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学会誌「品質」
JSQCニューズ
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JSQCニューズ 1997年11月 No.200

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ホットニュース!   
巻頭言「日本品質管理学会の名称変更に関するアンケート調査報告」
私の提言「近代文明は崩壊するか 」

■ ホットニュース!

1997年度日本品質管理賞・デミング賞授賞式開催される−狩野紀昭氏本賞受賞−

日本科学技術連盟は,1997年度の日本品質管理賞,デミング賞および日経品質管理賞受賞者を発表し,授賞式が11月17日大手町経団連会館で挙行された.
日本品質管理賞 台湾フィリップス社
デミング賞本賞 狩野紀昭氏(東京理科大学教授)
デミング賞実施賞 ○アイシン機工
○小島プレス工業
○東洋ガラス
日経品質管理文献賞 ○ 「製品開発論」圓川隆夫・安達俊行著
○「グラフィカルモデリング」宮川雅巳著
○「マネジメントのための課題達成型QCストーリー現状打破・創造への道」狩野紀昭編著 
○ 「21世紀への技術・信頼性ハンドブック」日本信頼性学会編

■ 巻頭言  日本品質管理学会の名称変更に関するアンケート調査報告

慶應義塾大学理工学部 篠崎信雄

調査実施の背景

長期計画委員会が学会の名称変更に関するアンケート調査を実施した. その背景については,そのときの回答お願いの文面および前号ニューズの近藤良夫先生の "JSQC versus JSQ" という記事にも詳しく述べられているが,次のような事情に基づいている. 日科技連がTQCをTQMに呼称変更し,さらに,国外では韓国,台湾,アメリカといずれも品質管理学会(あるいは協会)が名称を変更し,'C'(Control)という言葉を削除している. わが日本品質管理学会(JSQC,The Japanese Society for Quality Control)も名称変更を検討してはどうかという意見が会員から出されているのである.

そこで,長期計画委員会が会員の意見分布を知るための調査を行ったのである. これは決して名称変更の提案ではなく,また,調査結果を基にして直ちに決定に結びつけるという性格のものではないことはお断りしておかねばならない.

集計結果

    英語名
日本語名
変更しない JSQ JSQM その他
変更しない   37 113  20   0 170
日本品質学会    0  88   1   0  89
日本品質経営学会    0   3  15   0  18
その他    1   5   1   8  15
  38 209  37   8 292
回答数は,総計292に上り,また,その中の多数の方から貴重な意見を記入して頂いた.ご協力頂いた皆様に,まずお礼を申しあげたい.さて,意見分布は上記の表のように整理された.

なお、「日本品質経営学会」には'経営'を'マネージメント'に置き換えたものを含めており,'JSQ(M)'は'Japanese Society for Quality(Management)'である.日本語名については'変更しない'が過半数を占め,英語名についてはJSQ支持が圧倒的多数となった.

さまざまな意見

このような集計結果となった理由を探る意味でも,記入された意見について整理して述べておく.

まず,基本的考え方については

非変更支持派:

  • 品質だけでは,何を問題とするか不明である.Controlが重要である
  • 語感や周りの動きだけで変更すべきでない.背景にある理念,思想を盛るものでなければならない

変更支持派:

  • 管理(Control)という言葉は技術面を強調し過ぎ視野を狭めてしまう
  • 製品の質に限定せず,質(Quality)全般を対象とすることを表すように 変更すべきである
  • 海外の動向に合わせ,世界に通用し,外部から正しく認識される名称に変更すべきである
などの意見があった.

日本語名に関しては

非変更支持派:

  • QCが出発点であり,品質管理という言葉は国内で浸透しており,歴史と伝統の重みがある
  • 「日本品質学会」では品質をどうするのか不明で,実体にも合わない
「日本品質学会」支持派:
  • 「日本品質経営学会」とすると,理系技術者から敬遠される恐れがある
「日本品質経営学会」支持派:
  • 「日本品質学会」では,範囲が拡大されすぎ,対象領域が不明確になる
などの意見があった.

英語名に関しては

非変更支持派:

  • 略称だけ国際的に合わせればよい
変更支持派:
  • 国際的に通用する名称にすべきである
「JSQ」支持派:
  • 現在は品質経営的活動であるが,将来活動分野が拡大することが考えられる
「JSQM」支持派:
  • QのManagementが主要な対象である
  • 管理の内容をManagementの方が正確に表す
などの意見があった.

以上により,会員が全体としてどんな意見,考えを持っているのかがかなり掴めるように思える.調査結果を踏まえ,長期計画委員会を中心として,この問題にどのように対処すべきかの議論を煮つめていくことになる.

■ 私の提言

青山学院大学 佐久間章行

近代文明は崩壊するか

今年の12月に地球温暖化防止のための京都会議が開催される.京都会議に関連する新聞やテレビの総報道量は膨大であり,地球環境問題への社会の関心がやっと本格化しつつあるように見受けられる.

しかし地球温暖化だけが地球環境問題のすべてではない.近代文明が全ての局面において過去数十億年にわたって蓄積された地球資源の"食い潰し"によって成立している文明であり,いずれは終局を迎えることは誰しもが認識している.あるいは潜在的に意識している.

そこで「近代文明の寿命」を如何に認識しているかを調査してみた.最初は地球環境問題に専門度が高いと自認する研究者58名を対象にしたが,結果は驚くべきものであった. 「近代文明の寿命は100年以下」であるとの認識が示されたのである.われわれが享受している近代文明は21世紀には消滅することになる. この調査結果は特殊な専門家のみの判断ではない.その後,同様の調査を社会人,学生,主婦,中国人など約1,000名を対象として実施したが,極めて類似な調査結果が得られている.

では,この予測値はどのように認識されているであろうか。「社会の経済体制(市場経済など)を根底より見直す必要を感じる。」に同意する社会人は58%にも達する. これは現在の企業のあり方を全面的に見直させるものである.マーケットメカニズムに代替する新しい経済の方式を探索しなければならない.顧客至上主義も再検討が要求されることになるであろう.

またさらに「社会制度(民主主義や人権思想)を根底より見直す必要を感じる。」に対しても同意する社会人が33%も存在する. 言うまでもなく民主主義と人権思想は現在の社会を構成している理念の根幹であり,それを否定する質問に33%が賛成していることに注目を頂きたい.

地球環境問題は要因が複雑であり,しかも人類としての基本的な理念・哲学が関与している.このように関連する要因が錯綜し,しかも総合的な判断が必要とされる問題を解決できる技術分野は品質管理をはじめとする経営管理技術でないであろうか.TQMの役割もまた大きいと思われる.


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--------The Japanese Society for Quality Control--