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学会誌「品質」
JSQCニューズ
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JSQCニューズ 1998年8月 No.206

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巻頭言「98TQM東京大会とTQM宣言のその後」

私の提言「TQM領域における実証研究の再考」
我が社の最新技術「光サービス需要に対応するπシステム」

■ 巻頭言  98TQM東京大会とTQM宣言のその後

東京工業大学 圓川 隆夫
'98TQM東京大会

昨年はじめTQM宣言の冊子が刊行されてから1年半余り,様々な議論がなされてきた. '98TQM東京大会(主催(財)日本科学技術連盟)は,昨年の名古屋大会を受けてTQM宣言のフレームワークに基き「TQMの実践と成果―コア技術,スピード,活力」と題して,7月15日(水),16日(木)の両日,約300人の参加を得て日本青年館で行われた.

「甦れ品質のニッポン」と題した日本経済新聞の徳田 潔氏の特別講演,大会テーマと同じタイトルの玉川大学谷津 進教授の基調講演,コア技術,スピード,活力の3会場でカテゴリーごとに分かれた12の招待発表,そして28の研究発表,最後にTQMの現状認識と問題点を総括するTQM討論会で締めくくられた.

2つの問題提起

本大会の主旨は,TQMの実践と成果を確認するとともに,今後の発展のための課題を見いだすことにある. 特に招待講演では,コア技術,スピード,活力の3つの切り口から,それぞれベスト・プラクティスの報告があった. 一方,課題という意味では,大きく2つの問題提起があったように思える.

TQMは,製品品質のみならず,経営プロセス・資源の"質"向上といういつでも不可欠な根元的普遍性をもつ対象を目指した取り組みである. その意味ではTQMと言わないでも,TQCの良さは不変である. しかしながら,それが組織の取り組みとして求心力をTQCがもつためには,基調講演の谷津教授の指摘にあったように,20年前に最適であったやり方が現在では決して有効とはならない. 企業を取り巻く状況は常に変化し,それによって最適解も変化するからである. 今ひとつの問題提起として,わが国経済の閉塞感は単に金融システムだけの問題ではなく製造業にもあり,現場の改善力は世界一であってもそれが全体の成果に結びついていないという特別講演の徳田氏の指摘があった.

TQMの内容をわかり易く

TQMはそのひとつの解答と期待される. これらの問題を踏まえたTQM討論会では,TQMのフレームワークおよび内容も整備されてきたとの評価がされ,フロアからの意見も含めて異論は出されなかった. その上で求心力と全体成果を獲得するためには,谷津教授の講演にもあったWHAT型の問題解決の方法論と評価尺度の開発の必要性と,トップの理解や,中小企業,非製造業への普及のために,さらにTQMの内容をわかり易くする努力の必要性が強調された.

このわかり易くというには,新生TQMを外に向かって情報発信する場合にも特に必要であろう. TQM宣言の内容は,これまでTQCを実施してきた内の方々への認知はかなり得られたと考える. これからはこれまでのTQCの枠を越えた対象へインパクトを与えるような情報発信が求められてくるのではなかろうか.

TQM委員会の取り組み

さて,この大会が開催される直前の7月はじめ,「TQM 21世紀の総合「質」経営」(日科技連出版)が,日科技連のTQM委員会(委員長飯塚悦功東大教授)より刊行された. TQM宣言の内容を周りの状況も盛り込み詳しく解説するとともに,15の各要素の取り組み事例が紹介されている. 大会テーマの「TQMと実践と成果」の出版物によるアウトプットとしても位置付けられる.

現在TQM委員会では,討論会で指摘のあったような新しい方法論や評価尺度の開発テーマをリストアップし,既に検討をはじめている. さらにこのような開発を産学協同で有効に進めるような推進組識設立も計画している. また外に向かって発信のためのパンフレット作成や,TQMをやさしく要約した出版物の刊行も予定されている.

TQM委員会でのこのような取り組みに並行して,何より重要なのが企業での取り組みである. 世界モデルとなったTQCも,その時代にあった企業のベスト・プラクティクスを随時加えることによって形成された. TQMについてもそのようなベスト・プラクティスを発掘し,それをTQMに同化,体系化していく努力こそ重要であろう. さらにTQMでは"管理技術の融合"の必要性を言っている. QCの活動に垣根を作らず,原点に戻り良いものをどんどん学ぶという姿勢こそ今求められていることと考える.

 

■ 私の提言  TQM領域における実証研究の再考

広島工業大学 工学部教授 久保田 洋志
日本の多くの企業は,不良債権処理,国際的信用の失墜,景気の低迷と先行き不安など,厳しい経営環境下にある. 政治・行政への対応,資金繰り,M&Aと戦略的提携などが,当面の経営重要課題となっている企業も多いけれども,すべての企業の生存の根元は市場の顧客に価値ある製品・サービスを提供することである. 構造的な企業環境変化に対応して,基本を大切にしながらも,自己変革していくことが各企業の生存・成長のための基本要件である. TQM委員会(飯塚悦功委員長)が『TQM宣言』と『TQM:21世紀の総合「質」経営』で提示した「新しいTQM像」は,基本要件を充足する基本枠組である. 過去,産学共同で,分野を問わず有用なものを積極的に取り込み,実践と理論とを発展させてきたが,会員の一人として,学会活動を更に活性化させ,産学間で,協働し,「新しいTQM像」を展開し,現実の実践に役立つ管理技術と方法論を開発し,日本経済再生に貢献することを期待している.

過去,学会誌掲載論文は精緻な理論とデータ解析が中心的存在であった. SQCの研究論文は確かに価値があり有効である. しかし,多様度の高いTQM活動に対して,精緻な理論は研究領域を限定させるし,素朴帰納主義的なデータ解析は観察の理論負荷性を看過する傾向がある. 実証的研究に再現性を過度に要求することは,社会文脈依存で,相互干渉と学習が行われるTQMの社会的側面を扱う理論構築の障壁となり得る. それ故,個別的・具体的な現象・事象を一般化・抽象化する論文の掲載が,最近,増加傾向は歓迎すべきことである. そこでは,演繹的に構想した概念枠組から,観察された現象・事象の意味を問い,帰納的ないし解釈的に矛盾のない理論を構築し,現実を説明して,深い洞察や体系的考察を得ることで了解するという方法が採用されている. 再現性ではなく,論理一貫性に加えて,説明力と納得性があり,示唆に富む内容豊かな投稿論文が数多く学会誌に掲載されること切望している.

■ わが社の最新技術  光サービス需要に対応するπシステム

NTT資材調達部 福丸 典芳
はじめに

近年,情報通信を取り巻く環境は大きく変化しようとしています. 一般電話の販売数が下降傾向にある中,ISDNサービスが急増傾向にあるのは,インターネットの急速な増加に伴い,お客様ニーズが電話のような音声だけの通信から映像やデータといったマルチメディア通信へ変化しているからと考えられます. 今後は,通信を介したインタラクティブゲームやビデオオンデマンド等,多様なニーズがさらに加速的に増加していくと予測されます. 一方,現在のアクセスネットワークの大半を占めるメタリックケーブルでは,伝送特性上高速・広帯域なサービスの提供が困難なため,今後はサービスニーズの顕在化に先行しアクセスネットワークの高度化を図っていく必要があります. このことから,高速・広帯域・低損失といった特徴のある光ファイバケーブルを用いたアクセスネットワークの構築が急務となっております. このためNTTでは,「配線点までの光化(2010年までに整備)」に加え,今年から「配線点から各家庭直近電柱までの光化」を方針化し,全国展開を開始しました.
光化の展開

現在ビジネスエリアにおいては,主にビジネスユースとして高速系サービスへの要望が多いことから,ユーザビルまでの光化(FTTO)を推進しております. 具体的なサービスニーズが無い場合においても,既存メタリックケーブルの更改時期に,一般電話やINSネット64等を,数百回線多重して伝送する光アクセスシステムを導入し,将来のユーザ要望に即応できるネットワーク作りを展開しています. 一方,住宅エリアにおいてはホームユースが中心であり,そのほとんどが一般電話やINSネット64サービスで,それ以上の高速系サービスや映像サービスはごく一部のエリアでの需要にとどまっています. しかし,今後パソコンを利用したインターネットがより急拡大するとともに,その内容もより映像データが増えていくことが予想されます. このため,当面は一般電話やINSネット64等の既存低速系サービスを対象とした,新光アクセスシステム(πシステム)を導入し,将来のユーザニーズの高まりに備えた設備構築計画を立て,本年3月から具体的なエリア展開を実施しているところであります.
πシステムの概要

従来の光アクセスシステムでは,価格,重量,大きさ,サービス(機能)面での課題がありました. 価格については,既存メタリック設備コストより安くする必要があり,このため従来のアクセスシステムは,数百回線を多重することでそれをクリアしてきました. しかし,これではせいぜい10回線程度しか収容できない配線系には適用することができません. また,重量や大きさといった物理的な要素も大幅に改善しないと「配線系の光化」は達成できません. このため,技術的なブレークスルーが望まれていましたが,それに応えることとなったのがNTT研究所で開発された光PDS技術やデバイス技術であります. なお,これだけではメタリック並みコストの達成は困難であったため,既存の架空光ファイバケーブルや光クロージャ等も全面的にスペックを見直し,大幅なコストダウンを実現しました. これらの努力によりπシステムは,小型・軽量で,10回線程度の多重でメタリック並みコストを実現する当初の目標をクリアすることができました. なお,πシステムは既存の低速系サービスを提供することができるため,お客様端末を変更することなく,配線系を光化することが可能です. このため,これからは計画的にかつ全国的に光化を展開していくことが可能となり,FTTHの実現が大きく近づいたと言えます.πシステムが導入されたエリアでは,お客様宅までの残りわずか数十メートルがメタル引き込み線のため,お客様からの要望があれば1〜2日で「各家庭までの光化」を実現することができます.
おわりに

πシステムの導入は,まだ始まったばかりであり,現在も多くの課題を抱えています. 具体的には「更なる軽量化」、「より一層のコストダウン」,「種々の設置形態に対応したπシステムのメニュー化」,「一括型給電方式」その他にも種々な課題がありますが,現在アクセス網研究所をはじめとして,関連研究所並びにメーカ各社において,多くの方々がそれぞれの課題に取り組んでいることから,確実にπシステムの改善は進んでいくものと確信しています.


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