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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2020年5,6月合併号 No.380-381

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■トピックス:新型コロナウィルスの感染拡大について:応急処置をしっかりと
■私の提言:やる気のある学生にデータ解析の実践する機会を!
・PDF版はこちらをクリックしてください → news380-381.pdf

トピックス
新型コロナウィルスの感染拡大について:応急処置をしっかりと

日本品質管理学会会長 棟近 雅彦

 はじめに、新型コロナウィルスを罹患された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。また、医療関係者の方々には、医療活動を献身的に継続されていることに対しまして、敬意を表するとともに感謝申し上げます。
 本学会で計画しております今年9月までのすべての行事につきましては、支部開催の行事も含めまして、延期とすることにいたしました。会員の皆様には、新型コロナが収束し、安心して行事に参加していただける時期になりましたら、あらためて皆様にとって有益な企画を提供させていただく所存です。皆様におかれましても、十分ご自愛なさるとともに、感染防止に努めていただきますようお願い申し上げます。

 本原稿を書いているのは4月半ばであり、7都府県に緊急事態宣言が発令されて1週間が経過したところである。収束に向かうのか、オーバーシュートしてしまうのか、全く予断を許さない状況であり、今書こうとしていることも、1週間後には全く成り立たない状況になっているかもしれない。その中で、今やるべきことについて述べる。
 このような社会に大きな悪影響を及ぼす近年の出来事としては、我々は東日本大震災を経験している。あのときも社会は大きく混乱し、私が勤める大学で、卒業式、入学式は中止、授業開始も連休明けとなった点は、今と全く同じである。あのときと大きく異なる主な特徴は、1)影響範囲が全世界的と比べものにならないくらい大きい、2)悪さがなかなか見えない、3)”何もするな”といわれている、の3点である。
 品質管理は、問題に対してPDCAを回すことを基本としている。今起きている新型コロナ感染拡大に対しても、PDCAを回すべきである。Act(処置)では、応急処置と再発防止処置を明確に区別することを強調している。今は、応急処置をしっかりやる段階である。すなわち感染防止、これに尽きる。そしてそのもとで、本業で影響を最小限にとどめるためにやるべきことは何かを考え、実行することが必要である。
 本学会としての一つの応急処置は、上述した行事の延期である。学会なのだから何らかの会員サービスを提供すべきでは、何らかの提言をすべきではというご批判もあるであろう。会員向けの行事に関しては、今年度も事業委員会を中心に、会員の方に有益と思われる行事を精力的に企画していたが、これらの行事は、新型コロナが収束すれば、必ず実施させていただく。今は行事をやめ、会員の方々それぞれの応急処置が重要である。
 このように感染が大きく広がるまでは、どこかに”油断”があったと思われる。「そんなにひどくはならない」「経済の落ち込みが心配」私自身の反省でもあるが、今までこのような経験をしたことがないので、大丈夫と思っていた人が多いのは事実である。
 この騒ぎが収束したときに、学会として取り組まなければならない課題も見えては来ている。私自身、地域で災害に対応する医療マネジメントシステムを研究対象としており、その視点から、何が課題であったのかをまず整理し、それを再発させないためのマネジメントシステムを提示したい。
 例えば、前述した特徴の2)に関しては、事実が我々に見えてくれば、危機感ももっと早く生まれ、いろいろなところで適切な対応がとられたと思う。しかし、感染者数も検査が十分行われていない状況では過小評価であろうし、東日本大震災のようにいろいろなものが破壊された悲惨な状況が見えているわけではないので、事実に基づく管理もできず、適切な対応も打てていない。どうすれば、正しい情報を把握し、国民に伝えることができるのかを考えねばならない。
 特徴3)は、おそらくほとんどの人が経験のないことであり、誰もが苦労しているところである。ICTを中心に、今回で様々なノウハウがたまると思われるので、それを体系化する必要があるだろう。その他、マスクや衛生用品などの物資の不足が大きな課題になっており、BCPとともに、緊急時の即応生産・流通体制の確立も、産業界に突きつけられた大きな課題である。
 これらの課題は、いずれ整理してお示しするが、まずは確実な応急処置をお願いしたい。


私の提言
やる気のある学生にデータ解析の実践する機会を!

横浜国立大学 黒木 学

 横浜国立大学(横国)に異動して4年目になります。横国に経済学部・経営学部があることを知っている方は多いと思います。でも、理工学部があることを知っている方はあまりおらず、横国理系といえば「工学部」というイメージなのかもしれません。実は、2011年に教育人間科学部と工学部を改組してできたのが理工学部です。このときの改組で最も目を引いたのは、ハード的な「モノづくり」を重視する学科ばかりの工学部に、数理科学に特化した教育プログラムができたことだと思います。この教育プログラムは、主に、純粋数学の教官で構成されていますが、統計科学、計算流体力学、画像・知識情報処理の教官もいます。私はここに所属しています。
 純粋数学科みたいなところですが、意外にも統計科学に興味を持つ学生さんがたくさんいます。不思議なことに、その学生さんの興味の多くが、昨今のデータサイエンス・ブームとは無関係なところから生まれています。もともと数学が好きでありながら、本学部の風土を反映して「実践できる数理科学」を探し求める学生さんが多いからなのかもしれません。他の大学とは異なり、3年生で研究室に配属されるまで、統計科学に接する機会はほとんどなく、「データはばらつく」という感覚がありません。しかし、未知なる世界への好奇心からなのか、研究室配属後は貪欲に統計解析技術を身に着け、果敢に学会発表に挑戦し(4年生がANQでBest Paper Awardをいただきました)、学術誌の査読に耐えうるレベルの卒論を書いて大学院へ進学しています。そんな学生と接するうちに、統計科学は最高の「実践的数理科学」ではないかと思いはじめました。一方、本学部は、現在のところ、データサイエンスに関する組織的な戦略をとっていないこともあり、実践的データ解析を経験する機会に恵まれていません。
 以上、所属学科の紹介になってしまいましたが、同じような状況にある研究室は少なくないと思います。“超”有名大学やデータサイエンス・ブームに乗って設立された学術組織との共同研究やインターン受け入れを希望する企業が多いと思います。そのような企業のなかに、小さな学科の小さな研究室にも目を向け、やる気のある学生に実践的データ解析を経験させてくれる企業はないかなと思う今日この頃です。

 


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