していただき、各々好評価をいただいております。
 今年度も多数の会員に参加いただき、心より御礼申し上げます。次年度以降もよろしくお願いします。以下簡単に、主な本部行事の状況を説明いたします。
(1) 年次大会、研究発表会
 第43回年次大会は、昨年11月15日と16日、大阪大学にて開催し、研究発表49件、参加者169名でした。
 第104回研究発表会は、本年5月31日と6月1日に日本科学技術連盟東高円寺ビルにおいて開催し、一般発表47 件、参加者165名でした。チュートリアルは、会長のデミング賞委員会の活動との連携を図るという方針のもと、日経品質管理文献賞受賞者、デミング賞受賞企業の中から、次の2件の講演をお願いし、参加者76名と盛況でした。
「統計的データ解析で解くトリック −アンスコム的な数値例が語ること−」 潟潟Rー 廣野 元久 氏
「潟Aドヴィックスの経営革新を育てたTQM活動」 潟Aドヴィックス 酒井 和憲 氏
(2) 講演会
 昨年企画し延期していた講演者の講演も含め、以下の3回を開催しました。参加人数は合計で250名を超え、大盛況でした。
・第115回講演会 久保田洋二氏、福丸 典芳氏 (参加者数52名)
  日  程: 12月16日13:00〜16:45(会場:日本科学技術連盟 千駄ヶ谷本部)
  テーマ: 『企業経営における見える化』
・第118回講演会 東京大学 中尾 政之氏 (参加者数93名)
  日  程: 3月13日13:00〜16:20(会場:日本科学技術連盟 東高円寺ビル)
  テーマ: 『「つい、うっかり」から「まさか」の失敗学へ』
・第121回講演会 東京理科大学名誉教授 狩野 紀昭氏 (参加者数148名)
  日  程: 9月19日13:30〜17:00(会場:日本科学技術連盟 千駄ヶ谷本部)
  テーマ: 『これからの品質保証とTQM』
(3) シンポジウム
 以下の2回を開催しました。参加人数は合計127名でした。
・第149回シンポジウム (ソフトウェア部会企画) (参加者数39名)
  日  程: 1月31日13:00〜17:05(会場:日本科学技術連盟 東高円寺ビル)
  テーマ: 『匠の知恵でシステム開発の多面的品質向上』
・第150回シンポジウム (グローバル品質管理教育研究会企画)(参加者数88名)
  日  程: 7月31日10:00〜17:00(会場:日本科学技術連盟 東高円寺ビル)
  テーマ: 『海外進出企業の品質管理教育実施上の課題と今後の方向性』
(4) 事業所見学会
 年次大会と同時開催の2か所を合わせ、合計4回の事業所見学会を実施しました。いずれもユニークで優れた活動を展開する事業所を見せていただき、参加者から高い評価をいただきました。
  ・第43回年次大会  A
B
ダイキン 滋賀事業所(参加者数 19名)
理化学研究所(参加者数15名)  [11月15日]
  ・第1回(第367回) 鉄道総研   (参加者数28名)[10月8日]
  ・第2回(第370回) 海上自衛隊横須賀基地(参加者数20名)[5月14日]
  ・第3回(第373回) 小澤酒造梶@ (参加者数18名) [6月25日]
(5) クオリティトーク
 20〜30人の少人数の参加者がくつろいだサロン的雰囲気で一流講師の講演を聞き、活発なディスカッションの場を提供する本部独自のユニークで贅沢な行事です。これまでのJSQC選書の著者から、一般図書の著者に拡大し、図書の即売会・サイン会も開催することにして、本年度も以下の多彩なゲストとテーマで5回開催し、好評をいただきました。
  ・第1回(第86回): 元富士ゼロックス 立林 和夫 氏[10月30日](参加者数17名)
『事例で学ぶMTシステム』
  ・第2回(第87回): 電気通信大学 鈴木 和幸 氏 [4月14日](参加者数23名)
『信頼性・安全性の確保と未然防止−製品・医療・食品を中心に−』
  ・第3回(第88回): 元コニカ 町田 勝利 氏 [5月21日](参加者数25名)
『「誤S」から「真の5S」へ〜QC的5Sの考え方、進め方』
  ・第4回(第89回): 東京海上日動リスクコンサルティング梶@指田 朝久 氏 [7月23日](参加者数17名)
『私が「企業の地震リスクマネジメント入門」を書きたかった理由−払拭すべき東日本大震災の誤解−』
  ・第5回(第90回): 関口情報経営研究所 関口 恭毅 氏[9月2日](参加者数13名)
『ビッグデータ革命を品質から考える』

4.中部支部(支部長:水嶋 敏夫)

(1) 研究会活動
1) 東海地区 若手研究会[名古屋工業大学 仁科教授 主催](計画6回/実績6回)
  *Qの確保のための問題提起と解決方法について議論し、実践につなげる
2) 北陸地区 若手研究会[金沢工業大学 石井教授 主催]研究発表会(計画2回/実績2回)
  *研究発表会;(第1回)2月22日、発表件数6件  (第2回)10月4日予定
3) 産学連携現地現物研究会[早稲田大学 永田教授 主催、
    学側;仁科教授、産側;渡邉顧問](計画4回/実績4回)
  *開発設計技術者にロバスト設計のための考え方と方法論を提供、第二期まとめを冊子化すべく、推進中
4) 中部医療の質管理研究会[中部学院大学;國澤教授 主催
    医療側;岐阜赤十字病院 中村院長](計画6回/実績6回)
  *各部会(看護・薬剤・事務)を主管とし、テーマに基づいた活動を展開[偶数月開催]
  *第8回中部医療の質管理研究会シンポジウム[12月15日 長良川国際会議場 中部支部後援]
(2) 研究発表会(第105回)
  日 程: 8月27日13:00〜17:00(場所:名古屋工業大学)、 参加者:72名
  内 容: 発表件数12件(産業界:5件、学界:5件、医療界:1件、産学協同:1件)
(3) シンポジウム(第151回)
  日 程: 7月11日13:00〜17:30 (場所:刈谷市総合文化センター)、参加者:131名
  テーマ: 『顧客満足のための新たな時代の新たな商品・サービスとは』
〜新たな顧客価値を提供し続ける良い組織、人材、風土とは何か。それを実現するために我々は何をすべきかについて講演者と会場参加者で共有する〜
 
  ・基調講演   人と経営研究所  大久保 寛司 氏
  ・事例講演   ヨリタ歯科クリニック 新谷 順子 氏
  ・パネル討論会   司会;学会幹事  パネルリーダー;
パネラー;
大久保寛司 氏
新谷 順子 氏および会場参加者
(4) 講演会(第119回)
 
  日 程: 5月19日13:00〜17:00(場所:ウインク愛知)、 参加者:127名
  テーマ: 『グローバル競争を見据えた、新しい「質」へのアプローチ』
〜より多様な価値観に対応すべき、期待される商品・サービスの提供に問い直し、世界が求める魅力的な品質とは何かについて会場参加者と共有する〜
 
  ・講 演: JAXA主任開発員 清水 文男 氏;『イプシロンロケット開発における品質・信頼性の確保と新たな取組み』
東京工業大学 准教授 梅室 博行 氏;『感情経験を提供する製品・サービスと経営』
(5) 事業所見学会
  第1回(第372回):NEXCO中日本 新東名工事現場[日程:2月21日 参加者:24名]
テーマ:『高速道路事業における品質管理(道路構造物品質管理、安全管理、環境保全管理)』
  第2回(第374回):竃L田自動織機 技術技能ラーニングセンター[日程:7月4日 参加者:39名]
テーマ:『ものづくりに貢献できる人財育成』
(6) 幹事研修会
  第1回3月28日;トヨタ車体研修所 幹事メンバーで学会活動の課題について議論しし共有する  [幹事17名参加]
 
第2回7月25日; EIZO竃K問 幹事の品質管理技術の向上を目指し、北陸地区の品質管理について特徴的に取り組まれている企業を訪問する[幹事13名参加]
(7) 役員会(会場:ミッドランドスクエア 豊田クラブ 特別会議室)
第1回 H25年11月22日、 第2回 9月12日
(8) その他
協賛行事: 第11回日本オペレーションズ・リサーチ学会中部支部シンポジウム
[日程;9月27日 場所;愛知県立大学サテライトキャンパス]

5.関西支部(支部長:岡田 慎也)

(1) 事業所見学会
第371回 3月12日(水)(独)製品評価技術基盤機構(NITE)製品安全センター[参加者 32名]
「製品安全への新たな取り組みと分析評価技術」
 広報開始後すぐに定員に達した。通常は見学できない施設、分析機器等を見せていただき、アンケート結果も大変好評でした。
第375回 6月6日(金) 樺ヨ本チエイン 京田辺工場[参加者 21名]
「お客様の要求品質に応えるつばきの「モノづくり力」」
 丁寧な対応で見学会を受入れていただき、アンケート結果も大変好評でした。
(2) 講演会
第120回 6月13日(金)PM (会場:中央電気倶楽部)[参加者80名]
テーマ: 「グローバル市場での人材育成と品質保証実践例」
 
講演@ 「シャープにおけるグローバル人財育成」
岡崎 哲卓 氏(シャープ梶@CS・環境推進本部 CS・環境管理部 係長)
講演A 「グローバル化における品質保証と人材育成のあり方 〜Honda二輪車での事例紹介〜」
向井 正人 氏(本田技研工業梶@二輪事業本部 二輪品質保証部 部長)
 先進的なグローバル企業における品質保証、人材育成の実践例を講演頂き、アンケート結果も上々でした。向井氏の講演では、創業者の本田宗一郎氏のものづくりに係わる考え方を語られた貴重な生の声を映像とともにご紹介いただき、その迫力と説得力は参加者をうならせるものでした。
(3) シンポジウム
第153回 7月30日(水)PM (会場:中央電気倶楽部)[参加者71名]
テーマ: 「設計開発の質向上 〜固有技術の展開・未然防止の進め方〜」
 
講演@ 「高機能炭素繊維・複合材料の開発と“ものづくり”〜東レの先端素材開発とグローバルものづくり〜」
薬師寺 一幸 氏(東レ梶@参事・生産本部(コンポジット生産)担当)
講演A 「日産自動車における未然防止手法“Quick DR”」
大島  恵 氏(日産自動車梶@技術顧問)
パネル討論 「設計開発の質向上 〜固有技術の展開・未然防止の進め方〜」
司    会 太田 雅晴 氏(大阪市立大学大学院 経営学研究科 教授)
メンバー 松本 哲夫 氏(ユニチカ 顧問)、上記講演者
 東レの炭素繊維複合材料を含む高機能先端素材の開発とものづくり、日産自動車で生まれた「Quick DR」の考え方、開発段階からの未然防止の進め方について事例を交えながら講演が行われ、パネルディスカッションでは講演内容を更に深化させる質疑があり、多くの示唆に富む話を伺うことができました。
(4) 研究発表会
第106回 9月12日(金)(会場:大阪大学中之島センター)
特別講演
「“人づくり、型づくり”ASEANでの技術人材の育成について」
竹内 英雄 氏(パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 常勤監査役員)
 発表件数は19件(研究12件、事例7件)。最優秀発表賞、優秀発表賞及び学生を対象とした優秀発表の表彰を行いました。
(5) 研究活動報告
1) 統計的品質情報解析研究会
 「新たなSQCの開発・実践」、「誤用を防ぐために既存SQCの再検討」を行いました。
2) 科学的先手管理アプローチ研究部会
 マネジメントの課題を階層別に取り上げ、日本品質管理学会が培ってきた数々のQC(信頼性、IE、OR等を含む)技術をベースにし、科学的な先手管理、源流管理へのアプローチを体系化しています。
3) 品質管理教育教材開発研究会
 学生が、モノづくりやそれを支える品質管理に対して興味が持てるように、学校・企業の教育分野で使える品質管理教育の教材を開発し、教育の仕方やマニュアルも併せて提案しました。
(6) QCサロン
第95回 2月26日(水)今野  勤 氏(神戸学院大学)[参加者39名]
「グローバル化に対応したものづくり」
第96回 4月16日(水)森田  浩 氏(大阪大学)[参加者32名]
「ORとQCの最適化」
第97回 6月11日(水)藤平 博之 氏(滑竝闢d機製作所)[参加者25名]
「ベトナム工場での活動」
第98回 8月6日(水)岩崎 日出男 氏(近畿大学)[参加者29名]
「グローバル質マネジメントの人材育成」
(7) 合同役員会
2013年10月23日(水)、12月11日(水)、2014年2月26日(水)、4月16日(水)、6月11日(水)、8月6日(水)

6.論文誌編集委員会(委員長:鈴木 秀男)

 論文誌編集委員会では以下の活動を行いました。
(1) ほぼ、毎月1回の論文誌編集委員会を開催しました。論文誌編集委員会の責任に基づき、査読意見を参考にしながら、編集委員会が掲載の可否を判断してきました。また、「著者責任」を基本とし、新規性・価値のある主張を含む論文については掲載する方向で進めました。
(2) タイのバンコックで開催されたANQ 2014にあたり、国際委員会の委託を受けて、以下の活動を行いました。
1) JSQCから提出された全てのアブストラクト(全38本)に対する審査
2) フルペーパーに対するBest Paper Awardの審査
(3) 投稿論文審査のスピード化も引き続きめざした結果、大幅に遅れるものはなくなっています。さらに迅速に審査が進むように、次年度以降も管理を徹底いたします。
(4) 国際委員会と連携して、ANQ 発表論文を対象とした英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の発行の準備活動を行いました。2014年度中に発行する予定です。
(5) 43年度は、論文掲載料の検討をいたしました。論文掲載には相当なコストがかかるため、学会の財政状況を鑑みますと、論文掲載料の徴収は避けらない状況です。会員の理解を得つつ、引き続き検討を続けます。
(6) 表1に過去5年間(39年度〜43年度)の月別投稿論文数を、表2に過去5年(38年度〜42年度)の投稿区分別採択数を示します。43年度は審査中のものがありますので、採択数は38年度から42年度を示しました。一度却下されたものが再投稿される場合もありますので、単純に採択率を計算することはできませんが、おおむね4割程度が採択されています。
 

表1 過去5年間の月別論文投稿数

  10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
39年度 6 0 3 0 1 2 0 4 1 2 3 1 23
40年度 1 2 2 4 2 2 2 1 1 2 2 3 24
41年度 1 8 2 3 0 1 2 0 4 0 1 1 23
42年度 2 2 1 1 2 1 1 3 5 3 1 1 23
43年度 0 1 3 3 1 4 4 5 4 1 2 2 30

 

表2 過去5年間の投稿区分別採択数

   38年度 39年度 40年度 41年度 42年度 5年間合計 採択率
投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択
  25 8 23 11 24 11 24 10 23 10 119 50 0.42
報文 8 3 9 6 16 9 11 7 8 4 52 29 0.557
技術ノート 5 3 2 2 3 0 6 0 2 3 18 8 0.444
調査研究論文 6 2 6 1 2 0 1 0 4 0 19 3 0.158
応用研究論文 3 0 5 1 2 2 3 1 3 2 16 6 0.375
投稿論説 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0
クオリティレポート 1 0 1 1 1 0 3 2 6 1 12 4 0.333
QCサロン 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
レター 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

7.学会誌編集委員会(委員長:立林 和夫)

 第43年度は、現在産業界で課題となっている品質管理に関わる内容を取り上げて特集を組みました。また、新規の連載を追加しました。研究紹介コーナ(若手研究者からの情報発信)も継続しました。また、学会中期計画にのっとり、研究会報告として工程管理研究会の報告を行いました。
 本年度は特集、連載などの企画について、1回/2カ月のペースで委員会を開催し、企画内容を検討しました。
 本年度品質誌に掲載された特集のテーマは、以下の通りです。
  Vol.43,No.4(2013年10月発行): 『災害対応の成功事例から学ぶ−未然防止の知恵−』
  Vol.44,No.1(2014年01月発行): 『品質管理事始め(ルーツを探る)第3報』
  Vol.44,No.2(2014年04月発行): 『進化を遂げているQFD』
  Vol.44,No.3(2014年07月発行): 『ビッグデータ時代の品質管理』
 また、Vol44,No1から以下のテーマについて連載を開始しました。
  連載:事業の高付加価値化に向けた新たな思考技術の確立と組織マネジメントのあり方

8.広報委員会(委員長:大藤 正)

(1) Webサイトのアクセス数の増大をはかるために、「全体マップ」や「活動の相互関係」など、学会の活動の全体像を示した資料を作成し、品質管理一般および学会の最新動向を迅速に掲載しました。
(2) 対象とするのが技術系の人であることを考慮し、IT媒体(HPやe-mailなど)を活用した広報活動を行ないました。具体的にはJSQCニューズについて紙媒体での発行をやめ、Webサイトのみとしました。このことによって通信費の削減にも貢献しました。
(3) 会員にとって学会で行っている内容がわかりにくいという認識にたち、各種活動の内容を写真やビデオによる撮影・録音を強化し、Webサイトで発信する予定でしたが、43年度には実現できませんでした。

9.会員サービス委員会(委員長:中島 健一)

 会員数(かっこ内昨年度末比)は、現在、名誉会員25名(2名減)、正会員2274名(40名減)、職域会員21名(7名増)、準会員67名(5名減)、賛助会員157社206口(7社9口減)、公共会員21口(昨年同)となっています。
 会員数増強に向け、第43年度において主に以下の取り組みを行いました。
(1) 職域会員の普及
 主に企業に所属する方に適用する会員資格で、職場の職域に対して会員の資格を提供する制度として新設された職域会員制度を宣伝し、昨年度より職域会員数を増やすことができました。今後は、さらに職域会員増加につながる活動を実施する予定です。
(2) 中堅・若手会員数増加へむけた対策
 5月に開催された第104回研究発表会終了後、中堅・若手会員を交えて魅力ある学会についての意見交換会を実施し、今後の中堅・若手会員へのプロモーションについての検討を行いました。
また、中堅・若手会員に対する新たなサービスとして、勉強会(イブニング・アカデミー)等の企画に関して、関連する委員会とともに参画しました。
(3) QC検定と連動した資格制度の定着化
 QC検定合格者が社会的地位を誇れる資格制度としての「JSQC認定上級品質技術者」及び「JSQC認定品質技術者」に関する認定を行いました。今後さらに同制度の認知度を高める取り組みを検討する予定です。

10.規定委員会(委員長:古川 静男)

 学会活動の拡大と財政基盤の確立を図るため、関係する委員会と協力して、1件の新規内規の制定と1件の内規改定を行いました。
(1) 新規内規制定
・学会規則第243 日本品質管理学会規格翻訳内規
 学会規則第109 日本品質管理学会規格管理規程(平成23年10月制定)により定められた、日本品質管理学会規格(JSQC規格)を英文に翻訳することについて定める新規内規案の作成と制定を行いました。
(2) 内規改定
・学会規則第223広告受入れ内規
 平成15年12月に制定された本内規を見直すべく、他学会を参考にして広告費の見直しを行い、改定しました。

11.研究開発委員会(委員長:安井 清一、委員長代理:伊藤 誠)

 本学会の研究活動の活性化を狙い、研究開発マップに基づいて研究開発ワークショップ、研究開発・普及に関する品質管理普及・推進団体との意見交換などを行いました。本年度は、本部直轄の研究会等のみならず、中部支部・関西支部で活動している研究会にも参加していただき、本学会全体の活動状況を俯瞰しました。

(1) テクノメトリックス研究会(主査:永田 靖 20名)
   テクノメトリックス研究会では、「統計的手法を中核とした品質管理手法の開発・普及」のために、手法、考え方、事例などについて幅広い視点から研究しています。研究会はおおむね3ヶ月に1度の開催で、メンバーが上記の手法、考え方、事例などについて紹介し、メンバー間での議論により研究成果を練り上げています。議論したテーマは因果推論とタグチメソッドを中心として、多岐にわたっています。これらの成果は、研究発表会や品質誌などで報告されています。
   
(2) 医療経営の総合的「質」研究会(主査:永井 庸次 18名)
  医療事故調査等の活動に関しては、
全日本病院協会の医療の質向上委員会に参加  一部委員(飯田、永井)
厚労省研究会に参加  飯田委員
  医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する研究会
  医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会
定期的に研究会でも議題に取り上げ検討しました
全日本病院協会から「医療事故調査の指針」出版
医療事故調査制度に関する声明(2014年7月25日)
医療ITと安全に関しては、
IOMの「医療ITと患者安全」(Health IT and Patient Safety)を当研究会委員の参加を含めて有志で翻訳
2014年翻訳出版
その中で、特に以下の点に注目して啓蒙しました。
  オーダリング・電子カルテの導入により逆に、その導入に起因する医療事が増加しているのではないか?
  安全対策としての電子カルテ導入・3点認証過程での医療者による不遵守が増加しているのではないか?
  ベンダーと医療者の医療ITの安全に関する協働が必要ではないか?
  医療ITの安全に関する法的規制が必要ではないか?
医療アラームに関する検討では、
生体情報モニタなど多数のアラームが急性期病院入院患者に付けられているが、その見落とし、誤認などにより有害事例が発生している ことの注意喚起
この対策は看護協会、臨床工学技士会などで行われているが、改めて本研究会の主要課題として、質管理の立場から解析中です
今後、2003年以降改訂のない「医療機器使用者のための警報装置(アラーム)ガイドライン」を改訂検討中です
ECRIのアラーム安全ハンドブック・ワークブックについて検討します
生体情報モニタのアラームに関する研究を体系的に実施しました
その成果を病院施設で実施するアンケート調査項目をまとめました
2病院でアラームに関する実態調査を行いました
2病院でモニタ運用に介入を行い、その前後のアラーム対応状況を比較検討しました
アラームに関する内外の文献調査を行いました
   
(3) 信頼性・安全性計画研究会(主査:田中 健次 18名)
 36年度から始まった第一期と第二期の成果に基づき、下記の項目に関して、幾つかの分野でのケーススタディを進め、問題点を収集・解析すると共に、委員の研究成果の報告を通して、委員間の情報共有と討議を行い、問題点を整理しました。
  1) 信頼性・安全性作りこみ技術
 「製品安全における未然防止の実現」に向けて、民間航空機業界での共同取組、自動車企業での運用対応などを含めて、予測技術や不具合対応における現状の問題点を整理し、取組の変化などを議論しました。
  2) 安全・安心を達成するための社会インフラ構築
 「長期使用製品・老朽化の安全性問題」に着目し、橋梁などの社会インフラにおける設計・管理上の問題点などを明らかにし、課題を整理しました。「レジリエンスな組織、事業継続の実現」についても、組織における評価法などを議論しました。
  3) 研究成果のとりまとめと情報発信
 前年度の研究会での成果と第43年度の活動方針をまとめ、2013年の年次大会にて発表しました。また、2013年5月の第146回シンポジウム:『震災時対応の成功事例から学ぶ〜未然防止の知恵〜』での議論のポイントを品質誌特集号2013年Vol.43,No.4 にて公表しました。
   
(4) サービス産業における顧客価値創造研究会(主査:石川 朋雄 10名)
 本年度は商品企画七つ道具をサービス産業で適応できるかの実証研究を進めました。前年度に引き続き、サービス産業(家電メーカーにおけるトータルサービス)B社との共同研究を進め、前年度行ったサービス提案仮説アンケートの分析を行い、この分析結果は2014年5月の研究発表会にて成果を発表いたしました。このアンケート調査から顧客が好む仮説案の方向性が確認できました。サービス案サービス産業における企画のシステム化を検証すべく、家電トータルサービスにおける具体的サービス案を探るべく調査設計をいたしました。
   
(5) 先進的生産方式に対する工程管理研究会(主査:安井 清一 9名)
 第42年度の成果に基づき、回帰残差に基づく統計的工程管理について、事例を分析しながら議論を行ないました。回帰モデルだけに限らず、時系列モデルなど、プロセスデータの統計モデリングを行なうことの実際上の有用性が示唆され、また、アクションの取り方についても議論しました。本研究会は本年度をもって終了いたしました。本研究会の報告書は2015年5月ごろまでに作成する予定です。
   
(6) グローバル品質教育研究会(主査:大滝 厚 11名)
 グローバル品質管理研究会(GQE)は企業からの新メンバー2名を加え、第43年度は6回の会合を開催しました。企業メンバーからの「海外拠点での品質管理状況と課題」の報告に加えて、学会賛助会員に対してアンケート調査を実施しました。また、調査結果からわかった「海外拠点での品質管理教育に対する企業共通の要求事項」をまとめました。これらを7月31日の本部第150回シンポジウムにて中間報告しました。参加者は88名と関心の高さがうかがえました。

12.国際委員会(委員長:山田 秀)

 第43年度の国際委員会は、主に以下の事業を実施しました。
(1) ANQ(Asian Network for Quality)2014年シンガポール大会への協力
 2014年8月5日から8日に、シンガポールにてANQ2013総会が開催されました。これは、ANQ理事組織であるシンガポールのSQATが主催しました。論文審査の進め方など、大会開催の支援やアドバイスをJSQCとして継続的に行いました。また日本からの参加者についても、ANQでのリーダーシップを発揮できるよう、引き続き多くの参加者を募り、その結果として36件の発表が行われ、47名の参加がありました(発表件数/参加者数、いずれもANQ参加国の中ではトップでした)。また、若手研究者の育成を目指した、若手研究者への旅費支援援助を実施しました。
(2) ANQの安定的発展のための調整
 2014年3月に、台北で理事会が開催されました。また(1)のANQ総会と合わせ、ANQ理事会が予定されました。JSQCとしてANQの発展に積極的に関与しています。ANQ-CEC(ANQの品質管理検定委員会)、Ishikawa Kano Award委員会にも委員を派遣し、良い方向に導けるよう議論をリードしました。また、ARE-QP(Asian Recognition for Excellence in Quality Practice)、財務委員会ではJSQCが委員長を務めています。ANQの参加組織も着実に増加し、アジア以外の組織も参加する情勢にあり、その中でリーダーシップを発揮しています。
(3) 英文電子ジャーナルの刊行
 JSQCからの国際発信力を強化するべく、英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の刊行について科学研究費に申請し、採択されました。これは、ANQで発表された論文のうち、JSQC編集委員会が審査して上位と判定された論文を対象に、さらに査読者を割り当てて審査を実施し、掲載可と判断された論文を発行するものです。JSQCの学術的知見を国際的に発信し、査読/発刊にかかるコスト削減を実現する上で、電子ジャーナルとして準備をすすめています。
(4) 海外の品質に関連する学協会とのアライアンスに関する検討
 幅広く海外の学協会と交流をもつための具体的方策について継続して検討しました。その結果、ANQ関係団体と交流し良い関係を作りはじめました。ANQ Board Meeting は、その関係作りにも有用と思われます。

13.標準委員会(委員長:平林 良人)

(1) 2014年1月にスタートしたJSQC規格「日常管理の指針」の英訳WGは15回の開催を経て9月に英訳規格を完成させました。その間、JSQC内規-学会規則243 日本品質管理学会規格翻訳内規を理事会において承認していただきました。
(2) JSQC規格については、次のような規格の制定を目指して活動を進めました。
1) 小集団改善活動の指針
 小集団改善活動に関わる重要な概念および推進方法に関して、学会として統一な見解を示し、TQMのさらなる普及・発展のための基盤を提供することを目的としました。43年度にWGは1か月1回の頻度で開催し、5.8章まで原案の作成が進みました。
2) プロセス保証の指針
 製造、サービス提供を中心に標準化されたプロセスを順守することで、製品サービスの品質が保証されるにはどのような活動(工程能力調査、QAネットワークなど)をしなければならないかについての指針を作成します。山田委員長のもとWG活度が推進されています。
3) ISO20252を公的統計の質の保証に利用する指針
 政府が、公的統計調査のプロセス保証をすすめる方針を固めつつあるのに対応し、ISO20252:2012「市場・世論・社会調査−用語及びサービス要求事項」をどのように適用するかについての指針を作成します。標準委員会おいて原案に対するコメントを付け、タイトルを含め修正の提案をした結果Version2の原案がWGから示されました。その結果、標準委員会の中に審議委員会を設けることが決定されました。
(3) JSQC規格「日常管理の指針」をJIS規格にすることを推進し、次期早々審議委員会を開催する運びになっています。
(4) QMS部会から「第二者監査の指針」をJSQC学会規格にしたいとの提案があり、第43年度第6回標準委員会で審議を始めました。

14.FMES関連、 横幹連合関連(鈴木 秀男)

 43年度も引き続き、FMES代表者会議、FMES/JABEE委員会,FMESシンポジウムに参画し、経営工学関連学会との交流、JABEEの審査活動、FMESシンポジウム等の活動に、中核団体として協力してきました。FMES代表者会議は、2014年5月に開催されました。また、FMES事務局は、経営工学会が担当していましたが、次年度(2015年1月)からはJSQCが担当することが決まりました。FMESシンポジウムは、2014年7月にJSQC担当で「ビッグデータ利活用と価値創造」というテーマで開催されました。FMES/JABEE委員会とFMES代表者会議では、主に、JABEE経営工学関連分野審査やJABEEの今後について、また、日本学術会議の体制変更への対応について議論されました。横幹連合に関しては、これまでの活動を継続し、特に積極的な参画には至りませんでした。

15.研究助成特別委員会(委員長:國澤 英雄)

 本事業は学会創立30周年記念事業として第31年度より開始されたものです。助成金額は1件5万円で4件以内。対象者は、日本品質管理学会の正会員もしくは準会員、申請時に35歳以下で大学・研究所・研究機関等において研究活動を行っている者、留学生の場合は日本の大学院に在籍する外国籍の留学生等の要件を満たす者です。今年度の応募者は残念ながら0名でしたので選出できませんでした。

16.QC相談室特別委員会(委員長:橋本 紀子)

 第43年度も、学会ホームページ上で、相談室の運営を行いました。今年度も、以前に生じた「あらし」の問題は生じませんでした。ただ、今年度の利用は低調で、近年続けて来た質問件数の増加傾向を維持することはできませんでした。利用状況は開室以降最低の水準だった第40年度並みとなりました。
 利用低調の原因ですが、1)過去にも今回と同様に長期間質問がなされない時期はあったこと、に加え、2)第42年度中頃に質問者の意図がつかめない質疑も困難な質問の投稿・長期間回答がつかないことがあり、その後質問数・閲覧数が激減したこと、の影響が長引いているためと思われます。

17.安全・安心社会技術連携特別委員会(委員長:伊藤 誠)

 日本原子力学会(ヒューマンマシンシステム研究部会/社会・環境部会)等との共催の「原子力の安全管理と社会環境に関するワークショップ」に継続して参画し、ワークショップを主導的に計画しました。「安全・安心のための管理技術と社会環境」と改題し、テーマを原子力のみに限定せず、医療・製品安全などに拡大しました。新装版の初回シンポジウムを、2014年12月23日に開催予定です。また、自動車事故対策機構等の審議についても引き続き参加・協力しています。とくにISO 39001の普及をめざし、力量に関する規格の策定、日本に特化したN-RTSの策定などに協力をしてきました。

18.JSQC選書特別委員会(委員長:飯塚 悦功)

 品質に関わる概念・方法論・手法を社会が理解し適切に適用できるように支援するための一方法として、品質マネジメントに関わる、基本的考え方、マネジメントシステム、手法・技法、推進・運用、さらには品質に関わる時事の背景・意味の解説をする一連の書籍の出版化検討(企画・編集)をJSQC選書刊行特別委員会で進めました。
 同委員会を2回開催し、発行書籍候補の列挙、短期(1年程度)的な発行計画(主題、著者、発行時期など)を審議し決定しました。決定された主題にかかる構想の審議や原稿案の査読を行い、結果的には、2014年2月下旬に第10弾として、(第22巻)『安全文化―その本質と実践』、2014年3月下旬に第11弾として、(第23巻)『会社を育て人を育てる品質経営―先進,信頼,総智・総力』を発行しました(出版社:日本規格協会)。

19.TQE(問題解決力向上のための初等中等統計教育) 特別委員会(委員長:鈴木 和幸)

 初等中等統計教育が“生きる力”をはぐくむ教育となるべく、過去5年間の活動を継承し、以下の取組みを行いました。
(1) 新学習指導要領における問題解決教育の充実を期するために、学校現場での具体的な教育教材事例の開発に努めました。特に、生徒が主体となり、楽しく、わかる教材を新たに2件発表致しました。
(2) 教員の方々への上記1.にて開発する教育用教材事例に基づくワークショップ開催に努め、2015年3月28日(土) 東京学芸大学にての開催を企画しました。
(3) 42年度に提案した学校教育におけるプロセスの学びの重要性と初等中等教育スキームの啓蒙・普及に努めました。具体的には、神奈川県立総合産業高校、神奈川県立小田原高校、学芸大附属国際中等教育学校への出張講演、さいたま市立白幡中学校への出張講義を行いました。
(4) 初等中等統計教育における「生きる力」育成への活動支援として、40年度に設立された統計グラフ全国コンクールにおける日本品質管理学会賞の周知・徹底を図り、応募件数の増加と、その質の向上に努めました。9月26日(金)に全国最終審査、11月19日(水)に日本品質管理学会賞の表彰が予定されています。

20.部会

(1) ソフトウェア部会(部会長:長坂 康史 76名)
 ソフトウェア開発の経験から得られた知識を形式知化する活動の総まとめを行いました。電子版形式知集としてまとめられたものは、これまでのソフトウェア開発で経験したトラブルの解決方法などを抽象化して記述したノウハウ集となっています。
 この活動の集大成として、シンポジウム「匠の知恵でシステム開発の多面的品質向上」を開催しました。約40名の参加者に向けて、形式知集作成に関わったメンバーからその背景や意味について伝えるとともに、パネルディスカッションでその意味を掘り下げました。このシンポジウムの様子は品質誌 Vol. 44, No. 2, pp. 62-64(ルポルタージュ『第149回シンポジウム「匠の知恵でシステム開発の多面的品質向上」』)で公開しました。
 シンポジウム開催後は、次なるテーマについての検討を進めました。品質の高いソフトウェア開発を行うための知識に議論を集中させ、部会のテーマとしての方向性の議論を行いました。
 また、昨年度同様、他団体との連携も行い、各種行事の後援などを行いました。
   
(2) QMS有効活用及び審査研究部会(部会長:福丸 典芳 154名)
 42年度から引き続き次の7つの研究テーマに関して1回/月の頻度で第4期研究活動を行いました。
  WG1: 組織の視点から改正ISO9001についての研究
  WG2: 改正ISO9001の意図及び審査員の力量の研究
  WG3: ビジネスプロセスにおけるQMSの位置付け−持続的成功型 新QMS−
  WG4: 会社を強くする「自己適合宣言」の研究−形骸化ISOから、儲けるISOへの革新
  WG5: 次世代対応の第二者監査技法の研究−第二者監査のガイドライン
  WG6: 中小企業経営者が使いたくなるISO9001推進の研究−QMS運営管理のためのガイドライン−
  WG7: ISO規格とTQMの融合による組織の目的・目標達成能力向上支援のための審査技術の開発
 研究成果の経過報告として、WG7は研究報告書として審査技術基本ガイドブックを2014.2に発行しました。また、WG6は研究報告書を9月に発行しました。
   
(3) 医療の質・安全部会(部会長:棟近 雅彦 150名)
 今年度の研究活動としては、従来から引き続き、PCAPS(患者状態適応型パス)研究グループ、およびQMS-H研究会と共同しながら、PCAPS、医療の質マネジメントシステム等について研究してまいりました。
 これらの研究成果の公開の一環として、2014年3月に、患者状態適応型パスの研究班、QMS-H研究会との共催で「医療への質マネジメントアプローチ」と題するシンポジウムを開催しました。大変多くの方が参加し、活発な議論が行われました。また、2014年9月には、「PCAPSの実装と臨床分析」と題してPCAPS中間成果報告シンポジウムを開催いたしました。研究発表も、JSQCはもちろん、医療の質・安全学会、日本医療・病院管理学会、ANQ、QMOD、EOQ等で、部会員の研究発表を行っています。今年度は、周辺の他学会への研究成果の発信をはじめ、日本経営工学会の経営システム誌に、研究成果が特集記事として掲載されました。
 教育・啓発活動については、従来から開催してきた「医療の質マネジメント基礎講座」の事務局を潟eクノファに移管して,JSQC主催のセミナーとして3年目の講座を開講することができました。今年度は、昨年よりやや受講生が減少し、1回あたり40名程度、延べ600名の方が受講しました。昨年度立ち上げた講師会では、カリキュラムの見直しを行い、標準PPTを作成して講師の育成も行いました。今年度の講座では、新たに講師となった方々と従来講師で講座を担当し、10数名の講師を育成することができました。
 部会員数については、現在150名であり、減少傾向が続いています。基礎講座を受講するために会員になる方がこれまで多かったことから、医療界への学会への広報が重要と考え、基礎講座の内容に関連する学会発表を行うことにしました。これを手始めとして、積極的な広報活動を展開する予定です。