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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2015年9月 No.343

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■トピックス:JSQC規格のJIS化
■私の提言:日本のものづくり産業革命に期待
・PDF版はこちらをクリックしてください →news343.pdf

トピックス
JSQC規格のJIS化

JIS原案作成委員会・委員 中條 武志

 日本品質管理学会規格「日常管理の指針」のJIS化に取り組んでいます。

日本品質管理学会規格(JSQC規格)
 標準化委員会は、故吉澤正会長のリーダーシップのもと、1999年に設立されました。以降、a)ISO 9001等の規格の適用に関する研究の促進、b)基幹となる書籍・資料の発行や講習会の開催による継続的専門能力開発(CPD)の支援、c)JSQC規格の開発・発行などに取り組んできました。
 c)については、「品質管理用語」、「日常管理の指針」、「小集団改善活動の指針」の三つが発行済みで、「プロセス保証の指針」、「公的統計調査のプロセス−指針と要求事項」、「方針管理の指針」の三つが開発中です。また、「日常管理の指針」は、海外拠点で活用いただけるよう英訳版を発行しています。

JSQC規格のJIS
 様々な標準化の取り組みは、a)ISO、IECなどの国際標準化、b) 欧州規格などの地域標準化、c)JISなどの国家標準化、d)社内標準化、e)ASME、ULなどの団体標準化、f) MILなどの官公庁標準化に分けられます。
 JSQC規格は、e)の団体規格です。当該分野の専門団体が発行する規格ですので、品質管理を専門とする人達に認知されやすいという利点がある反面、一般の人にはその存在がわかりにくく、広く活用してもらいにくいという欠点があります。このような点を考慮し、a)〜f)の規格の間では、各々の規格の制定に当たって他の規格をそのまま採用したり、引用したりすることが活発に行われています。
 その意味では、日本品質管理学会としては、JSQC規格を国家規格、さらには国際規格へとして採用してもらえるよう働きかけていく必要があります。このような考えに基づいて現在進められているのが、JSQC-Std 32-001「日常管理の指針」のJIS化です。
 様々な産業分野で製品・サービスの提供にかかわる事故及びトラブルが発生しています。これらの原因を調べてみると、業務を安定して実施するための活動が適切に行われていなかったものが少なくありません。
 守るべきことを標準として定め、その通りに実施できるようにするとともに、異常に素早く気づき、応急処置・再発防止を確実に行えることが重要です。この「日常管理」の進め方をより広く知ってもらって活用してもらうことが目的です。

JIS化に当たっての課題
 JIS原案を作成するに当たっては、学会規格をそのまま採用することにしましたが、難しい点もありました。 最も問題となったのは、JIS規格では、要求事項や推奨事項のみを定めるという点です。品質管理の場合、要求事項や推奨事項の背後にある「考え方」を理解していないと適切に活用できないのですが、自由度のある学会規格と違ってJISの場合、考え方を規格に含めることが認められていないわけです。
 基本となる「考え方」について、全員が同じ認識を持っているのなら市販の教科書を読んでもらえばよいのですが、人によって認識が異なっています。全くばらばらで意見が合わなければやむを得ないのですが、多数の人が賛成できるのであれば標準化が可能です。
 このため、日常管理のJIS原案では、推奨事項のみを「本文」とし、大多数の賛成が得られた考え方の部分は「附属書(参考)」とすることにしました。また、意見が分かれた点については、「解説」に記しました。
 現在、原案が完成し、日本工業調査会による審議を待つばかりとなりました。日本品質管理学会として初のJIS規格の提案が成功し、より多くの人の役に立つことを心より願っています。
 JIS原案作成に当たっては、日本規格協会のJIS原案作成公募制度を使用いたしました。また、審議に当たっては、経済産業省、産業界、大学など、多くの方々のお力添えをいただきました。これらの各位に対して心から感謝の意を表したいと思います。


私の提言
日本のものづくり産業革命に期待

 
一般財団法人VCCI協会 小田 明

 最近、雑誌の記事で、“サイレントチェンジ”という用語を見かけ、気になった。サイレントチェンジとは、メーカの知らぬ間に、取引先の素材メーカなどに材料の組成を変えられてしまうことを指す。外部からは容易に差分が判断できず、かつ、その影響が顕在化するまでに時間を要するというものである。記事では、“安全に関わる大事な部品を、管理の及ばない海外で製造していいのか、考え直すべきだ。”や、“円安局面で製造の国内回帰も見えつつある今、改めてサプライチェーンを考え直す時期に来ている”とある。サプライチェーンが国内メーカに閉じていた時代は、サプライチェーンの端から端まで、最終製品での部品の使われ方まで意識し、かつ、日本の得意とする現場力を活かし不具合発生の未然防止活動が十分に機能することによって、製品の高品質化を維持し、結果として、日本がものづくり大国として世界をリードできていた時代だったと考える。一方、サプライチェーンがグローバル化し、その階層が深くなってきた昨今、サプライチェーンの末端での不具合ポテンシャルを、如何にして摘出し未然防止するのかは、大きな課題の一つである。
 ところで、これからは、経営・物流・販売と製造現場が密に繋がる第4次ものづくり産業革命の時代が到来するといわれている。このような時代では、センサやコントロールなどの技術を利用することにより、サプライチェーンがグローバル化し、その階層が深くなってきても、不具合ポテンシャルを容易に摘出でき、品質が維持できるシステムが実現できるのではないかという考え方もある。一方、人間が介在する現場にこそ、日本のものづくりの復活の鍵があるという考え方もある。
 新しい品質マネジメントシステムISO 9001:2015 が、まもなく発行される。これを機会に、第3次から第4次産業革命に切り替わる今をチャンスととらえ、サイレントチェンジに対する不良ポテンシャルを事前に摘出し、長期にわたり安心、安全な製品を作るシステムを実現し、世界中の顧客からの満足度が高まり、いわゆる、日本発のクオリティ4.0として発信され、日本のものづくりが再び復活することを期待したい。

 


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