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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 1999年9月 No.215

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トピックス「アメリカにおけるステーツ・クオリティ・アワード」

私の提言「経営工学専門職の育成と活用」

■ トピックス  アメリカにおけるステーツ・クオリティ・アワード

−第53回アメリカ品質協会(ASQ)年次大会から−

財団法人 日本エネルギー経済研究所 専務理事 新田 充

本年5月に開催されたアメリカ品質協会の年次大会に参加する機会を得たがその中から,国家品質賞(MB賞)の広がりである『ステーツ・クオリティ・アワード』を紹介してみたい.

今回の大会はアナハイム市で開催され,企業,自治体,医療関係,教育関係,軍関係,学者,コンサルタントなど多彩な分野からの参加者が約4000名.さまざまな分野,レベルの人たちがこの様に多数参加していることは,品質を中心とした経営管理(TQM)がさまざまな分野に広がり,経営管理の方法として取り組まれていることの現れと思われる.

ステーツ・クオリティ・アワード

MB賞に関連して,State Quality Awards(州ごとの品質賞)についての発表があり,大変興味深かった.(Winners and Winning・The Value in States Quality Awars)

このセッションでは,カリフォルニア,テネシー,テキサスの各州で審査をしている組織の代表と,州賞の受賞企業の代表が報告を行う形で進められていた. State Awardsはその実施方法,規準とするクライテリア,は同じようであるが,具体的には州によってかなり差があるように感じられ,State Awardsのない州(例えば,コロラド,オハイオなど10数州)もある.その内容から推察すると,カリフォルニア,テネシー州が優れており,他州の模範になっているようである.

審査の基準は,MB賞の規準に準拠しているようであるが,州賞に挑戦するステップとしてレベルが明示され,カリフォルニア州の例では,レベル1「品質概念と原則の導入」,レベル2「品質概念と原則の実務への適用」,レベル3「組織全体への活動の展開」といったレベルが設定され,挑戦しやすいものとなっている.さらに,ヘルスケアーや教育機関でのガイドも示されている.また,こうした推進組織では,教育コースを設定し,企業からの参加を受け入れており,審査のみならず,品質意識の高揚,教育といった支援を行なっている様子がうかがわれた.大会後に訪問した,ソーラー・タービン社では,約5年前に州の推進組織に従業員を派遣し教育を受けさせ,州賞を受賞,その延長として,MB賞に挑戦し,1998年度のMB賞受賞につなげていったとのことであった.

State awardsの受賞は,会社の評価を高めると言うよりは,従業員のモチベーション効果が大きいという発言が新鮮であった.1990年に制定されたMB賞がアメリカ社会に大きな広がりを見せているものと推察される.

従業員の参加
これに関連して,ASQ参加後の企業訪問を通じて感じられたことであるが,従業員の参加,あるいは従業員のモチベーションを高めることが重要なテーマとなっているように見受けられる.大会の基調講演の中でも,本年MB賞を受賞したボーイングの副社長が講演の中で,従業員の一人を壇上に上げ,体験談を語らせていた.また,ソーラー・タービン社のMB賞授賞式(クリントン大統領がMB賞を授与)のビデオでは,多数の従業員を参加させ,授賞の際に歓声をあげて喜んでいる様子が見られた.この様に,MB賞,ステート・アワードへの挑戦の動機の一つに従業員の参加・モチベーションが重要な要素となっていること,従業員教育プログラムの整備,など従業員参加が重要なキーワードとなっていることが感じられた.さらには,employeeではなくpeopleと呼んでいることが印象的であった.数年前のリエンジニアリングが重要な課題となっていたことに比して,とりわけ印象深く感じられたことである.
ASQおよびその後の企業訪問での感想
アメリカ経済は好況が続き,アメリカ企業の元気さが目立つ今日であるが,MB賞が全米に広がり企業の品質向上に貢献している様子がうかがわれた.このような中にあって,いろいろな場面で,「進歩のためには変化が必要」「学ぶこと,改善を止めると進歩が止まる」という発言が聞かれた.ASQ会長の挨拶にも「20年後はわからない,今から準備しよう(Be prepared)」という言葉があった.

良好な経済状態という現状についての自信と余裕を持ちながらも,将来に対する備えを強調しているものと思われる.日本の現状を思うとき,米国の競争力に勝つためには余程の努力と時間が必要ではないかと感じた次第である.

 

私の提言  経営工学専門職の育成と活用

早稲田大学 理工学部 教授 棟近 雅彦
昨今は認定ばやりである.日本では,1993年の品質システムの審査登録に続いて環境マネジメントの審査登録が行われるようになった.まだ実施はされていないが,労働健康安全,財務管理システム,一般管理システムに関する認定についても議論されている.医療の分野においても日本医療機能評価機構という組織が設立され,病院の評価が開始されている.大学においては大学の教育体制を評価する日本技術者教育認定機構が設立され,技術者教育プログラムの認定制度が近々動き出す予定である.これに関連して,技術士制度の見直しを含めて技術者資格制度のあり方について,科学技術庁を中心に検討が進められている.

このような技術者資格に関する企業側の対応は,土木,建築などの一部の業種を除いて鈍い.先日,学術会議の経営工学研究連絡委員会の主催でこの話題に関するシンポジウムを開催したが,大学関係の参加者が大半を占めていた.土木,建築などでは,専管業務が定められている,一部の国で資格がなければ業務を行えないなどの制約があり,関心の高いのは当然である.しかし,他の業種においてもこのような制度を充実させ,資格要件を整備していくことは世界的な流れであり,企業においても人材育成と絡めて検討していくべきである.

ところで,大学の技術者教育プログラムの認定は共通基準と分野別基準をもとに行われるが,現段階では経営工学という分野が設定されていない.当学会を中心に経営工学分野の設立を働きかけているところである.

例えば統計的考え方などは,技術者すべてが身につけるものであり,その種の専門家は必要ないという考え方もある.しかし,企業における問題が高度化,複雑化している現在においては,様々な経営工学的手法をより深く身につけた専門家が,問題解決スタッフとして経営課題や現場の問題に専門的に取り組む方法が有用となるであろう.実際,そのような人材を小生のところに求めてくる企業も増えている.このような経営工学専門の技術者はどのような資格を持つべきか,どのように活用すべきかについて,前述の認定制度発足を機に,産学で大いに議論すべきであろう.



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