JSQC 社団法人日本品質管理学会
HOMEENGLISH 入会案内 お知らせ 記録・報告 定期刊行物 論文・記事募集 関連情報 リンク コミュニケーション・メーリングリスト
学会誌「品質」
JSQCニューズ
Copyright (c); 2001 JSQC

JSQCニューズ 2010年 5月 No.300

ニューズ・トピックスの一覧へ戻る
■トピックス:JSQC評論の定期的掲載とメールによる情報発信
■私の提言:マネジメント層の品質管理教育
・PDF版はこちらをクリックしてください →news300.pdf

■ トピックス
  JSQC評論の定期的掲載とメールによる情報発信

広報委員会 委員長 兼子 毅

様々な品質問題の社会問題化
  メールニュースや、Webページを良く眺めていらっしゃる会員はすでにご存知だと思うが、あるきっかけがあり、「JSQC評論」というコーナーを学会Webに新設した。私たちを取り巻く製品やサービスの品質は、長い時間を経て熟成され、世界的に見ても、日本で入手出来る製品やサービスの品質は極めて高いと言える。消費者としての私たちは、そのような状況がごく当たり前のこととして考えており、商品に貼付されているラベルに書かれていることを全て事実として受け入れている。
  その一方で、成熟した市場においては厳しい価格競争が繰り広げられ、労働単価や原料単価が安い海外の開発途上国で製造・加工された製品が大量に私たちの身の回りに存在する。それらの多くは、もちろん十分な品質管理の元で製造され、一定の品質を確保出来ているが、発注者側や消費者が想像もできないような不正やごまかしの事例もしばしばニュースに取り上げられている。国内に目を向けても、産地偽装や賞味期限のごまかしなど、品質だけでなく、倫理的にも重大な問題が散見される。
学会の社会的責任
  このような中で、日本で唯一の「品質管理」を標榜する学会として、なにか社会に発信すべきではないか、学会の社会的責任を果たすべきではないのか、という議論が、しばしば理事会でも行われてきた。しかし、常に問題となるのは、「学会として」の発言は事実上不可能で、「学会長たる個人として」あるいは「学会理事を務めている個人として」の意見表明しかできないのではないか、ということであった。
  また、特定の、社会的に大きな話題となった品質問題を取り上げて意見表明を行うことは、特定の企業などに対する誹謗中傷、あるいは名誉毀損になってしまうのではないか、ということも、常に議論の的であった。
  今回、極めて難しい決断ではあったが、特定の企業に対する非難や誹謗ではなく、その出来事から見えてくる、日本の品質管理、あるいは世界の品質管理に関わる問題点を指摘し、今後考えるべき方向、進むべき領域を社会に発信していくことは極めて重要である、という結論に達することができた。
定期的なJSQC評論のWeb掲載とコメントのメール配信
  今後も特定の事件を引き金にするのではなく、理事会などが中心となって、「このような問題について社会に発信すべきである」と考える事項について、定期的に社会に発信することを決めた。これは学会の「公式見解」ではなく、あくまでも執筆いただいた個人の見解である。しかしながら、そのような個人の見解を学会のWebページを通じて社会に発信した、という意味で責任を負うことになる。
  もちろん、ひとつの事項について、様々な見解があり得る。そこで、今回のJSQC評論でも、会員からの意見やコメントを募集した。公開後すぐに何通ものコメントをいただいた。それらに対する執筆者からのコメントもいただいている。これらのコメントは、公表されることを意図して送付されたものではなく、あくまでもWebに掲載された記事に対するコメントであり、著者が目にするものと了解していただいている、と判断している。理事会としては、会員からのコメント、及び回答をWebに掲載すべきかどうか議論し、当面はメールニュースにてそれらを配信することにした。すなわち、学会のメールニュースに登録されている特定多数の方たちに、まずは開示する、ということである。
アドレス登録のお願い
  現在学会のメールニュースには、全会員の8割程度の方が登録されている。今後学会からの情報発信に、ますますメールを活用することも検討されている。まだ、学会事務局にメールアドレスを登録されていない方は、是非とも登録をお願いしたい。会員番号と氏名、及び登録するメールアドレスを記載して、以下のアドレスに送付していただきたい。apply@jsqc.org
  これからも会員の皆様の積極的な学会活動への参加をお願いする。



■私の提言
  マネジメント層の品質管理教育

大阪電気通信大学 猪原 正守

 デミング賞受賞企業でも、方針管理活動やSQC活動を5年ほど休止していると、品質管理の基本が空洞化し、品質力はTQM導入当初のレベルに逆戻りする。その結果、方針管理における管理特性が欠落して目標管理となったり、方針管理と日常管理の区分がつかなかったりする。また、管理図における群内変動と群間変動の意味を知らなかったり、管理限界と規格値の区別がつかなかったりする。前者は、経営中長期計画の達成のみが優先され、執行役員や部次長などのマネジメント層が中核となる魅力的で妥当性のある年度方針の策定力の脆弱さと、年度方針のPDCAを通じたプロセスマネジメント力の低下を引き起こしている。後者は、「工程が正常であること」と「工程能力指数が十分であること」が混同されるという末期的症状を引き起こしている。
  マネジメント層に対する品質管理教育には、経営マネジメントシステムとしての方針管理、日常管理、機能別管理あるいは品質保証体制の構築と運営などに対するOffJT教育と、方針管理活動におけるトップ診断、月次報告会あるいは外部指導講師による指導会などを通じたOJT教育がある。このうち、各種教育機関における当該教育への参加者数の減少に歯止めがかからない状況が続いているが、その重要性に気づいた幾つかの企業で方針管理活動を通じたOJT教育が再燃化しようとしている。
  その際に問題になるのは、マネジメント層の「現状把握力―問題点の顕在化―の弱さ」と「精度の高い実施計画策定力の弱さ」である。前者は、バブル崩壊期に適切な品質管理教育の機会を喪失したマネジメント層に共通する弱さでもある。後者は、問題解決プロセスの予知・予測に対する弱さが主たる原因であり、問題解決のスピード力が企業力を支配する企業活動において致命的な弱さともなっている。
  SWOT分析やBSC分析などの新しい分析ツールが開発・利用されているが、本質をデータで明らかにするQC的問題解決法に対する無理解が、こうした問題点の本質的な原因であるように思える。理事として、また、品質誌の特集企画担当者の一人として、マネジメント層に対する品質管理教育の重要性を指摘し、彼らにとって役に立つ企画を提案して行きたいと願っている。


このページの最上部へニューズ・トピックスの一覧へ戻る

--------The Japanese Society for Quality Control--