JSQC 社団法人日本品質管理学会
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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2008 11月 No.288

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■トピックス:「JSQC版品質管理関連用語集」に関して
■私の提言:Qの確保に向けての三つの視点
・PDF版はこちらをクリックしてください →news288.pdf

■ トピックス
  「JSQC版品質管理関連用語集」に関して

第37年度 標準・総合企画担当理事 永原 賢造

■品質立国へ向けて
  「品質立国日本の再生」をスローガンに、35年度から中期計画立案にもとづく学会運営を「品質の確保」「品質の展開」「品質の創造」及び「共通」の4本柱で、合わせて30余項目の重点施策を展開していることは昨年発行の本欄(NO.274)で紹介した。
  各委員会、研究会、支部、部会等で、中期計画を立案する中で、ミッションの見直しもされて、当学会の一層のパフォーマンス向上につながる動きとなっている。

■一層の発信力強化をめざして
  標準委員会は、発足後10年を迎え、より一層当学会目的に寄与すべく検討を加えた結果、
(1)品質管理に関しての骨格となるアウトプットを出していくことに貢献していくこと、
(2)内外の品質関連標準立案に関与拡大していくこと、及び内外の標準動向をタイムリーに紹介していくこと、とした。
  その結果、(1)項については、まず「新版 品質保証ガイドブック」の編纂の検討・提案を行ない、学会の骨格アウトプット活動として編集特別委員会(委員長:中央大学中條武志教授)が組まれて実施されることになり、2009年11月発刊で準備が進められている。
  次に「品質管理関連用語の解説および定義」を作成・提案することにした。
  (2)項については、品質関連のISO、JISの制・改訂に際し、会員各位から積極的にパブリックコメントを提案する環境整備を整えること等とした。

■JSQC用語集の発刊にむけて
  ご承知の通り、品質管理の領域はQCからTQCへ、そしてTQMに発展してきている。この間に、ISO9000シリーズの1987年版が制定されて以降多くの影響を与えてきた。
  このISO9000シリーズがJIS化されるに伴い、JIS Z 8101の統計用語以外の部分の定義が廃止される経過をたどってきている。以来約20年が経過し、マネジメントシステムの整備に効果をもたらしている反面、日本の風土文化に融合しているとは限らずに違和感のある部分も散見される。
  例えば、「製品」についての用語定義で、ISO9000シリーズではご承知の通り、プロセスの結果として、ハードウェア、ソフトウェア、素材製品、サービスとして4つで構成されている。また、サービスの中には事前保全や事後保全、およびセールスに関する情報提供や提案が含まれている。
  しかしながら、日本人にはこの定義がすんなり受け入れられずに、"製品・サービス"、"もの・サービス"等のように、製品にサービスを入れ込むことに抵抗を感じ、日本人の感性に合った使い方をしてきている。
  用語についての定義や解釈は、その領域の研究、実践、応用の根幹を成すものである。当然ながら世界標準を視野に入れ、かつ日本の文化風土に根ざした日本人の感性に合う定義と解釈の両立を目指していく配慮が欠かせない。
  これらの面から、当学会が時代に即した役割を担うべく、「品質管理関連用語の解説および定義」を発信していくことに意義があると考え、準備の途上にある。
  歴史をさかのぼれば、QCからTQMにいたる間に多くの著作者により多くの提案がなされてきており、多くの解釈がある。これらの状況をもかんがみて、ISO、JISの標準関係、用語辞典類、そして多くの専門書の中からの主張・要点を横並べしてみることにより、よりわかりやすく、なおかつ時代に即した用語の解説をした上で、当学会としての定義を立案し、発信していくことが重要な役割と認識している。

■会員各位の叡智を結集
  標準委員会で原案を作成し、検討を重ねてきたが、より充実した内容にするために会員各位からの叡智を結集させていただきたく、ここにパブリックコメントを広く提案いただきたいと考えている(平成20年12月6日まで募集)。
  ついては、趣旨をご理解いただき、協力をお願い申し上げる次第である。


■私の提言
  Qの確保に向けての三つの視点

電気通信大学 教授 鈴木 和幸

 当学会中期計画の柱をなす"Qの確保"に向けて、トラブルの再発防止と未然防止のための、(1)発生、(2)影響評価・緩和、(3)発見の三つの視点を示す。
  トラブルが生じたとき(1)発生原因に対しPDCAのP(目的+プロセス標準)が確立していたか、またPは遵守されたか否かよりの検討を行う。Pを遵守しうるよう教育トレーニングが行われ、P通りの業務を為すことがDoであるが、このPの遵守がどれほど難しいかは誰しもが知るところである。P通りに行う時間がない、このステップは飛ばしても良いであろう、と自分を納得させ省いてしまう。その結果、市場にて大問題が生じる。このとき、当該ステップを飛ばしたときの(2)影響度を事前に評価し、その大きさを自覚していればPを遵守するであろう。P通りに行おうとしても、それでも人間はエラーを犯す。このとき、フェイルセーフ設計やエラープルーフを事前に検討しておく。(3)発見に関しては、設計・生産の段階にて作りこみが正しくなされたかの正常検出を自らが為し得ること。これが無理なときは、異常が作りこまれたとき、異常を発見しうるステップが事前に決まっており、そこで発見されること。ユーザの使用段階においては、当該システムが正常か否かが判ること。これが無理なら、異常を判定しうることが重要となる。この為には、状態監視保全がカギを握る。
  以上は、トラブルの再発防止の為にPDCAを回す視点であるが、未然防止においても同様である。即ち、(1)過去のトラブルを開発の仕組み・プロセスにまで反映し、作りこみのPが確立し、Pを遵守しうる教育・動機付け・時間配分が為されているか。そのPを遵守しなかったときの(2)影響の大きさを本人が知っているか。(3)正しく業務を為しうるか否かを自らが判定しうるか。これが無理な時、異常が判る仕組みになっているか。即ち、開発・生産ならびにユーザの使用段階において発生・発見・影響評価/緩和の三点を考えることが肝要である。
  貴社の重要業務に対し、Pの中身を(1)発生(作り込み)、(2)影響評価・緩和、(3)発見・正常検出の三つの視点より今一度総点検をされることを勧める。
  なお、品質・安全性の確保の全体像に対しては、品質誌最新号(Vol. 38, No. 4)を参照されたい。


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