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JSQCニューズ 2011年 8月 No.310

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■トピックス:JSQC40周年記念シンポジウム「グローバリゼーションを見据えたモノづくりと人づくり」
■私の提言:こんな産学連携の架け橋もあるのでは?
・PDF版はこちらをクリックしてください →news310.pdf

トピックス
JSQC40周年記念シンポジウム「グローバリゼーションを見据えたモノづくりと人づくり」

40周年記念事業実行委員会委員長 椿 広計

 1970年に創設された(社)日本品質管理学会は皆様のご尽力により本年40周年を迎えました。
 第二次世界大戦での敗戦を契機に、我が国は産業立国の道を歩み、粗悪品の代名詞“安かろう悪かろう”の製品から、世界中の人々が尊敬する高品質製品を実現しました。その背景には、多くの先達の血のにじむような苦労があり、高品質実現のために産業界と学界とが連携し日本的品質管理を創生したのです。更にその理論と体系を追究するために設立された日本品質管理学会の意義を改めて考えなければなりません。この日本品質管理学会設立40周年を記念して「グローバリゼーションを見据えたモノづくり人づくり」と題した記念シンポジウムが開催されました。

 当学会40周年を記念するシンポジウムは、去る5月27日に電気通信大学の講堂で開催されました。
 基調講演者として、株式会社リコー代表取締役会長の桜井正光氏(JSQC35年度会長)にご登壇頂きました。
  東日本大震災で多くの国が日本を心配しているが、第二次世界大戦以降、日本はこのような災禍から起ち上がり再生を果たしてきたこと、今般の東日本大震災からの再生にはこれからの5年、10年をどう行動するかにかかっていることから中長期的なビジョンを持つべきとお話しされました。そのためには、経済同友会代表幹事時代の桜井氏が行った2020年日本再生への提言「若者がやる気と希望のもてる国」を実現し、国際社会に貢献して、信頼される日本を目指そうと結ばれました。
  続く特別講演1件目は「日中ビジネス体験談」として、中国から国費留学生で来日し、計算機科学や医学統計などを学んでいる中でイーピーエス株式会社を起業し、日中両国で活躍する厳浩社長が登壇されました。
  データマネジメントセンターとして躍進し、日本国内での事業だけではなく中国では医薬品事業にも進出している同社は、日本の大学とも連携し、新薬やヘルスケア産業向けのサービスを、日本と中国だけでなく、東南アジア諸国でも発展に向けて取組んでいます。クライアント指向、ビジネス指向、人間指向を行動指針に掲げ、日本と中国に橋を架けたいと力強い抱負を語られました。
  最後に、東京理科大学の狩野紀昭名誉教授(JSQC30,31年度会長)が登壇され「Japan vs Japanese」と題する特別講演が行われました。今直面している危機は単なる経済危機ではなく、“国家の危機”であり、政治、社会、文化、技術、品質管理の危機であること、我々の課題は“危機”を“機会”に変えることと強調されました。
  講演後、イーピーエスの厳社長、狩野名誉教授に、鈴木和幸JSQC会長、日立オートモティブシステムズ大沼邦彦社長(JSQC38年度会長)を加え、中條武志中央大学教授の司会で本シンポジウムのテーマに関し、パネルディスカッションが行われました。 
  大沼社長には、グローバル化に向けて先生役の社員を派遣していた第一段階から、現地社員を日本に長期受入れを行った生産現場での実作業を通じて、モノづくりの考え方、人材育成の在り方などを具体的に紹介頂きました。
  中條リーダーが整理された論点(1)グローバル化が進む中での現地国と日本の役割分担、(2)あるべき姿を実現する際の人・モノ・文化などのボトルネック、(3)日本の成長を支えた品質管理(TQM)のグローバル化での果たすべき役割、(4)そうしたことを実践する上で日本品質管理学会が果たすべきリーダーシップ、といった切り口で1時間半熱心に議論が展開されました。
 今回の記念シンポジウムはこれからの日本の進むべき方向性を提起したものであり、学会中期計画に反映し、更に次期坂根会長に実現の途を切り開いて頂ければと感じました。



私の提言
こんな産学連携の架け橋もあるのでは?

元 富士ゼロックス株式会社 立林 和夫

 タグチメソッドやSQCを研究し、社内に普及するという仕事柄、こうした手法の研究に関して、学会誌の掲載論文や研究発表会での発表には強い関心をもってきました。しかし、かなり以前から、最近の研究は本質的な研究が少なく、重箱の隅をつつくような小さな研究が多いとも感じてきました。
 R.A.フィッシャーの実験計画法、ネイマン&エゴン・ピアソンの生産者危険と消費者危険による抜き取り検査、田口玄一氏の線点図による交互作用の割り付け、累積法、ロバスト設計などに代表される、画期的な研究成果は頻繁には生まれないことはよく承知しています。また、先輩たちが研究課題を食いつぶし、残された研究領域が狭まっている現状には同情の念も感じています。しかし、それでも品質管理学会の若手研究者から、一世代を拓くような研究成果が出てほしいと期待しているのです。
 上に列挙したような研究課題は前記の人たちの天才的な能力から生まれたものではなく、現実問題で困っている企業人に応じたものでした。このことは、現場のニーズに触れ、現場の技術者とともに研究することの重要性を示しています。戦後間もなくの品質管理の先人たちは、企業に入り込んでそこで解決すべき課題を見つけ、企業の技術者とともに解決方法を考えてきたと聞いています。しかし、最近の大学院生を見ると、企業に入り込んでそこで新しい手法を研究するという機会が減っているように感じるのです。
 そこで私の提言ですが、企業の現場で困っていることを集約し、それを解決するための研究者を募る仕組みを日本品質管理学会の中に作ってはどうでしょうか。日本品質管理学会のホームページの相談室のようなQ&A方式ではなく、各企業から困っていることを募り、学会としてそれが新手法を必要とするものかどうかを整理し、若手の中から研究者を募集するという形を提案したいのです。
 また、そうした現場からの課題提案を解決する研究成果には、優秀論文のひとつを授与するという仕組みを作ってはどうかとも思うのです。
 とっぴな提案でしょうが、ぜひ一度検討していただきたいのです。


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