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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2016年2月 No.346

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■トピックス:第五期科学技術基本計画と日本品質管理学会
■私の提言:ダイバーシティ・インクルージョン
・PDF版はこちらをクリックしてください →news346.pdf

トピックス
第五期科学技術基本計画と日本品質管理学会

副会長/地圏環境テクノロジー 末岡 徹

1.はじめに
 2015年12月18日、総合科学技術・イノベーション会議(議長:安部晋三首相)は「科学技術基本計画」に対する答申を行い、1月22日閣議決定しました。本計画の中では、まず日本の目ざすべき姿として、
 1. 持続的な成長と地域社会の自律的発展
 2. 国及び国民の安全・安心の確保と豊かで質の高い生活の実現
 3. 地球規模課題への対応と世界発展への貢献
 4. 知の資産の持続的創出
と定めています。そしてこれらの項目を具現化・実現化するためには、以下で述べる領域への取り組みが最も重要であり、今後5年間で約26兆円をかけ積極的に進めるとされています。ここでは、2016年度から始まる第五期科学技術基本計画について品質の観点および日本品質管理学会(以下JSQC)の立場から検討してみます。

2.第五期科学技術基本計画の重点領域
 基本計画では、ICTの進化等により「大変革時代」が現在到来しているという基本認識の下、世界に先がけて「超スマート社会の実現」(Society 5.0)を目ざすとされています。すなわち未来の産業創造・社会変革に向けた新たな価値創出の取り組みとして、人類がたどってきた4つの社会(狩猟、農耕、工業、情報)の先に年齢、性別、地域、言語等の違いを越えて多種・多様な質の高いサービスが受けられる社会の実現を図るとのことです。具体的には、先行して11の分野の科学技術イノベーションを行い、社会変革を図り未来社会を切り拓くとのことです。中でも、新たな物づくりシステム、おもてなしシステム、スマートフードチェーンシステム、スマート生産システム等の分野は、まさに品質という観点から扱うべき分野と考えられ、今回の基本計画の中にはJSQCが関与すべき活動領域が、実に数多く含まれています。

3.第五期科学技術基本計画と品質
 基本計画では、超スマート社会の実現を目ざすには、まず一連の取り組みである「Society 5.0」の深化が必要とされています。奇しくも2014年11月大久保尚武前会長が会長就任時に掲げられたキーワードである「シンカ」が重要語として使われているのです。今回、新木理事に基本計画案中のJSQCに関連するキーワードを検索していただき、その数を調べると、品質(3)、質(29)、サービス(53)、標準(26)、安全(42)、データ(50)となっていました。このキーワードの出現傾向は、従来の製造業だけでなく、今後は食料、農業、医療、サービス産業など新規分野の質・品質も重視していこう、という椿広計会長以下JSQC理事会が推進している学会中長期計画の方向性とも一致しており、まさに学会にとってチャンス到来です。

4.日本品質管理学会の最近の動き
 現在、JSQCはさまざまな活動を行っていますが、その中で横断型基幹科学技術研究団体連合(横幹連合)と情報交換を行い、第五期科学技術基本計画の実現に向けてシナジーを高めていこうと考えています。またJSQCは、2018年までに日本科学技術連盟、日本規格協会と質・品質に関するアンブレラ中核組織(JAQ)を構成し、今後日本におけるQualityに関する総合的・俯瞰的活動の一角を担おうと考えています。さらにJSQCは、学会中期計画で高等教育研究機関における品質管理活動を支える研究者・専門家育成を謳っており、東京大学や滋賀大学などにこの分野の拠点を形成すべく努力しています。JSQCは会員の皆様と共に今回の第五期科学技術基本計画をチャンスと捉え、その活動をさらに活発化させていきます。会員の皆様の御協力・ご支援よろしくお願いいたします。

内閣府・科学技術基本計画URL
http://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/index5.html


私の提言
ダイバーシティ・インクルージョン

 
前田建設工業株式会社 新倉 健一

 “Made in Japan”は「高品質」「安全・安心」などのステイタスを得ている一方で、先人たちが長年に亘り築き上げてきた土台を揺るがす品質事故も後を絶たない。その背景には技術の空洞化が進み、品質に重大な影響を与えかねない事象を見逃してしまう問題が潜んでいるように思えてならない。「多忙ゆえに目が行き届かない」「分業化が進み全体が見えない」「人不足で経験が足りない」といった嘆きをメディアなどで目にするたびに、打開策を模索せずにはいられない。
 目指すべきは、視野をより広く、技量をより深めて、社会が求める価値を具現化し錬成していく姿である。目前の仕事はクオリティを落とさず、より短時間で終わらせて、自己研鑽や社会との交流に注力する。そして新たに得た学びや情報を業務に活かすスパイラルこそ、「当たり前品質」の堅持と「魅力的品質」の創造に結実する王道であろう。
 奇しくも現在、「ダイバーシティ」が日本の産業界に浸透しつつある。「女性活躍推進」や「ワークライフバランス」はその一部でしかなく、多様な個の力を受容し、相互啓発・相互研鑽により組織力に導くことが本質であると個人的には受け止めている。その要諦が時間を有効に活用するための「タイムマネジメント」であり、改善のターゲットとする業務がなぜ必要かの分析を進めると、目的志向に磨きがかかり、使命感、さらには顧客視点のマインドに帰結すると確信している。
 日本品質管理学会には、ダイバーシティ推進の土壌が育まれている。異なる分野から志を共にする人財が集い、「他流試合」に日々取り組んでいる。強みとすべきは、日本的品質管理の源泉である「職場第一線のビジネスパーソンが自ら学び、自ら改善する」DNAであろう。未来に向け期待すること、それは「他流試合の輪を拡げ、交流の密度を深めること」に尽きる。将来に亘り「ジャパン・ブランド」が社会に信頼を与え続けるために、日本品質管理学会がその原動力として躍動し続ける存在になることを願ってやまない。


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