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JSQCニューズ 2017年11月 No.360

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■トピックス:JAS法改正と期待される効果
■私の提言:学会参加のすすめ
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トピックス
JAS法改正と期待される効果

東京都農林総合研究センター 食品技術センター 佐藤 健

1.はじめに
 食のグローバル化が加速している状況のもと、国内の食品製造関連事業者等では海外展開が重要な課題となっています。食文化や商慣行が異なる海外市場において規格や認証を活用することが、日本産の飲食料品に馴染みのない取引相手にその品質や特色、事業者の技術や取組みなどの「強み」をアピールする重要かつ有効な手法のひとつとなります。我が国における飲食料品の規格として日本農林規格(JAS規格)があり、農林物資の規格化等に関する法律(JAS法)で定められています。平成29年6月16日には取引の円滑化と輸出力の強化に資するために改正JAS法が成立、6月23日付けで公布されました。

2.改正のポイント
 改正前のJAS法は、飲食料品などモノの「品質」を対象としていました。今回の改正では対象が拡大され、モノの「生産方法」(プロセス)、「取扱方法」(サービス等)、「試験方法」などが対象に含まれました。これに伴い、広告や試験成績書等にJASマークを表示することができるなど、JASマークの表示に関する新たな仕組みが導入されています。あわせて、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)が国際規格の認証機関を認定できるようになり、国内事業者が国際規格の認証を取得しやすくするための環境整備がなされました。法律の名称も「日本農林規格等に関する法律」に改称されています。

3.改正で期待される効果
 我が国には、その土地の文化とも呼べる伝統的な飲食料品が根付いている地域や地方が数多くあります。和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことが示しているように、日本の食文化はワールドワイドに注目を集めており、我が国の飲食料品は“ブランド化している”と言っても過言ではありません。このような背景から、我が国の飲食料品の“類似品”が数多く出回っています。これら類似品の品質は様々であり、品質の劣る品物が少なからずあります。日本産品の“ブランド性”を守りつつ、取引を円滑に進め、輸出力を強化していくためには、本物と類似品を明確に区別する仕組みを構築する必要があります。“さぬきうどん”を用いて改正ポイントのひとつである生産方法への対象拡大に関して説明します(図参照)。

 「生めん類の表示に関する公正競争規約施行規則別表」には、“さぬきうどん”と表示する場合の基準が定められています。仮にこの基準が“さぬきうどんの生産方法”に関するJAS規格と設定されたとします。生産方法が限定されることから、規格品と類似品の区別が容易となります。これにより、この規格から逸脱して製造された製品は“規格品のさぬきうどん”として流通できなくなります。以上から、この生産方法による“さぬきうどん”は、流通に“有利な立場”となる効果が得られると期待されます。

4.おわりに
 日本産の飲食料品について国際市場における取引の円滑化と輸出力の強化を図るためには、規格を含めたシステムをいかに有効に機能させることができるかが鍵となります。そのためには、JAS規格に対して国際市場の信頼を獲得することやJASマークそのものがその信頼の“証”であると国際市場に認識させることなど、戦略的かつ積極的にJAS規格の国際化を推進する必要があります。

 


私の提言
学会参加のすすめ

千寿製薬(株) 榊 秀之

 今年5月の臨時総会で会員規定が改定され、正会員の区分として「シニア」と「永世シニア」が設けられたとのことです。永きに亘り学会に貢献されてきた先輩方には、今後とも温かく、ときに厳しく活動を見守っていただくことをお願いするところです。
 多い時に3千人を超えていた正会員は昨年9月に2千人を割り、今年7月時点では1940人となっています。会員数の減少は食い止めたい数字ではありますが、ここでは、「産」の立場で学会参加について考えてみたいと思います。
 専門分野について外の世界と接点を持ち、技術を競い諸問題について語ることは意義深いことです。自分の存在が社外でも認められることは、特に「産」の立場で仕事をする技術者にとって動機づけになると感じています。一方で製品を出すことが第一義的に求められるため、目先の成果を求めざるを得ない現実もあります。また経費削減の面で育成経費が対象になりやすいことも否定できません。
 その状況で学会活動に対する匙加減には日々悩まされてきました。学会とのかかわりに短期的な成果を求めることはできませんが、学会活動の利点に目を向け、特に若い技術者には機会を与えたいと思っています。昨今の品質にまつわる不祥事を鑑み、日本品質管理学会を通して社外の方々と品質問題を語り合うことは世代を問わず必要なことと感じています。
 私の所属する関西支部では、実用的な問題解決法に関する研究テーマを2つ有し、また研究発表会では企業からの発表を促す事例セッションや学生発表者の表彰制度を導入し、若い会員にも活躍の場を提供してきました。発案者の黒木学氏(現、横浜国立大)は論文誌編集委員長として優秀発表賞と投稿区分の新設により、学会のさらなる活性化を目指されています。私自身、支部イベントを振り返るとき、参加者数につい目が行きがちですが、年齢区分などにも目を向けるべきだったと自戒するところです。
 若い技術者に多く学会に参加していただきたいと願って、雑感を述べさせていただきました。支部活動の一端を担う者として、微力ながら尽力したいと思います。


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