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JSQCニューズ 2016年8月 No.350

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■トピックス: EOQ 60周年記念大会に参加して 狩野紀昭元会長がEOQ George Borel Awardを受賞!
■私の提言: 製品・サービスの信頼
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トピックス
EOQ 60周年記念大会に参加して
狩野紀昭元会長がEOQ George Borel Awardを受賞!

日本科学技術連盟 専務理事 小大塚 一郎

 去る6月1日(水)〜2日(木)の2日間、フィンランドのヘルシンキにてEOQ(ヨーロッパ品質機構)60周年記念大会が開催された。EOQ大会は毎年6月に開催しているが、今年のヘルシンキ大会は約400名の参加があった。

  ご存知の方も多いと思うが、ASQ(アメリカ品質協会)とJUSE(日科技連)は1946年に創立され、今年で70周年、その10年後の1956年にはEOQが創立、今年で60周年を迎える、という、いずれも3団体は区切り良い創立年となっている。ASQは個人会員が中心となって構成されていることに対し、EOQは欧州の各国の品質管理団体(約40ヵ国)で構成されている。
 大会前夜のEOQ Presidential Meetingには、欧州各国の品質管理団体のPresidentクラスが集結していた。欧州以外にも、特別にアメリカのASQ、日本のJUSE、中国のCAQ(中国質量協会)の代表者も招待されていた。プログラムの最初にEOQのGeorge Georgiades会長が歓迎の挨拶を述べた後、EOQ設立当初からの活動を映像で振り返りながら、紹介されていった。その後、主要各国の代表者が60周年を祝って挨拶を述べていった。


 そして、プログラムの最後に、EOQ George Borel Award 2016 授賞式が行われた。この、EOQ George Borel Awardは、ヨーロッパの品質管理界では“最高の賞”として位置付けられている。賞はInternational、Governmental、 Europeanの3分野に分かれており、それぞれの分野の今年度の受賞者は、Dr. Noriaki Kano(狩野紀昭)、Mr. Charles Corrie 、Mr. Viktor Seitschek であった。
 EOQのホームページに記載されている狩野元会長の授賞理由について主要な点を抜粋すると次のとおりである。
 「世界中で広く用いられている魅力品質理論(Kano Model)の創始者であることに加えて課題達成QCストーリー、日常管理、TQMの館の創始者でもある。また、アジア品質ネットワークの創設者の一人であり、その名誉会長に指名されている。デンマーク、フィンランド、フランス、英国を含むヨーロッパの国々で、欧州品質機構(EOQ)、国際品質アカデミー(IAQ)、Aarhus School of Business(デンマーク)を含む諸々の組織で、大会講演者、客員教授、セミナーリーダー、およびコンサルタントとして、多大な貢献をした。」
 文字通り品質管理の分野で世界的レベルで顕著な功績を残し、ヨーロッパの品質ムーブメントの発展にも多大な貢献をされてきたことが、高く評価されたものである。心からお祝いを申し上げる次第である。なお、同賞は、日本からは司馬正次氏(筑波大学名誉教授)が2005年に受賞されている。
 また、英国のMr. Charles Corrieは、長年ISO関係の事務局として貢献されてきたこと、また、オーストリアQC協会の会長であるMr. Viktor Seitschekは、長年欧州における品質管理の普及に貢献してきたことで高く評価されてきたものである。


 翌大会初日は、フィンランド国のTarja Malonen元首相が歓迎の挨拶をされた後、EOQ会長のGeorge Georgiadesの開催挨拶があった。その後フィンランド国立バレエ団の理事であるKenneth Greeve氏と司会者とのインタビューセッション、フィンランドアイスホッケーチームのJukka Jalonenコーチの基調講演があった。いずれも、それぞれの分野での指導、育成に当たっていかに人材育成が重要であるかの講演であった。午前中の最後の基調講演は狩野元会長が、“ Integrated Procedure for Quality Improvement“のテーマで講演された。経営者対象というより、今回の会議の参加者に合わせた講演で、日本のTQM、現場のQCサークル活動の改善、6シグマとの比較等を交えた実務的な講演であり、好評であった。また、一般発表、ポスターセッションについては、日本からは、加藤省吾氏(国立成育医療センター)、下野僚子氏(東京大学)の発表があった。
 なお、今回、国連と世界貿易機構(WTO)傘下の国際機関である国際貿易センター(ITC)と日科技連が創設団体の一つとなっている世界品質同盟(WAQ)が、主に途上国の中小企業支援のためのフレームワーク「世界品質プラットフォーム(Global Platform for Quality)」構築のために相互協力していくことで合意したことも合わせて報告しておきたい。この合意については、会議期間中の6月1日にITCと世界品質4団体で署名式典を行った。

 


私の提言
製品・サービスの信頼

積水化学工業株式会社 新木 純

 2015年10月、建築物の工事に関わる疑惑が発覚した。横浜市のマンションで隣り合う2棟の建物のジョイント部に約2cmの段差があることが明らかになった。原因調査の過程で、基礎杭が支持層に到達していない可能性があることが明らかになり、到達を裏付ける筈のデータの流用が確認された。この物件の請負会社以外でも不正が判明した。杭打ち工事は下請けが担う場合が大半だが、元請けへの報告は、全体の杭打ち終了後に一括して報告することが常態化していた。現場責任者が杭打ち工事の途中で一部のデータ紙を失い、他データを流用して体裁を整え、報告していたとされている。
 品質保証に関する重要な原則として、“事実に基づく管理(Fact Control)”がある。経験や勘に頼るのではなく、データや事実に基づいて管理するという行動原則であり、原則を実践する上で、適切に「統計的手法」を活用することが重要となる。しかし、全ては“事実が正しい”ことが前提である。今回のように“事実に基づかない”データの流用は、品質保証の枠を越えた忌々しき問題である。
 今回の問題で国土交通省の有識者委員会委員長は「問題は当事者の意識がしっかりしたモノ作りを離れ、データの体裁を整えることに変わってしまったことだ」と指摘した。本質的な問題は、杭をしっかり支持層に届かせ、建物の安全性を確保するという目的を忘れ、書類の体裁を整えることを目的化してしまったことだ。
 企業社会では、過当競争や能力主義などの重圧によって、道を踏み外すような事態はいつでも起こりうるという認識を持つことが重要である。また、従事者の意識・意欲・モチベーションの維持・向上が図れているか、役割や責任に見合った処遇となっているのか等の認識も忘れてはならない。製品・サービスの信頼は、従事者の安心・安定と深く関係がある。
 これらの問題は、他業界も対岸の火事でない。2016年4月、軽自動車メーカーによる意図的な品質関連データの改ざんが発覚した。当学会は直ちに、理事会の総意に基づき、強い抗議の意を緊急メッセージとして発信した。その意義は非常に大きいと思う。


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