要約:TQM宣言が発表されて,多くの議論がされているが,現在の事業環境下で経営改革を進めるためには,これらの概念を実務に適用できる技法にする,「技法開発」が企業人としては必要であると考え検討している.
ここでは関係性概念について簡単に検討の要旨を述べ提言とする.
現在の不況の背景には幾つかの原因があるが,個人も,企業も,官公庁も強いニーズを持っているわけではないことも含まれている.
直接の顧客向けの,特定の製品についての「質」を考えた経営管理では事業としては成功しない. さらに事業の成功「経営の質」という定義についても評価する人も,評価基準も変化している.
自社の「経営の質」としての中長期の繁栄を築くためには,顧客の中長期の繁栄が基礎であり,そのためには関係者の連鎖の概念に基づき,顧客の顧客の要求も検討することが事業成功の秘訣である.
顧客の顧客が不明であり,開拓することも必要であることも多い. 顧客連鎖全体の期待に合致する「質」を中長期に永続的に提供するためには,従業員や協力先との間の関係も中長期の関係を築く必要がある.
その例が中長期のパートナー関係である.
このような関係を構築するためには,関係性の分析とそれに基づく関係管理が重要である. その内容としては,関係者の連鎖を含めたリストアップ,その価値観の分析,その環境条件の分析,その行動の予測と影響の分析,組織の事業方針・価値観から判断した関係者の限定(関係相手の設計),そしてその関係者との間での共存共栄(Win-Win)関係の構築と実行方法(関係の設計)などの手順が含まれる.
これらのことからわかるように顧客満足度,人々の満足度,従業員満足度,ステークホルダーの満足度はこの関係性の分析,調査,設計,管理の下位概念である.
このような中長期の繁栄の方法としてのパートナー関係については既に米国ではTQMの方法として確立している企業もある. 日本でもTQM宣言の具体化により早期に技法として確立する必要がある.