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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2019年2月 No.370

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■トピックス:第107回品質管理シンポジウム報告
■私の提言:現代の品質管理のあり方
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トピックス
第107回品質管理シンポジウム報告
−顧客価値創造に貢献できる品質に拘り続ける組織と人材の育成− 

電気通信大学 情報学専攻 特任教授/QCS組織委員 鈴木 和幸 

 2018年11月29日から12月1日にかけて、(一財)日本科学技術連盟主催の第107回品質管理シンポジウム(QCS)が、「顧客価値創造に貢献できる品質に拘り続ける組織と人材の育成−風土化された組織能力(○○○Way)の構築と強化−」というテーマのもとに(主担当組織委員:猪原正守氏/大阪電気通信大学 情報通信工学部 情報工学科 教授)、大磯プリンスホテルにおいて開催された。282名の参加者の下、品質管理界のサミットにあたる三日間の有意義なシンポジウムとなった。

 1日目は、坂根正弘コマツ相談役より「代を重ねるごとに強くなるための品質経営」という演題で、“この国にとって一番大事なことは何か。これを考えるときの本質は何か。この最初の出発点がポイントであり、ここを間違えずに必要な情報をステップバイステップで集め、意思決定を行っていくことが大切である。例えば今世紀中に石油は枯渇すると言われているが、これに代わるエネルギーをどのように得ればよいか。この為に今、我々は何をすべきか。一方、これからは如何にビッグデータを活用するビジネスに変わっていくかを検討することが大切である。今、行っている方法のどこをデジタル化するかではなく、全てデジタル化する前提で変えていかなければならない。デジタル化では、これまでに経験したことがないことへ如何に品質、安全性を確保すればよいか。
例えば、Smart Constructionにおいて、ダンプトラックの無人化を行ったとき、現在のGPSは精度が高く、同じ所に轍が出来てしまう。ここだけ寿命を長くするか、乱数で走行路を考えるのか。”など数々の言葉が心に残る講演がなされた。

 2日目は(株)ローランド・ベルガー 日本法人会長 遠藤功氏の基調講演、4名の企業トップの方々の講演ののち、参加者は7班に分かれ、それぞれのテーマでグループ討論が行われた。

[基調講演]現場力と経営者の役割/
遠藤功氏((株)ローランド・ベルガー 日本法人会長)
[講演1]顧客価値創造に貢献できる組織能力の強化/
市川周作氏(アイホン(株) 代表取締役社長)
[講演2]アイシングループにおける「品質至上」の実践/
藤江直文氏(アイシン精機(株)シニア・エグゼクティブ・アドバイザー)
[講演3]魅力的商品開発による企業価値提供を持続する開発人材の育成/
津田純嗣氏((株)安川電機 代表取締役会長)
[講演4]デジタルトランスフォーメーション−新しい価値の創造−/
山名昌衛氏(コニカミノルタ(株) 代表執行役社長 兼 CEO)

 中でも、講演4の山名昌衛氏からは、フィルムに引き続き、デジタルカメラの世界市場規模が衰退化していく中、全従業員の危機感の共有がドライビングフォースとなり、生き残りをかけたデジタルトランスフォーメーションへの取り組みが紹介された。

・これまで培ってきた光学技術と画像技術と微細加工技術のコア技術
・これまでの200万社(海外81%売上)における複写機利用顧客、セールスサービス体制150ヶ国の資産
の利活用に向け対売上高比8%の研究費を投資し、Valueのイノベーションによる持続的成長と社会課題解決へ向けた2017年〜19年の3カ年の中期経営計画の紹介がなされた。

 3日目は各グループ討論のリーダーからの発表と総合討論がなされた。総合討論では、顧客価値創造(CVC)への部門間連携のあり方、顧客との連携のあり方、そして、このための組織と人材育成のあるべき姿が討論された。中でも、生産技術者にとって、顧客の現物をみる視点、プロアクティブな声、サービス部門が獲得しうる顧客からの信頼が重要であること、またCVCへは従来の顧客―営業―企画―開発…と続くQAステップを意識したデータサイエンティストの人材育成のあり方が論ぜられた。

 次回108回QCSは、(株)安川電機 会長 津田純嗣組織委員が主担当となり、“産業競争力の更なる向上を狙った品質経営活動の強化〜IoT時代におけるホワイトカラーの生産性向上に向けた品質経営活動のあり方〜”なるテーマにより、2019年5月30日〜6月1日に大磯プリンスホテルにて行われる。

 是非一人でも多くの会社役員、部門長ならびに学術関係者の参加を期待する。


私の提言
現代の品質管理のあり方

慶應義塾大学 鈴木 秀男

 現在、多くの企業において、AI、IoT、ビッグデータの活用、モノ造りからコトづくりへの事業構造の変化対応などが求められており、重点課題となっています。一方、経営者を中心に、相対的に品質に対する意識や関心が低く、品質関連の不祥事が生じる一要因になっていると感じています。
 品質管理に関わる者としては、当然のことながら、どの時代においても、品質管理はなくてはならない取り組みであり、変革が必要な難しい状況こそ、利用価値が高く、さらに品質管理そのものが飛躍するための大きなチャンスであると考えています。品質管理では、統計手法の活用を中心に、科学的・論理的な思考に基づく問題発見・解決を実施していく文化が浸透しています。そのため、ビッグデータ分析やデータサイエンスでの目的や考え方は、既に確立・実行されていることばかりです。ITやデジタル情報の扱い方のスキルを向上させ、さらに、目的指向のもとで、統計的手法と同様に機械学習などを貪欲に取り入れていくことで、効果的な品質改善や管理、顧客価値創造ための仕組みができるはずです。
 品質管理で培ってきた問題発見や解決のノウハウ自体が、AI、IoTによる構造変化への対応に貢献できます。TQM活動により、全組織一丸となって取り組む、あるいは、QCサークル活動(小集団改善活動)のテーマとして取り上げていくことで、効果的・効率的に対応することが期待されます。なお、品質管理の非製造分野(事務・販売・サービス・医療・福祉・農業など)への展開や活動の活性度についても十分とは言えず、今後の課題です。
 人間尊重、チームワークを重視する品質管理の活動は、人材育成にも効果を発揮します。一方で、働き方、雇用形態、個々の価値観の変化への対応も必要です。例えば、QCサークル活動(小集団改善活動)において、SNSなどの機能を導入することで、現代の若者の感性にマッチした活動を展開することも有効です。このような変化対応は、非製造分野における品質管理活動の展開・活性化のためのキーポイントにもなるように感じております。
 普遍的な価値を維持しながら、時代の要請に応えられる先進的な品質管理のあり方を考えて実践していきましょう。


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