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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2005 12月 No.265

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■トピックス:第11回 国際QFDシンポジウムに参加して
■私の提言:顧客満足から“個客”満足へ
・PDF版はこちらをクリックしてください →news265.pdf

■ トピックス
  第11回 国際QFDシンポジウムに参加して

玉川大学 経営学部 講師 永井 一志
トルコのイズミールにて、平成17年9月28日から30日までの3日間にわたり、国際QFDシンポジウムが開催された。昨年のメキシコでの開催に続き、地中海に面した素晴らしい景色のホテル(Pine Bay Holiday Resort)にて同シンポジウムが盛大に開かれた。

仕事で訪れるには少々もったいなさを感じる程の青い海と、リゾートの景色を未だに忘れられない。ホスト国であるトルコはDOKUZ大学のスタッフが中心となり、シンポジウムの運営や参加者への対応が行われた。参加者に対する彼らのホスピタリティは完璧であり、改めて感謝の意を表したい。

シンポジウムへの参加者は約70名であった。うち、日本からの参加者は赤尾洋二博士をはじめとして10名強であり、日本からの出席者は非常に多いと感じた。28日の赤尾博士によるキーノートスピーチに始まり、33編の発表が2会場で平行して行われた。日本からの参加者は8編の研究発表を行い、活発な質疑応答が行われていた。なお、筆者を含む5名のメンバーは日科技連内に設置されているQFD研究分科会での研究成果を2セッション連続して発表した。決して英語が堪能とはいえない筆者であるが、発表前夜には一睡もせず(あまりの緊張と時差に眠ることができず)、ひたすら発表練習を行って本番に挑んだのも非常によい経験であった。

シンポジウム終盤にはパネルディスカッションが行われた。ここでは、新藤久和教授がパネリストの一員となり、日本におけるQFDの活用状況や今後の展望について、考えを述べられていた。日本におけるQFDの状況は各国からの参加者も興味を抱いているようであった。

シンポジウムの目玉でもある赤尾賞には2名の方が選ばれた。日産自動車に勤務時はプリメーラの開発にかかわられ、二階建て品質表の提案をされた津田靖久博士とDOKUZ大学のFatih Yenginol博士のご両名である。また、今回は博士のご功績を記念した賞が優秀発表者に授与された。

シンポジウムの合間にはEphesus遺跡のツアーが盛り込まれ、トルコの文化や歴史に触れることができた。石造りの建造物を見事に建造する技術に驚かせられた。日本から参加された方で建設業に勤務されている方ですら驚きの表情を隠しきれずにいたのが印象的であった。現代のように建造に必要な道具が十分に整っていない時代において、どのように建造したのか。過去の歴史と現在を比べてみて、人類(あるいは技術)の進歩がどれ程のものなのか、改めて疑問を感じさせられるスケールの遺跡であった。

2006年度の同シンポジウムは日本がホスト国となり、東京の玉川大学を会場として行われる(2006年9月7日(木)〜9日(土)を予定)。海外からの出席者はもちろんのこと、QFD誕生の国である日本から数多くの参加者と最先端の研究発表を期待すると共に、活発なディスカッションが行われることを心待ちにしている。

トルコの会場と比較すると海や遺跡は付近にないが、東京都下の緑多く非常に美しいキャンパスである。ぜひ一度足を運んでいただき、QFDとキャンパスの両方を楽しんでいただきたい。誌面をお借りして来年のシンポジウムへの参加をお願いする次第である。「日本ならでは・玉川大学ならでは」の催しも企画している。楽しみにしていただきたい。

最後に、今回のシンポジウムをトルコで開催するにあたっては、赤尾賞を受賞されたDOKUZ大学のFatih Yenginol博士のご尽力が大であったと聞く。彼の夢は実現したが、今回のシンポジウムに参加できずに他界された博士のご冥福を心からお祈りしたい。


■ 私の提言
  顧客満足から“個客”満足へ

株式会社リコー 永原 賢造
昨今、個々の顧客の商品品質、サービス品質に対する要求は個性をもち、多様になる上に、例えばパソコンの例に見られるように、個々の顧客が自らの好みに合わせてカスタマイズした商品をインターネットで発注し、それがサプライチェーンで供給され、顧客が設置して使用するケースが増加する方向にあります。

そんな中で、顧客満足度向上を旗印に、満足度調査として、顧客全体をひとまとめにして満足度の水準を上げる活動をしていることが多いのも実態だと思います。

しかしそこには、顧客毎の使用目的、使用条件、要求品質などについて“個客”として扱う配慮が十分とはいえません。顧客一人一人の使用目的、使用条件、要求品質などに注意を払い、満足いただけない点があれば、顧客一人一人の満足を確保することへの一層の気配りが必要であります。すなわち顧客満足から“個客”満足、“個客”感動への変換が益々重要になってきていると思います。

これは、サンプリング調査での満足度調査だけでは限界があることを示しており、顧客一人一人の満足度合いや要望をリアルタイムに把握し、もしくは予測して対応していくべく根本的なプロセス革新の必要性を示唆していると思うのです。

数年前にパトリシア・シーボルトが著書“「個」客革命”で、顧客とのどの接触においても、顧客を「個」客として捉える必要性を説いているのが現実味を持って迫ってきています。

品質保証は、言うまでもなく顧客に約束した品質が確保されていることを提供者側が責任を持って引き受けることで、そのために、品質を確保する活動が体系的に行われるようにすると同時に、万一それが不十分な場合は、適切な補償を行なうことです。

これからは、多人数で使う事務用複写機であっても、一人一人の使用形態が異なり、その各々の使用勝手に機械側が“顧客”への気配りをする、すなわち、一人一人の使い手に各々が感動するような配慮を施し、かつ満足度合いや感動度合いを“個客”を対象に把握し、改善していくプロセスの整備が“個客”満足、さらには “個客”感動に繋がる今後の品質経営、品質保証のあり方ではないかと考えます。


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