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JSQCニューズ 2017年3月 No.355

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■トピックス: パリ協定発効と環境マネジメント
■私の提言: 原理原則について
・PDF版はこちらをクリックしてください →news355.pdf

トピックス
パリ協定発効と環境マネジメント

東京情報大学 名誉教授 岡本 眞一

1.はじめに
 2015年11月のCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)において、パリ協定(Paris Agreement)が採択されました。当初、発効は遅くなるであろうと予想されていましたが、アメリカと中国が締結したことにより発効要件を満たし、パリ協定が発効しました。そして、昨年11月15−18日にCOP22に合わせて、第1回パリ協定締約国会合(CMA1)が開催されました。わが国がパリ協定を締結したのは、CMA1開催の一週間前でした。

2.パリ協定とは
 国連気候変動枠組条約とは、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目的とした国際条約です。この条約は、今後の温暖化防止の枠組みを定めたもので、いわば、環境方針のようなものです。具体的な目標などは、この条約に加盟した国が集まって、これから決めようということです。これが締約国会議(COP)です。そして、第3回会議で決定された文書が京都議定書であり、第21回会議で決まった文書がパリ協定です。京都議定書では、中国やインドを含む開発途上国には温室効果ガス削減義務がなく、最大の排出国(現在は2位)のアメリカが離脱したことから、その実効性が問われることになりました。そのため、今回のパリ協定では、様々な工夫がされています。パリ協定と京都議定書の特徴を簡単に比較すれば、表のようになります。京都議定書では、クリーン開発メカニズム(CDM)などの市場原理に基づくインセンティブが重視されていました。しかし、今回のパリ協定では、その仕組みは引き継がれていますが、扱いは小さくなっています。

 

表  京都議定書とパリ協定の比較

具体的な目標
を定めた文書
京都議定書 パリ協定
決定された会合 COP3 COP21
温室効果ガス
の削減義務
先進国は6〜8%の削減義務
を負う。
すべての国は自ら定めた目標
の達成に努める。
特徴 市場メカニズム(排出量取引
など)を重視する。
PDCAを重視する。5年ごとの
レビュー、進捗管理を行う。

 今回のパリ協定では、開発途上国においても、強制されてはいませんが、すべての国が削減目標を掲げることができます。このため、先進国の援助によるこれらの国での温室効果ガス削減の成果をどのように配分するかという問題を解決する必要があります。また、開発途上国に対する資金援助に関する事項も含まれていますが、具体化に向けた取り組みもこれからの課題です。

3.わが国の対応
 COP19での決定により締約国は2020年以降の温室効果ガス削減目標案を提出することになっており、2015年12月現在すべての先進国を含む188の国と地域がこれを提出しています。わが国は「2030年度に2013年対比で26%削減する」と報告しています。
 日本経済新聞社がまとめ、1月23日付け朝刊で発表した第20回環境経営度調査の結果でも、各社が積極的に温室効果ガスの削減に努めている様子がよくわかります。昨年5月に閣議決定された地球温暖化対策の基本方針(2030年までに26%削減)に対応した産業部門での6.5%削減目標を大幅に上回る14.4%の削減を達成しています。特に、業種別にみると、自動車・自動車部品、機械などの健闘が目立ちます。ここで、わが国にとって最大の懸念は遅れている電力部門での進捗管理であろうと思われています。

4.パリ協定発効と環境マネジメント
 パリ協定では、各国の削減目標は自ら決めることになっており、最終的には地球全体での温度上昇を2℃以内(なるべく1.5°以内)に抑えることとしています。この方針を実現するために、それぞれの国で適切にPDCAを回して、対策に遅れが生じるようであれば、適切な見直しが迫られることになります。その意味でも、温暖化防止対策においても、ISO規格が要求しているようなマネジメントシステムが求められているともいえます。

 


私の提言
原理原則について

筑波大学 ビジネスサイエンス系 木野 泰伸

 「原理原則に従って考える」、これは、日本の製造業を定年退職し、新興国企業の工場で改善活動を指導している、ある技術者の方がよく使われている言葉である。通訳をされている方が教えてくれた言葉で、考えてみれば、筆者も心の中で似た言葉をよくつぶやいている。
 品質改善活動の指導をしている人たちの悩みの一つに、活動がなかなか定着しない、ということがある。指導している内容は秘伝ではなく、学会や書籍を通じて一般に広く知られているものである。定着しない理由はいくつか考えられる。トップマネジメントの意識が希薄である場合や、形だけとりつくろった場合などがその例である。
 現場は、人、設備、作り出す製品などがそれぞれ異なっていて、同じであることはない。従って、ある工場で行っている改善活動をそのまま移転しても、なかなか上手くいかない。このことから、指導者は、単に表面上の形を指導するのではなく、その本質を伝えようとする。一方、指導される側は、まず形から入る。うまくいっている企業や現場のやり方を知りたいと考え、模倣することから始める。模倣は学習における重要なファーストステップであり、それ自体が悪いことではない。
 しかし、その段階で終了してしまうと、活動は発展しない。品質改善活動を組織に定着させていくためには、他の事例を参考にするだけでなく、なぜそのようになっているのか、その奥にある理由や構造を考え、自分たちの環境に合わせて再設計していく力が必要になる。そこでつい出てくる言葉が「原理原則に従って考える」である。
 筆者にとって、この言葉は分かりやすいが、一方で、自分が授業の中で原理原則とは何かを説明し、受講生に伝えられているのかと考えた場合、自信が持てない。また、最初に紹介した技術者の方が言われている原理原則と、私の考えている原理原則は同じものなのだろうか。改善活動における原理原則とは、何を指していて、どのように教えればよいのか、現在の筆者では明確に答えることができない。幸い日本品質管理学会には、多くの実績ある諸先輩方がおられる。そこで、今一度、原理原則について、どのような考えを持っておられるかをお伺いし、将来、品質管理を学ぶ人たちの参考にしていきたいと考えている。


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