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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2004 8月 No.254

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■トピックス:国際交流はささやき通訳を我慢することから始まる!
■私の提言:JSQCに育てられて
・PDF版はこちらをクリックしてください →news254.pdf

■ トピックス
  国際交流はささやき通訳を我慢することから始まる!
〜ANQを通してのミクロレベルでの国際交流〜

ANQ会長 狩 野 紀 昭
2002年11月のANQ創設後に、シンガポール、ドバイが加盟し、目下、パキスタンとバングラデッシュから出されている申請が承認されれば、14カ国の組織となる。まずまずのスタートと喜んでいる。8月中旬にインドのニューデリーで開催されるSecond ANQ Congress/18AQS(アジア品質シンポジウム)には、全ての加盟組織から発表がなされるとの由。JSQCからは、発表件数24件、参加者も約40名に及び、開催国インドに次ぐとのこと。ANQ議長国として面目を施すことが出来そうである。JSQC会員の皆様のご協力に感謝の意を表したい。

ANQ創設のねらいの中で一番大事なことは、アジアの品質管理専門家の相互交流によるクォリティの発展にある。アジアは、世界中の人々が日常使う製品の大半を生産している「世界の工場」にも関わらず、品質の仲間が連絡を取るためのこれまでの手っ取り早い方法は、アメリカやヨーロッパの品質関連の国際大会に出席することであった。

ANQにおける人的交流のもっとも重要な場は、毎年開かれるAQSにある。これが、マス交流プログラムとすれば、個人をベースとしたミクロ交流プログラムが必要となる。この推進について、昨年の北京で提案され、今年の春の台北での理事会で確認された。ANQの加盟組織の会員であれば、各組織が主催する年次大会等に、その組織の会員と同じ条件で参加し、英語での発表が出来るようになった。また、これらの大会の開催日、場所等についての情報提供は、韓国、インドの協力で急速に進められているANQのHPを見てもらえれば、分かるようになる。

JSQC会員がANQ加盟組織での発表会に出かけていき、逆に、JSQCの年次大会、研究発表会、あるいは、支部の研究発表会に他の加盟組織から発表にやってくることになる。JSQCの若い会員に勧めたいコースは、まず、JSQCの研究発表会・大会で日本語発表し、その後に、ANQ加盟国の大会で英語発表する。このようにして、毎年2回ずつ日本語と英語で発表すれば、相当に研究の進展が図られるとともに、国際的な場でのコミュニケーション能力が向上する。

今日グローバル化時代を迎え、英語によるコミュニケーション能力の向上が極めて重要になってきている。この能力の向上のためにもっとも有効なことは、場数を踏むことである。このミクロ交流プログラムが、この面で飛躍的に役立つことを祈っている。

この交流計画は、決してバラ色ばかりではない。JSQCの発表会に日本語を理解しない参加者がやってくるので、誰かが、会場でささやき通訳(whispering)をすることになり、他の参加者にとっては耳障りとなり、クレームが出てくる可能性がある。もちろんこの問題は、ブース付き会場で同時通訳を導入することが出来れば、解決できるが、そのためには、相当な費用が必要になる。行動指針ANQ Wayに、“質素(austerity)”というキーワードがある。質素な方法で実質を深めるのがアジアのやり方である。ただ、このやり方では、ささやき通訳が発する雑音を許容していくことが必要となる。ご理解とご協力を願いたい。

蛇足ながら、JSQCを含めて財政的に乏しいアジアで大会参加費が20万円を超えるEOQ、10万円近いASQに対して、AQSの参加費は、1万5千円前後でやっていこうとしている。運営がなんとかこれまでやってこられたのは、JSQCの30周年記念事業からの拠金をはじめとして、日本、台湾、韓国、インド、アメリカの企業からの寄付があったからである。日本企業で、これまでにご協力頂いたのは、昨年の中国での積水化学工業、イーピーエス、今年度はインドに関係の深いトヨタ自動車、デンソー、ブリヂストン、サンデンの各賛助会員会社である。この場をお借りして感謝を表したい。

上述のようなミクロレベルでの交流の実現のためには、ささやき通訳に対する会員の協力に加えて、渡航費の問題がある。この点について、台北での理事会で、AQSの大会に対する寄付金に余剰が生じた場合には、その余剰金をサポート費用とすることが出来ることになったことは、誠に喜ばしいことである。

上記のようなANQを通しての活動が、アジアの若い人たちの交流に役立ち、その輪が年々広がっていくことを期待している。

以上

■ 私の提言
  JSQCに育てられて

筑波大学大学院ビジネス科学研究科
経営システム科学専攻・専攻長 椿 広計
奥野忠一先生の勧めによって品質管理学会に入会したのは25年前である。修士1年の春の研究発表会で、縮小推定について発表したのが学会デビューである。直後に、鷲尾泰俊先生の主催する統計手法研究会が、「縮小推定」をテーマで発足と聴いて、修士1年の身分だがどうしても出たくて、奥野先生を通じて参加させて頂き、篠崎信雄先生、丹後俊郎先生を始めとして多くの先生方にご指導頂き、修士論文を書き上げた。

修士を卒業して計測通論講座の助手に採用して頂くと同時に、品質誌編集委員に指名され、赤尾洋二先生、久米均先生を始めとして、何人かの先生の下で特集などを企画した。尾島善一先生や宮川雅巳先生とテープ起こしをした、田口玄一先生、竹内啓先生、久米均先生、広津千尋先生、矢野宏先生の6時間に及ぶ討論は、痛烈に印象に残っている。その後、統計手法研究会も、飯塚悦功先生に引き継がれ、若手研究者の愉快な討論の場の一つとなった。これらは、全て小生の大学卒業後からせいぜい28歳くらいまでに体験できたことである。

また、日本科学技術連盟の箱根のQCSに書記として参加させて頂いたのも、20代前半であり、ここでも鈴木和幸先生、高橋武則先生、安藤之裕先生と夜中に話していると、狩野紀昭先生がそれに参加してくださったことが印象的であった。当時の小生のQCの知識といえば、「直行率」を黒板に「直交率」と書いて、何らためらいもないレベルのものだったのである。日本規格協会で石川馨先生が委員長をされていた国際標準化機構TC69(統計的方法の適用)の国内委員会活動に参画し、石川先生から「管理図をよく勉強しなさい」と指導されたのも修士の頃であった。

このように、小生の20代に、JSQCとその周辺の先生方は、テクニカルなことや実務的なことに関して多くの機会と責任を与えてくれた。歴代事務局の方々からも多くのなるほどと思う助言を頂戴した。JSQCは兼子毅先生が創設された若手の合宿など現在も学生会員に対するサービスは天下一品であることは承知している。それでも、学会傘下の研究会や委員会に20代の方を、責任ある立場で、少なくとも20%は参画させ、JSQCに育てられたと感じる若手を増やさなければならない。


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