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JSQCニューズ 2016年6月 No.349

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■トピックス:JIS Q9026「日常管理の指針」が5月20日に公示
■私の提言:コミュニケーション・マネジメントの勧め
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トピックス
JIS Q9026「日常管理の指針」が5月20日に公示

標準委員会 住本 守

 品質管理学会が提案した「日常管理の指針」のJIS原案が、2016年3月19日に開催された日本工業標準調査会の適合性評価・管理システム規格専門員会で承認され、5月20日にJIS Q9026 「日常管理の指針」として公示されました。JSQC規格が初めてJIS化されたことになります。JIS Q9026「日常管理の指針」は、日常管理の基本的考え方、日常管理の進め方及び日常管理の組織的な推進の指針をまとめたもので、あらゆる組織に適用できる規格となっています。

 「日常管理の指針」のJIS原案は、 2013年5月22日に制定したJSQC-Std 32-001 「日常管理の指針」をJISの規格様式に従い編集し直したものです。JIS Q9026は基本的にJSQC-Std 32-001と同じですが、推奨事項をより簡潔に示している、“総合的品質管理における日常管理の役割”や“日常管理の基本概念”などの解説を多く含む部分を付属書に移しているなどの点でJSQC- Std32-001と異なっています。

 ねらい通りの製品・サービスを経済的に生み出すため、プロセスを定めそれに従って仕事をすることが一般化していますが、プロセスを定めてもそのとおり実施されないことによる問題が多発しています。日常管理は、定めたプロセスが期待通りの効果を発揮するための基本となる活動であり、組織経営の根幹をなす活動の一つです。標準委員会は、日常管理のより多くの組織への普及を目指し、JSQC-Std 32-001「日常管理の指針」の制定と同時に、同規格のJIS化に取り組んできました。JIS Q9026及びJSQC-Std 32-001の普及が進み、 多くの組織で日常管理が確実に実施され、より良い品質の製品・サービスに繋がることを期待しています。また、JIS Q9026「日常管理の指針」の制定がきっかけとなり、より多くの組織で質の高い品質活動の指針としてJSQC規格の活用が進めばと願っております。

 JSQC規格は、品質管理学会が蓄積してきた知見に、企業が独自に獲得した知見を加えた現時点でのベストプラクティスを体系化した内容となっています。このため、規格制定には多くの方々のご協力をお願いしております。「日常管理の指針」の制定に関しても、JSQC規格原案作成、 規格審議及びJIS化原案作成には、産業界を代表する多くの方々に御協力いただきました。厚くお礼申し上げます。

 標準委員会は、品質管理の普及を目的に、品質/質に関わる事項に関する標準化を推進し、その成果の一つとして日本品質管理学会規格JSQC-Stdを制定してきました。今般、初めてJSQC規格のJIS化を達成しましたが、引き続き標準化活動を強化してまいります。

 これまでに制定したJSQC規格は、 JSQC-Std 00-001「品質管理用語」、 JSQC-Std 32-001「日常管理の指針」、 JSQC-Std 31-001「小集団改善活動の指針」、JSQC-Std 21-001「プロセス保証の指針」、JSQC-Std 89-001「公的統計調査のプロセス−指針と要求事項」、JSQC-Std 33-001「方針管理の指針」の6規格です。現在、「品質管理教育の指針」の原案作成に取り組んでいます。加えて、「新製品開発管理の指針」の原案作成を本年秋頃から開始できるよう、準備しているところです。
 また、制定済みのJSQC規格のJIS化についても積極的に推進してまいります。昨年12月に制定したJSQC-Std 21-001「プロセス保証の指針」のJIS化の申請手続を終えたところです。そのほか、本年5月17日に制定したJSQC-Std 33-001「方針管理の指針」は、現行JIS Q9023「マネジメントシステムのパフォーマンス改善−方針によるマネジメントの指針」の改定規格案として、JIS化の提案を行う予定です。

 


私の提言
コミュニケーション・マネジメントの勧め

駿河台大学 経済経営学部 海老根 敦子

 コミュニケーションの重要性が各方面で再認識されていますが、いざその言葉の意味を問うと、解釈は人様々なようです。そこで語源を辿ると、ラテン語で《共に持つ》という意味なので、現代語の意味は、人々の間で理解を共有すること、またはそのための情報交換と解釈できるでしょう。これを企業経営に当てはめると、企業組織の構成員の間で、企業の目的に照らして業務上必要不可欠な理解を共有すること、またはそのための情報伝達と情報処理の活動ということになります。
 製造企業の場合、利潤の源泉である製品品質の創造を支えるコミュニケーションは、国内外の広大かつ長時間の時空に展開する複雑な活動です。企業組織を人体に例えれば、組織のコミュニケーションは体内を循環する血流です。組織の各所に必要な情報を供給し、各構成員の共通理解の水準を所定の水準に保ちます。そのために、人体でいえば、血液循環を制御する中枢神経系が必要になります。弱った組織では、 自然に放っておいても望ましいコミュニケーションは生まれません。誰かが意識的に組織のコミュニケーションをマネジメントする必要があります。
 連日のように報じられる日本企業の相次ぐ誤魔化し事件は、日本の産業の危機を物語っています。筆者が解析した世界的ハイパフォーマンス製造企業の大規模実態調査では、対顧客コミュニケーションが日本企業だけ著しく弱い傾向が現れています。《顧客に向き合う経営》、《何でも言える風通しの良い社内風土》など、口ではいいことを言っているのに、なぜ実行できないのでしょうか。うまくいっていない企業では、具合の悪い現場の情報が阿吽の呼吸で上に上がらないようになっています。経営トップが過去の高度成長期に経験した輝かしい現場が、今は活力を失っていてもそれを知らされていない経営トップは、架空の延長線を思い描いています。その理想と現実の落差が誤魔化しを生むのでしょうか。多くの組織には円滑なコミュニケーションを阻む局所的な利権構造があります。ですから、コミュニケーションをマネジメントするというのは、決して生やさしいことではありません。しかし、 人口1億2千万余の国家を外国人の爆買いで支えることはできません。今こそ産業再生に向けて、製造業に携わる一人一人の覚悟が問われています。


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