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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2001 9月 No.231

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■トピックス「「日本ものづくり・人づくり質革新機構」の活動がスタートする」
■私の提言「「品質の抜け」を防ぐ為に」
・PDF版はこちらをクリックしてください →news231.pdf

■ トピックス  「日本ものづくり・人づくり質革新機構」の活動がスタートする

専務理事 横田 浩、事務局長 慈道 順一、佐藤 みゆき
新年早々の1月12日 トヨタ自動車(株) 豊田名誉会長をはじめとして、官界、経済界、産業界、学会および品質管理に関係の深い協会・団体の代表者 32名により発起人会が開催され、設立の準備を始めた当機構は、去る5月23日に第1回総会が学士会館で開催され、その活動がスタートしました。その後、幹事会を中心とした熱心な討議を重ね、7つの部会が編成され、具体的な研究開発活動がスタートしました。

◇当機構の名称が決まりました

ニューズNO.219号で、元学会長としてこの機構の設立に熱心に活動された筑波大学の吉澤 正先生が、「日本品質革新機構の設立に向けて」と題して、当機構の誕生の経緯、その目指すところなど将来の夢を語って戴きました。会員の皆様も記憶に新しいことと思います。

当機構の名称は標記のように最初に提案された名称よりやや長い名称になりました。

"ものづくり"は、わが国の生命線とも言うべき経済力の源泉であるとの政府(経済産業省)の信念、"人づくり"は、ものづくりの基本は人づくりにありとの高橋理事長の強い思い、"質革新"は、製品・サービスそして経営の質の重要性についての永年に亘る学界の主張などが、それぞれ融合し一つに凝縮した結果であります。 やや長いのではとのご意見や、事務局も電話の応対にしばしば困ることもありますが、多くの関係者の力の結集が期待される当機構には、当を得た名称だと思います。略称は、JOQI(Japan Organization for Quality Innovation)と称しています。"名は体を表す"の例えに恥じない成果を達成したいと決意を新たにしています。

◇5月23日の第1回(設立)総会にて、組織・役員と会則が決まりました

本年5月23日、千代田区神保町の学士会館に約100名の会員が参集し、経済産業省の佐々木 伸彦課長および東海大学の唐津 一先生のご挨拶の後、当機構の役員や会則が承認されました。

理事長には、デンソーの高橋 朗会長が就任されました。

高橋 朗理事長は、当機構の目的・運営について、次の2点を特に強調されました。

その第一は、経営者が分かり易く使い易い経営モデルを提案したいこと、第二は、社会経済生産性本部、中部産業連盟、日本科学技術連盟、日本規格協会、日本能率協会そして当学会などと連携し、協同で3年間の期間限定で課題を解決し、その間に各団体の役割分担とその後の連携のあり方を探り、この機構の成果はそれぞれの団体に引き継いで貰いたいと抱負を述べられました。

総会の他に理事会と幹事会を置き、幹事会が運営と課題の設定・評価などの実質的な機構運営を行うことなどを決めました。幹事長には、前田建設の前田又兵衞会長、副幹事長にはNECの佐々木 元会長、コニカの米山高範相談役そして当学会の狩野紀昭会長が就任されました。このように指導者が産業界現役の経営トップであることはこの機構の大きな特徴です。

総会終了後には、設立祝賀会が行われ、前学会長として、当機構の設立に大変なご苦労をされた前田会長の喜びのご挨拶がありました。

◇7つの部会が設置されました

幹事会の下に以下の7つの部会が設置され、経営者に分かり易く役立つ課題の研究開発がスタートしました。

第1部会:新商品開発(部会長:東京工業大学 圓川 隆夫教授)、第2部会:生産プロセス革新(大阪電気通信大学 猪原 正守教授)、第3部会:顧客価値創造(成城大学 神田 範明教授)、第4部会:自己診断法開発(山梨大学 長田 洋教授)、第5部会:経営幹部づくり(早稲田大学 中根 甚一郎教授)、第6部会:クオリティ専門家づくり(明治大学 大滝 厚教授)、第7部会:職場第一線人づくり(コニカ 米山 高範相談役)

今後とも当機構の活動経過をお知らせ出来る機会があれば幸いです。今後とも学会員各位のご支援・ご協力をお願い致します。

(文責:慈道順一)

■ 私の提言  「品質の抜け」を防ぐ為に

アスモ株式会社 上石 和信
最近の品質問題は大量発生するケースが多く、又、原子力関係・食品関係の件も含めて通常考え難いような事が起きている。

私は仕事として、その殆どを設計開発・製造分野で過ごしてきたが、最近の3年間は品質保証関連の仕事に携わっており、「何故そういう現象になるのか」を自分の仕事環境の変化を参考に考えてみた。今、世界はIT時代と言われ、又、日本においては労務費の相対的高騰によりCost低減に対するプレッシャーは昔の比ではなくなった。

対する仕事の変化としては、

  • 設計開発:物による試作と評価→3Dによるシミユレーション解析
  • 製造:人間の手による生産と評価→高度機械設備による生産と評価が主流となってきている。

例えば3D解析では、図面に対して応力とか流れだとかを机上で計算するが結果は紙に数字とか絵で表れてくる。これが如何にも真実に見えるが、実際の物は図面に表れてこないバリとか巣があったりで計算とは違ってくる。

本来、設計者と言えば身の回りにサンプルが沢山転がり、試作部署への出入りが頻繁だった筈が、今は設計室にいてスマートに仕事をしている。

設計環境が余りに便利になったことと効率を上げる必要性が大切な「物を見て自分の眼と手で確認する」プロセスを少なくしている。

この事は製造についても同じで、結果として、物作りに人間の直観と思考が入り難くなってきており、これが問題発生に大きく関わっていると考えている。

一方、最近の製品は利便性を上げる為に極端にシステム化、複雑化の程度を上げてきており、設計は部分毎に分担せざるを得なくなっている。

ここで必要な事は「設計者間のコミュニケーション」及び「思考の仕方、物の見方に対する上司と部下のコミュニケーション」であるが、これがIT化の逆効果によって、所謂「画面と紙で勝負する」ようになっている事が、問題だと思っている。

昔の品質不良は種類が多くても大量という事は少なかった。これは「物を常に人間の眼と手で確認し思考とコミュニケーションを継続的に行っていた」為で、最近の品質は、これらに「抜け」が起きる事により、大量或いは思ってもいない不良が発生するのだと思う。

我々は今、「これらを改めて設計と製造の工程に入れ込む」事に努力すべきだと考えている。


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