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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 1999年6月 No.213

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トピックス「産業競争力強化とTQM」

私の提言「人‘財'育成の質保証と質向上を目指して」」


■ トピックス  産業競争力強化とTQM

−産業構造審議会基準認証部会−

前田建設工業株式会社社 代表取締役会長 前田 又兵衞
産業構造改革の視点
1万7千円の株価に日本の株式市場が沸き,1万1千ドルを突破した米国市場の強さに驚かされたのが,小渕・クリントン会談直後のことである.景気動向にとって指導者の明確な言動が何よりも重要である証となった.

完全失業率は過去最悪となり,学生の未就職者が最多を記録するなど雇用情勢は一段と厳しさを増している最中,活力ある日本の創生を目指した経済戦略会議を始め産業競争力会議など様々な視点で産業構造の抜本的改革が進められている.

戦後の最悪ともいえる不況克服に登場した小渕内閣の強力な指導力のもとで,政産官学が一体となり迅速な改革を断行すべく取り組みが開始された. 

産業構造改革への重要な視点は日本の産業競争力の再生である.

産業競争力再生への第一歩
産業競争力再生の第一歩は,競争力の実態把握にある.成熟社会の歪みと高コスト構造の是正など,改革すべき視点に正確を期して,政産官学が国政レベルで既成概念をこえた議論を行い,年内に処置すべき臨時措置,短期的な応急対策,更には抜本的かつ中・長期的な産業構造改革への諸施策を段階的かつ次々と打ち出さなければならない現況にある.

日本企業は,国際的にもトップクラスにある技術力や,優秀で質の高い労働力などの潜在能力を持ちながら,先進的な商品や技術開発に活かし切れていない.

グローバル化が進む高度化した市場では個性的な商品が求められ,単に不良を出さない高品質だけでは差別化が困難となり,商品開発は遅れを取るであろう.現にIMD(国際経営開発研究所)の「世界競争力調査」によると,1位であった日本の競争力総合ランキングは,1993年から急速に低下し,1998年は18位に転落した.また,技能五輪国際大会の総合順位も漸次低下している.

このような危機的な実態を産業界が正確に認識し,経団連・経済同友会などにおいて,日本全体としてのしかるべき対策を講じた日本版・ヤングレポートを出すべきであるとの危機感を訴える提言も聞こえる.

また,日本のTQMを完全にマスターし自国流にデバイスした米国の政府機関やサービス産業が米国の強い経済を支えていると指摘する学識者もおられる.

現在の日本の競争力を直視して,再生の対策を講じる手だては,米国が見事に再生した手法を活用すれば可能である.それこそ,かつて日本が米国から学び,独自に編み出した手法でもある.しかも,日本は依然としてGDP世界第2位の経済大国であり,他国に誇れる豊富な貯蓄があるなどの背景を考慮すれば,この機会を逃さなければ充分に再生可能である.

過去,日本の製造業が成功した手法を行政やサービス産業へ,活用することも競争力の再生には必要な試みであろう.

改革の主体は民間だが,先達は行政からであろう.責任転嫁ではない.何故なら改革論議に必ずおこる規制緩和の大合唱に対し行政の関与も否定できないからである.縦割り行政の批判もあるが,兎も角も行政改革は動き出している.

小渕総理の非凡な指導力と新しい手法を活かせば,産業競争力の再生はたやすい.今までの政府の審議会とは異なり,議論をしつつ結論を出し,即実行に移す機能を有している産業競争力会議も活用可能である.

まず企業トップの強力なリーダーシップのもとで再生の牽引力となる企業が活力を取り戻す.そして既存の全方位的な技術開発や技術力を見直し,大胆かつ奇抜な創意工夫や発想転換が可能な人財の育成を進める.そのための金融,税制などの抜本的な経済改革も必要である.

日本品質管理学会においても,産業競争力増強に役立ち,かつ真に企業経営に資する新しいTQMを,政産官学の相互の垣根を超えた様々な組織の英知を結集して練り上げるべく7つの提言を行った.

競争力再生の次のステップ
政府は,バブル精算に向け本腰を入れ景気対策を打ち出した.金融界も産業界も活力再生への行動を開始し,競争力への第二歩である雇用問題に対する緊急な解決策などの議論が地に着きだした.

新しい世紀を眼前にし,リニューアルした手段や手法によって,すべての仕組みを是正する時機が到来している.すべての改革の潮時なのかも知れない.

 

■ 私の提言  人‘財'育成の質保証と質向上を目指して

金沢工業大学 教授 石井和克
日頃,大学という場で技術者教育の仕事に携わっている者として考えている所をこの場を借りて紹介し,会員諸兄のご批判とご指導をいただければ幸いである。 

昨今の大学をはじめとする高等教育機関,とりわけ工科系教育現場では,「教育改革」の言葉に象徴される教育サービスの質保証と質向上に向けての試行錯誤が繰り返されている。この背景には18歳人口の構造的減少,わが国工業界の国際競争力の相対的低下と行き詰まり感及びグローバルスタンダードの急激な展開を背景に大学経営そのものの行き詰まり打開策の模索があろう。教育に求められるサービスの1つに創造性豊かな「人‘財'」の育成があろう。行き詰まり打開には創造性が大きな役割を果たす。従って,如何に創造性豊かな人財を効率的に育てるかが大学における重要な経営戦略となる。しかし,創造性の質の特性や評価尺度といったものがサービス提供側の大学や需要側の学生および人材受入側の雇用側においても必ずしも明確化していないのが現状であろう。一方,最近,技術者教育認定制度の話題が出ている。この制度は「責任を持って社会で行動する職能集団の一員として自立的に行動する技術者の育成」を目指し,この制度の基に,専門教育プログラムを調査・評価し,認定を行う機能の設置が検討されている。ここでの技術者像は高品位の専門知識と市民としての一定の倫理観を持ち合わせた人財像が描かれているのではないか。

日本における豊かな唯一の資源は人材ではなかろうか。人材には「人罪」,「人在」,「人材」,「人財」があるという。人財育成サービスシステムの質保証と質向上は単に教育機関だけの問題ではなく国家的プロジェクトとして「質」を研究する本学会でもあらゆる立場からの議論が行われるべきではないだろうか。花を育てるなら1年,木を育てるなら10年,人を育てるなら30年の言葉の重みを改めて噛みしめる。



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