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JSQCニューズ 2014年 12月 No.337

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■トピックス:第20回品質機能展開シンポジウムに参加して
■私の提言:“性弱説に基づく品質経営の実践”
・PDF版はこちらをクリックしてください →news337.pdf

トピックス
第20回品質機能展開シンポジウムに参加して

玉川大学 経営学部 永井 一志

 平成26年11月20日、21日の2日間にわたり、第20回品質機能展開シンポジウムが旧日科技連本部(千駄ヶ谷)にて開催された。20日に行われたチュートリアルセッションには約50名の参加者、21日のシンポジウムには120名の参加があった。品質管理の中でもかなり限定された分野のシンポジウムであるにもかかわらず、実に多くの参加者があったことからQFDに対する関心の高さをうかがうことができる。

 20日のチュートリアルは城西大学の木内正光氏による「QFD早わかり」と玉川大学の大藤正氏による「QFDの今までとこれから」というテーマで講演が行われた。前者は初学者にとって理解が難しいと思われる事項についてQFDの原理・原則を用いながら平易な解説が行われ、後者はQFDの歴史を踏まえながらQFDの考え方および今後のQFDに求められる事項が解説され、参加者はシンポジウムに向けての知識共有を行うことができた。

 21日のシンポジウムは表に示すように1件の特別講演と6件の講演が行われた。近年では非常に珍しくQFD実践事例の報告が中心であり、多くの参加者が関心を抱いたのではないかと考えている。6件の事例講演を聞いての私見であるが、全ての事例がQFDと他の管理技法を融合させながら問題解決を図っていることが共通していた。例えばQFDと多変量解析または実験計画法を融合させながら開発の知見を得る報告、非常に少ないメンバーでQFDに取り組む際の工夫に関する報告、VOC解析にテキストマイニングを用いてQFDと結合するアプローチ、QFDとTRIZおよび品質工学を活用した製品開発、データベース情報を利用しながらのQFDの検証方法、さらには信頼性手法とQFDの組み合わせによる品質確保の事例など、多岐にわたる事例が紹介された。

 QFDは二元表を用いながら開発情報を整理する方法論であると端的に表現できるが、情報を整理しただけでは問題および課題に対する解決策を得ることは難しい。つまり、他のツールを併用することが必要となるが、今回のシンポジウムではQFDが様々なツールと結合可能であることが示されており、ますますQFDの可能性を見出すことが可能であった。
 最後に、本年9月に開催されたQFDの国際シンポジウム(トルコ・イスタンブール)も第20回の節目を迎えており、今回の国内シンポジウムも偶然に20回目の開催であった。記念すべきシンポジウムが盛大に行われたことに喜びを感じると共に、企画委員の方々やシンポジウムの運営を行った事務局に感謝を申し上げたい。


私の提言
“性弱説に基づく品質経営の実践”

 
文化学園大学 光藤 義郎

 「人は弱き者」ゆえ自我の欲求に負けて過去の成功体験である「経済的成長をベースとした拡大戦略」を続けていくことを止められない。しかし、過去の成功体験を今後も続けていけるかどうかはかなり危うい時期に近付いている。地球資源の枯渇、環境問題、宗教や価値観の違いを元にした国家的紛争等々、更に日本では少子高齢化、産業空洞化、膨大な国の借金等々、過去の成長戦略で前提としていた条件が大きく様変わりしている。そういう中で、どうWin-Winモデルの構造に持ち込むかが「性弱説に基づく品質経営」の課題であると考えている。
 Win-Winモデルの構造としては、売手からの価値提供⇒買手が享受するメリット、即ち、顧客にとってのメリットを前面に出しながらも実はそれは自分たちの繁栄にもつながる、こういう構造を持つビジネスモデルを創造していくことがベースとなる。
 あらゆる面(心技体金)に余裕がある、或いは多くの欲求が満たされた状態にある場合を除き、善の心を持つ人ほど、ハムレットの心境(to be or not to be, that is a question)を味わうことになる。特に「品質とコスト」等トレードオフ的関係にある世界で、二者択一の意思決定を迫られると、この「ハムレットの世界」や「悪魔のささやき」が、上は経営者から下はパートのおばさんまで、ホンネレベルで悩むことになる。「まぁいいか」という心の弱さ、「大したことないのでは」という安易さ、「仕方ないもん」という逃げ、そういった心の動きによって品質(相手のメリットを優先する心)を犠牲にしてコスト(自らのメリットを優先する心)に走るケースは枚挙に遑がない。欲と煩悩の中で日々生活している人間にとって、これを理解するのは絶望的に難しい。人間の進化はまだ弱く、己のDNAに縛られ、古き脳に思考と行動を支配される生物としての域を出られていないからである。しかし、古い脳に支配された動物としての価値観ではなく、新しい脳によって形成される強靭で高尚な理想的価値観の元、正しいと信ずるTQMを愚直に推進していくことが本来進むべき道であり使命であると考えたい。品質経営がある種の理想追求であるなら、その取り組み方も日本人としての誇りを持った日本流の理想追求で行きたいものである。あの日本国憲法のように…。 


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