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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2009年 8月 No.294

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■トピックス:「新版 品質保証ガイドブック」発刊によせて
■私の提言:品質管理の考え方を環境管理の世界に
・PDF版はこちらをクリックしてください →news294.pdf

■ トピックス
  「新版 品質保証ガイドブック」発刊によせて

新版品質保証ガイドブック編集特別委員会・委員長 中條 武志

 100名を超える産学の方々の、2年余りにわたる協力を得て、本年10月末の発刊に向けて最終の校正作業が行われています。

新版 品質保証ガイドブック
 朝香鐵一・石川馨両博士によって「品質保証ガイドブック」が出版されたのは1974年です。この書籍は、品質保証の考え方・方法論を学ぶ上で貴重な役割を果たしてきました。
  日本品質管理学会では、学会創立40周年記念(2010年)および品質月間50周年記念(2009年)を契機として、「品質保証ガイドブック」に盛り込まれている品質保証の基本的な考え方・方法論を今の時代にあった事例を用いて体系的に説明した書籍「新版 品質保証ガイドブック」(B5判、約1300頁、定価42,000円、日科技連出版社)の編集に取り組んできました。
ガイドブックの内容
 全体の構成は旧版の「品質保証ガイドブック」を踏襲し、
  I.品質保証の基本
  II.プロセス別の品質保証
  III.品質保証のための要素技術
  IV.主要産業における品質保証
の4部構成としています。
  第I部では、品質保証を「顧客・社会のニーズを満たすことを確実にし、確認し、実証するために、組織が行う体系的活動」と捉えた上で、品質保証の現状・歴史を概観し、品質および品質保証に関する基本的な原則、品質保証を組織的に推進するための方法論を解説しています。また、品質保証のための活動を、原価、量・納期、環境、安全、従業員満足などを目的とする活動と統合する考え方を示しています。
  第II部では、市場調査・企画、製品設計、生産準備・工程設計、生産、調達、販売、アフターサービス、回収・廃棄・再利用などのプロセスを一つひとつ取り上げ、それぞれにおいて行うべき品質保証活動について一般的に解説しています。サービス設計、サービス提供については別に取り上げています。さらに、これらのプロセスを全体的に捉えて、品質保証システムを構築・改善する考え方も示しています。
  第III部では、品質機能展開、顧客関係性管理、統計的手法、ロバスト設計、デザインレビュー、ソフトウェア設計・検証手法、工程能力調査、オンライン品質情報の活用、信頼性設計・信頼性試験、故障解析、標準化、人・教育、作業管理、設備管理、品質監査、プロジェクトマネジメントなど、品質保証において汎用的に使われる一つひとつの要素技術を取り上げ、その内容について解説しています。
  第IV部では主要な産業分野における品質保証の実践例を紹介しています。業種は、電気や機械などの組立産業、情報システム・ソフトウェア、土木・建築、航空・宇宙や原子力などの重工業、鉄鋼や化学・ゴムや繊維などの装置産業、食品・化粧品・医療材料、トラック・鉄道・航空などによる運輸業、電力事業、小売業、サービス業、医療・福祉、教育、行政など多岐にわたっています。また、視点を変えて、中堅企業、海外関係会社の取組みも紹介しています。
編集を終えて
 編集で一番苦労したのは、品質保証に関するプロセスの広がり、要素技術の広がり、産業分野の広がりをいかに統一的に扱うかでした。これについては、部や章の間のすり合わせを密接に行うことで、満点とはいかないまでもかなり整理できたと思います。
  編集を通じて、それぞれの業界で品質保証に携わっていらっしゃる産の方々の熱意、それぞれの要素技術の研究にかける学の方々のこだわりを肌で感じることができました。本ガイドブックが、品質保証の全貌を理解し、新しい時代、それぞれの分野にあった新しい品質保証の方法論を生み出す基盤となることを心から期待しています。



■私の提言
 品質管理の考え方を環境管理の世界に

高知FEL(株) 澤田 潔

 昨年の4月から東京での品質管理と環境管理の両方の業務を担当した経験を生かし、次世代省エネランプの開発・製造の事業化に向けて高知で活動している。最近の企業は、品質管理と環境管理を一緒にして品質環境部とかもっと広い概念でCSR部などとしているところが多くなってきているためである。このような環境と品質を同じ部門で担当する現象は、ISO9001とISO14001の認証取得が始まった頃からかと記憶している。
  ところが、現実問題として、品質管理と環境管理の世界の距離は、マネジメントシステムの構築・運用以外は、さほど近づいていない。マネジメントシステム以外では、TQMで構築された優れたしくみや手法は、環境管理の世界には、ほとんど導入されていない。わずかに品質機能展開を環境側面にも対応させた環境調和型品質機能展開が数少ない事例かと思う。
  一方、もの作りの現場では、高い目標値を与えられて二酸化炭素の排出抑制や廃棄物削減などの環境関連の項目が要求されるようになってきている。また製品に対しては、従来の製品品質面での競争だけでなく、省電力や有害物質不使用などの環境特性での競争優位も要求されるようになってきている。実際、工場の現場においての省エネや廃棄物削減の最大の効果をもたらすのは、生産性の向上や不良率の低減というTQMの世界でおなじみの管理項目であることが多い。しかしながら、環境関連の専門家がTQMの手法や考え方になじみがないことが多く、品質管理の専門家なら現場改善の指導ができるようなことも手が付けられていないことも多い。
  地球温暖化防止をはじめとする環境対策が、社会を牽引する大きな力となり、省エネなどの環境対策がこれからの企業活動にとって大きな因子となる時代が続くと思われる。このため、環境管理全般を新たな考え方、手法で武装していくことが重要となっていく。TQMの世界での資産である、さまざまな方法や考え方を環境の世界にも応用できる形にしていくことが今後期待される。最終的には、TQMならぬTEMとでもいう大きな概念にまとめられたら、品質で世界をリードできたもの作り日本を環境対応の分野においても世界をリードできるようになると小生は考えている。


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